徳島・大歩危の妖怪めぐりで「ヤマジチ」に舐められた!?/松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎の怪談行脚
伝説のコラムを公開再録! 異色怪談ユニットが遭遇した怪奇を公開する。今回の行脚先は、徳島の心霊スポットから、大歩危(おおぼけ)の妖怪巡りへ。ヤマジチと七人ミサキの話に憤っていたら、強烈なしっぺ返しが…
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異色ユニットが、行く先々での怪奇体験を公開。今回は「七人ミサキ」にまつわる怪異を回想——。妙な出来事でも、不思議と「数が合う」ものなのだ。 (2020年6月25日を再編集)
タニシ 事故物件住みます芸人・松原タニシです。
田中 いつだってポジティブですよ〜、オカルトコレクター・田中俊行です。
健太郎 田中の怪談は俺が守る、恐怖新聞健太郎です。
田中 いや、健太郎さん。いつも「四国の怪談は俺が守る」って言ってるのに、「田中の怪談は俺が守る」って言ってしまってるやん。
健太郎 はい。実は今回、田中さんの名作怪談“あべこべ”に効果的なBGMをつけさせてもらったので。
タニシ コロナの影響で営業がままならない高知のライブハウス「カオティックノイズ」(3人がいつも怪談ライブをしている会場)を救うために制作された、怪談と音楽のコラボ・コンピレーションアルバム『ABEKOBE CHAOS』が発売されるんですよね。
田中 そやねん。僕の“あべこべ”という怪談を名だたる凄腕ミュージシャンたちがリミックスしてくれてん。
タニシ ひとつの怪談をミュージシャンがリミックスしてCDにするって初めてのことじゃないですか?
健太郎 そうなんです。九人のミュージシャンがそれぞれアレンジして九通りの“あべこべ”を収録したんですが、その中の一人が僭越ながら僕でして……。
タニシ 健太郎さんは元々デスメタルバンドのギタリストですもんね。ちなみに僕はそのアルバムのライナーノーツを書かせてもらいました。
田中 みんな、あ、ありがとう。
タニシ ちなみに読者の方は“あべこべ”がどんな話か知らないと思うので要約すると、Kくんが彼女と夜釣りに出かけたけど全然釣れなくて彼女が暇そうにしてるからジュース買ってきてあげようとしてる間に彼女がいつの間にか四人組の家族連れと楽しそうに喋っててよく見たらその家族連れ服も靴もあべこべで彼女が「え——すご——い!」……
田中 ちょちょちょ、要約せんとって! タニシくん放っておいたら俺の大事な“あべこべ”を30秒でオチまで語るから。
タニシ もう100回以上聴いてますからねこの話。
健太郎 気になる方は是非とも「ABEKOBE CHAOS」で検索してください!高知カオティックノイズにて店頭でも通販でもご購入できます!
田中 よろしくお願いしま〜す。
タニシ カオティックノイズが作ったので、ヤツらの声も入ってるかもですね。
田中 ヤツらって??
タニシ 七人ミサキ……
田中・健太郎 七人ミサキ!
タニシ 七人ミサキとは、常に七人で行動する怨霊で、彼らに出会った者は高熱に見舞われて死亡すると言われている。
田中 AVでよくある「出会って4秒で合体」シリーズみたいなもんやね。この場合「出会って4秒で死亡」。
タニシ そして取り殺された者は新たな七人ミサキのメンバーとなり、一番古いメンバーから成仏していくというシステムになっているので、七人ミサキの人数は七人から増えも減りもしない。
田中 ところてんみたいなもんか。
タニシ 田中さん、一回例えるの抑えてもらっていいですか。
田中 わかりました。
タニシ この七人ミサキ、高知発祥と言われていて、彼らを祀る神社が吉良神社。吉良神社は長宗我部元親の側近であった吉良親実(ちかざね)を祀る神社で、長宗我部家の家督争いの混乱から切腹を命じられ、その後殺された家来の七人衆とともにその魂を鎮めるために建てられた。
田中 この吉良親実の家来の亡霊が七人ミサキで、吉良を入れると八人ミサキとも呼ばれてるよね。
タニシ この話を高知カオティックノイズでの怪談会で紹介した瞬間ーー「ご用件は何ですか?」って、舞台上のスピーカーから大音量で謎の声が鳴り響いた。
田中 あれは怖かったなぁ。七人ミサキが実際に来たと思ったから。
タニシ この時、音響ブースからPAさん(音響スタッフ)が転げ落ちてきて、「Siriが勝手に動き出した」って言ったんですよね。PAさんのスマホのSiriが突然作動して「ご用件は何ですか?」って言い出して、その声を使ってないはずのマイクが拾って、ミキサーの音量ツマミもいつの間にか“大”になってたと。だからスピーカーから突然謎の声が聞こえてきた。
健太郎 不思議ですよねぇ。
タニシ だからカオティックノイズでCDを作ったら、七人ミサキの声が入ってるかも……というわけです。あるいは七人ミサキがやって来るのか……。
田中 じゃあCD買った人は“あべこべ”を聴いて七人ミサキに取り殺されるかもしれないという……もう、それ自体があべこべやな!
