セルビアの農村発「クレムナの予言」の圧倒的驚異! 暗殺事件や自らの死さえ透視した“石の賢者”
豊かな自然に囲まれた、セルビアの小さな村。19世紀、その村にふたりの予言者が現れた。彼らは自国の未来を正確に語り、ついには国家から危険人物視される。その彼らが残した予言に、現代社会を的確にいい表したも
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書評家・ゲームコラムニストの卯月鮎が話題のゲームから連想されるオカルト、超常現象、不思議をピックアップ。これらを知っておけばゲームがもっと楽しくなるかも!?
「アサシン教団」に属する暗殺者となって、宿敵「テンプル騎士団」とさまざまな時代、地域で暗闘を繰り広げる人気アクション『アサシン クリード』。その最新作『アサシン クリード ミラージュ』が10月5日に発売されます。
今回の舞台は9世紀のバグダッド。若き盗賊のバシムは古来より続く組織「隠れし者」の一員に加わり、暗殺者として成長していきます。精緻なグラフィックで描かれる黄金時代のバグダッドを自由に駆け巡れるのも本作の醍醐味。シリーズ原点へのオマージュが込められており、暗殺者たちの伝説的な故郷「アラムート」へ旅することもできます。
では、『アサシン クリード ミラージュ』から連想されるムー的キーワード3つを挙げていきましょう。
シリーズ中で主人公の暗殺者たちが属する「アサシン教団」。こうした暗殺教団は実在したのでしょうか? マルコ・ポーロは『東方見聞録』で、「山の老人」なる存在が率いる暗殺者集団について、土地の人から聞いた話を語っています。山の老人は、2つの山の谷間に世界中のあらゆる果実が実る美しい庭園を作り、暗殺者にしたいと思う少年だけを入れました。少年に薬を飲ませて、老人を偉大な預言者だと思い込ませます。その上で楽園から連れ出し、「ある人物を殺しに行け。もし戻ってこれたら、天使に言ってお前を楽園に運ばせよう」と命じるのです。
それにしても、マルコ・ポーロはどうしてこのような秘密に接触できたのか……。やはり諜報活動をしていたのでしょうか。
ちなみに実際の歴史上では、イランの北西にある渓谷「アラムート城」を拠点にしていた神秘主義的秘密組織・ニザール派という集団がいました。10世紀末、ハサン・サッバーフという人物が率いたニザール派は、しばしば他派の有力人物を暗殺したことから「暗殺教団」と呼ばれました。ニザール派は13世紀なかばまでバグダッドのカリフに拮抗する勢力でしたが、モンゴルによって滅ぼされました。その後、暗殺教団の噂はさまざまな尾ひれがついてヨーロッパに広まっていったのです。
ゲームの設定では、「アサシン教団」の宿敵となっている「テンプル騎士団」。このテンプル騎士団は実在し、第1回十字軍のあと、巡礼者の保護と聖墓の防衛を目的に1119年にイェルサレムで設立されました。ヨーロッパ中に支部を置き、多くの寄進を受けて富裕化したところをフランス王フィリップ4世に目を付けられ、「悪魔崇拝」などの汚名を着せられ弾圧されたのです。1314年に総長のジャック・ド・モレーは火刑に処されています。
このテンプル騎士団がフリーメーソンの起源であるというのはまことしやかにささやかれている説。テンプル騎士団員の一部が逃亡し、スコットランドで密かにその遺産と伝統を受け継いだのがフリーメーソンだというのです。全米でベストセラーとなったマイケル・ベイジェント/リチャード・リー共著のノンフィクション『テンプル騎士団とフリーメーソン』では、スコットランドで発見された14世紀の墓石にテンプル騎士団様式の十字架「パテ・クロス」とフリーメーソンの直角定規が刻まれているのを手がかりに、その論が展開されていきます。悲劇的な最後で神秘性を帯びたテンプル騎士団。その遺産を受け継いだ組織がフリーメーソンとなったのなら、大きな影響力も納得できます。
最新作『アサシン クリード ミラージュ』では、円形都市バグダッドが再現されています。9世紀のバグダッドは、アッバース朝のもとアラビア文化が花開きました。最高潮の時期に治世を行った名君アル・マアムーンには逸話が多く、たとえばギザの大ピラミッドに穴を開けさせたと言われています(現在、観光客はこの穴からピラミッドに入ります)。何かの調査か、財宝目当てか……。
そのマアムーンが830年にバグダッドに建てたのが「知恵の館(バイト・アル・ヒクマ)」。図書館であり、天文台であり、古代ギリシア・ラテン語文献の翻訳事業が行われた場でもありました。
なぜ大規模な翻訳事業が行われたのか。言い伝えによると、マアムーンが夢のなかで玉座に座る立派な姿の男を見たのがきっかけだとか。「私はアリストテレスだ」と名乗った男とマアムーンの間で哲学問答が交わされました。この夢のあと、ビザンティン帝国との戦争に勝利したマアムーンは、古代科学の書物を送るように所望したのです。
この翻訳事業によって散逸しかけていた古代ギリシア・ローマの知が受け継がれ、ルネッサンスの礎ともなりました。マアムーンが見たアラビアの夜の夢がヨーロッパで羽ばたいた、そう言えるかもしれません。
【参考文献】
マルコ・ポーロ『東方見聞録』岩波書店
岩村忍『暗殺者教国 イスラム異端派の歴史』リブロポート
ダン・ジョーンズ『テンプル騎士団全史』河出書房新社
マイケル・ベイジェント/リチャード・リー『テンプル騎士団とフリーメーソン アメリカ建国に到る西欧秘儀結社の知られざる系譜』三交社
ダニエル・ジャカール『アラビア科学の歴史』創元社
卯月鮎
ゲームコラムニスト・書評家。雑誌、Web等でゲームの紹介、書評を中心に活動する。著書に、ゲーム実況のはしりとも言われる『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)がある。
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