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松原タニシが超人を求めて駆け回る「超人化計画」。今回は秋田県の巨大人形の謎を追う!
松原タニシが超人の足跡を追い、超人になることを目指す「松原タニシの超人化計画」も10回目。今回向かったのは秋田県。目指す超人の名は「鹿島様」だ。
超人といっても、鹿島様は生身の人間ではない。人形道祖神とよばれる巨大なわら人形だ。
こちらが鹿島様。
鹿島様は秋田県の県南部を中心にみられる風習で、わらでつくった巨大な人形を村境にたて、疫病などの村への侵入を防ごうとするまじないの一種だ。湯沢市の三ツ村地区の伝承では、今から400年ほど前にこの地域に伝染病(腸チフス)が大流行したとき、村人たちが神頼みをしたところ「村の入り口にわら人形をつくれ」とのお告げが下り、それ以来続けられているものだという(現地の看板より)。
きっとそんな伝承が各地に残されているのだろう。鹿島様は現在も湯沢市に6体、横手市に7体などそれなりの数があり(タニシ調べ)、もともと村境に立てるものだったこともあってそれぞれが比較的近い場所にかたまっている。
しかし、ひとくちに鹿島様といっても個々のビジュアルはかなり違う。これはおなじ湯沢市の御返事(おっぺち)地区の鹿島様だが、二本の角が生えていて、顔もずいぶんちがうのがわかる。足もサザエさんぐらい細いのだけど、注目して欲しいのがこの部分。
これも看板にあった説明をそのまま引用させてもらうと、
「集落を守る鹿島様は特に男性の象徴が極端に大きく子沢山を願う性神の意味合いがあるものと思われます。」
これは、極端に大きい男性の象徴なのだ!
以下はタニシの予想だが、疫病が発生すると死者が増える。そうなると、村を存続させるためには子孫をたくさん増やさなければならない。そのためにこんな巨大な象徴をつくって子沢山が祈られたんじゃないだろうか。ここの鹿島様にはワンカップ酒とみかんがお供えしてあったが、おかげで象徴の極端な大きさがわかりやすい。
小野小町のふるさとといわれる湯沢市の雄勝地区にも鹿島様がある。ここの鹿島様は疫病を防ぐだけでなく、交通マナーの注意までしてくれる。一日署長がつけるようなタスキまでかけて、なんでもやってくれるのだ、鹿島様は。
こちらの鹿島様は、またとりわけビッグサイズ。足元のペットボトルと大きさをくらべてみてほしい。ここでは夏と冬の年に二回鹿島様をつくりかえていて、冬バージョンの顔がこれらしい。夏バージョンだともっとしっかり顔がみえているのだが、なぜそんな違いがあるのかは不明。とにかく、地区によってこれだけ個性や差があるのだ。「わらで巨大な人形をつくる」以外にはとくにルールは決まっていないようだ。
またこの鹿島さま、脇の色がちょっと違うのがわかるだろうか。
これはワキ毛。この部分だけ、わらとは違う別の素材でつくられている。これもきっと男らしさの象徴ってことなんだろう。
足元にはこれも大きな男性の象徴と、左右には男性の貯蔵庫までちゃんと再現されている。左上にふたつみえるのは、本当なら胸についているはずの、鹿島様の乳首だ。とれてしまったのをここにそろえて並べているらしい。
こっちの鹿島様はちゃんと乳首がついている状態。これもかなり大きい。
これらの地域では、毎年鹿島様をつくりかえ、その製法を次世代のこどもたちへと継承している。しかし急速に進んでいる過疎化と少子化で、伝統の継承もかなり大変なことになっているそうだ。
この鹿島様はずいぶん怖い顔をしているが、たぶん顔はマジックで書いている。
こちらは神社のなかに立っている鹿島様。夜見るとさすがに怖い。頭部の黒いのはロープでつくった髪の毛だろう。
そしてこれが路傍にたつ真夜中の鹿島様。角が触覚みたいにみえるし、夜これが不意打ちで目に入ったらかなり怖い。なるほど、疫病もこれをみたら尻尾を巻いて逃げ出しちゃうのかもしれない。
松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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