タニシ まあでもSiriの声を聞いた僕らは現時点で死んでないわけで、大丈夫っちゃあ大丈夫なんですけども。
田中 ほんまや、俺ら生きてるわ。よかった。七人ミサキの声入ってても大丈夫や。
タニシ というわけでまあ七人ミサキの続きを言いますと、僕はその出来事もあって、さらに七人ミサキに興味を持って実際に彼らのルーツである吉良神社に行ってみたんですね。 インターネットで住所を調べて、土佐市の蓮池までバスに一時間揺られて行ったんです。でも実際の吉良神社を目の前にすると、事前にインターネットで検索した時に見た画像と、全然違うんですよね。あまりにも簡素な拝殿というか。で、写真を撮ってみると何故か参道に謎のモザイクが入るんです。わけがわからんくなってもう一度スマートホンで「吉良神社」を画像検索してみるんですが、やっぱり全然違うんですよね。そして、住所も違った。実際の場所は「吉良神社 高知県高知市春野町西分……」。今来ているここは「高知県土佐市蓮池」。家を出る際に検索した時には確かにこの蓮池の住所が出たはずなんだけど、しかし現場に着いて確認したら別の住所が出てくる。
実は、吉良親実を祀った吉良神社は三つあったんですね。
春野の吉良神社。
山ノ端の吉良神社。
そして蓮池の吉良神社。
春野の吉良神社は長宗我部元親が吉良親実の祟りを鎮めるために親実の墓に木塚明神を祀ったと言われる神社で、境内社に七塚明神として七人ミサキも同時に祀っている。ネットで画像を見たのはこの神社なんですね。
山ノ端の吉良神社は、若一王子宮に合祀された状態で存在してて、吉良神社の祠の前には自害した親実の首級を洗った手水鉢が「首洗い鉢」として置かれている。元々は吉良親実が切腹を行った屋敷跡にあったものだそうです。
そして僕がその時行ってしまった蓮池の吉良神社は……吉良親実が最後の城主となった蓮池城の跡地だったんですね。
健太郎 けどなんでタニシさんは春野の吉良神社じゃなくて蓮池の吉良神社に行ってしまったんですかねぇ。
タニシ そればっかりはほんとわからないですね。呼ばれたとしか。
田中 そのあとやったっけ、みんなで別々の吉良神社に行ったのは。
タニシ そうです。2017年の4月、僕の誕生日に“七人ミサキに誕生日を祝ってもらおう”ってことで、僕と田中さんと後輩芸人のにしね・ザ・タイガーの三人でそれぞれの吉良神社で朝まで一人で過ごす、というのをやりました。
田中 春野の吉良神社にある七人ミサキの塚の前でみんなでバースデーケーキ食べたなぁ。
タニシ はい。美味しかったです。そのあとにしねくんには春野の吉良神社に残ってもらい、僕は蓮池の吉良神社に行って、田中さんには山ノ端の吉良神社に行ってもらいました。
田中 吉良親実の首洗い鉢の前でずっと朝までベトナム人から頼まれてるフリーペーパーのイラスト描く作業してたわ。
タニシ 結局それぞれの前に七人ミサキは現れなかったんですよね。
田中 でもそのあとが怖かった。
タニシ まず、僕らをそれぞれの吉良神社まで車で運んでくれた協力者の方が、風邪をひいて次の日会社を休むことになるんですよね。
田中 そうそう。協力者二人おってんけど二人とも風邪ひいて。
タニシ それからにしねくんが、大阪の駐輪場に停めていた自転車がくの字に曲がって全く乗れない状態になっていたと。
田中 自転車がくの字に曲がるのはやばいよな。
タニシ そのあと僕の眼鏡のアームの部分が音も立てずに折れてしまいます。
田中 それ一番大したことなさそうやけどな。
タニシ そして田中さんが……
田中 人糞撒かれててん。
健太郎 人糞!?
田中 そう、家帰ったら家の前に人糞を撒かれててん。しかも28個。
健太郎 多い!
田中 最初なんやろうコレと思って俺、手で拾ってしもたからなあ。
健太郎 うわ、汚い!
田中 ちゃんと人糞やったわ。犬の糞じゃなかった。
健太郎 人糞と犬の糞の違いがわかるんですね。
田中 それでその人糞な、ちょうど4個で一人分くらいの大きさやねん。てことは、全部の人糞を合わせると、大体七人分くらいになるねん。ということは……。
タニシ・健太郎 七人ミサキ!
田中 いやぁ、恐ろしかったで。
松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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