脳科学者・中野信子が“幸運”を解剖する。運の良い人が持つ脳のスペックとは?  YouTube「スピラボ」で語る

文=杉浦みな子

    “運の良い人”になるためにはどうしたら良いのか? 一見、スピリチュアルなこの問いについて、脳科学者・中野信子氏の言葉を軸に、認知科学的な視点を交えながら紐解いていこう。

    「運が良い人」の正体

    「あの人はいつも運がいい」「自分はなんてツイていないんだ」……我々は日頃、運を天から降ってくる不可抗力や、選ぶことのできない宿命のように捉えがちだ。

     しかし、脳科学者の中野信子氏は、YouTubeチャンネル「SPIRITUAL LABO〜スピラボ〜(https://www.youtube.com/@splabo2026)」の対談の中で、この曖昧な“運”という概念を、脳の機能と認知のパターンとして鮮やかに解剖した。 

    おなじみの霊能者・シークエンスはやとも氏がナビゲーターを務めるYouTubeチャンネル「SPIRITUAL LABO〜スピラボ〜」。
    もうひとりのナビゲーターは霊能者のMiyoshiさん(右)。さらに、福岡で予約の取れない占い師・リンクさん(左)も出演。

     運の良し悪しを分けるのは、神秘的な力だけではない。認知科学的な見方をすれば、人の中にある運の“検知能力”と“捕捉能力”のスペックが、大きく影響しているのだ。

     中野氏はこれを「運を見つけられる“目”と、拾える“手”」と表現し、それらを持っている人=運が良い人の行動パターン例を具体的に挙げている。以下に、その要素を簡単にまとめてみよう。 

    新しいものへの好奇心が強い 
    →知らない人がたくさんいる場所で疲れてしまう人や、新しい何かと出会っても特に興味を持てない人は、そこに眠るチャンスを逃しやすい。最新家電や新商品など、未知の情報に対して「面白そう」と飛び込める人は、チャンスを拾う力が強い。 

    意中の人と仲良くなるのが早い 
    →自分の中にある「好き」という感情を即座に掴みに行く行動力が、運に直結する。 

    チャンスが来たときの具体的なビジョンがある 
    →「もし3億円当たったら何に使うか」を具体的に即答できる人は、普段からその状況を引き寄せるセルフイメージを持っている。 

    潜在的な自己肯定感の高さ 
    →自分を否定せず、やってきたチャンスが自分にふさわしいと思うことが、運を掴む鍵となる。 

    祈りや瞑想の習慣がある 
    →朝晩に自分を見つめる時間を持つことで、心の中にある本当の望みを把握する。周囲に流されない“自分軸”を整えることが、本来の自分にとって意味のあるチャンスを掴むことに繋がる。 

     運とは、環境の中に無数に存在するチャンスを検知する“脳のセンサー精度”と、それを確実に掴み取る“実行力”によって体感されるもの――。その話は非常にロジカルで、我々が自らの意志で行動を変えることにより、“運の良さ”をアップデートできる可能性があることを示唆している。

    自己肯定感という名の「動作環境」 

     さて、脳がどれほど高性能なセンサーでチャンスを検知しても、土台となる自己肯定感が歪んでいては、それを掴むことはできない。

     中野氏は、「自己肯定感を間違っている人が多い」と、本来の意味での自己肯定感の重要性も説いている。「“私もうババアだし”とか言うと、“中野さんて自己肯定感が低いですね”って言ってくる人がいるんだけど、それは違う。“ババアでも生きてて良いじゃん”と思うことが、本当の自己肯定感。外の評価(=ババアという表現をマイナスに捉える)とは関係なく、私の価値は1mmも揺らぎませんよ、というのが自己肯定感です」 

     そう、本質的な自己肯定感の高さとは、自分の軸の中で自身が幸運にふさわしい人間であると、1mmも疑わずに思うこと。この揺るぎないOSの設定があって初めて、脳は目の前のチャンスを“自分に関係のある情報”として正しく捕捉し、行動に移すことができるのだろう。

     自己評価が低い状態では、せっかくの好機も“自分には不釣り合いなノイズ”として切り捨てられてしまうのだ。

    モデル・タレントの今井アンジェリカさんも交えながら、「幸運の正体」を紐解いていく。

     「観測されない成功」:裏側で回避され続けている不運

     一方、「自分は運が悪い」と思い込んでしまう人の場合は、脳の“観測のバイアス”が大きく影響しているパターンもある。

     中野氏は、「不運を避けられた事実は、みんな必ずあるはず。しかし忘れているか認識できていないことがある」と、気づかないうちに脳が行っている“不運の回避”という重要な機能を指摘する。「自分が乗ったタクシーが、自分が降りた後で事故にあっていた……なんてことは、自分には観測されていないからわからない。不運を避けている自分がいることを知らずに、不運だと思っている可能性がある」 

     そう、我々は起きてしまった不運には敏感に反応するが、無意識のうちに回避した数多の災難には気づくことができない。中野氏は「見えないところの運に、私たちは意外と守られている。もっとそれを信用した方がいい」と語る。 

    必然を「ラッキー」と呼ぶ戦略的生存術

     中野氏は、“親ガチャ”や宿命といった、自分では選べないものとの向き合い方についても、一筋の光を示した。

     自身が貧困家庭で育ったと振り返りながら、「私は、社会的な通念の親ガチャという意味では当たりではないと思う。一方で、“学術”というカードを持って生まれたことは当たりだったと思っているんです。何を持って“当たり”とするかって、わからない」 と言う。

     そう、自分が生まれ持ったものの中で何が当たりの要素になるのか、そこに正解はないのだ。 

     それは、自己肯定感の話とも通じている。自分が生まれ持ったものを生かすことができたとき、自己肯定感は高まり、ひいては幸運を引き寄せることに繋がっていく。 

     中野氏は、トランプを例に説く。「自分が持っている6や8のカードをエースやキングに変えることが自己肯定感を高めることと思われがちだけど、そうではない。自分の生まれ持ったカードで勝てるゲームを知ることが大事。6や8のカードを持っていたら七並べをやろう、エースやキングを持っていたらブラックジャックをやろう、と気づくこと」 

     自分の持っているカード(特性)を呪って無理に書き換えようとするのではなく、そのカードが最も機能するゲーム(環境)を戦略的に選び取ると、勝利の確率が上がる。“運の良い人”とは、そんな必然の結果を「ラッキー」と楽しんでいる人なのだ。 

    運は脳の使い方で向上させられる

     中野氏が語る運の理論は、我々に大きな希望を与えてくれる。運は決して遺伝や宿命だけで決まるものではなく、日々の習慣や認知の持ち方――つまり脳の使い方の技術によって、いくらでも向上させることができるのだ。 

     自分の脳が裏側で処理している“見えない回避”を信じ、自分の持つカードが最も輝くフィールドを見つけること。そんな地に足のついた運の設計こそが、我々が今すぐ取り組める“幸運の生存戦略”と言えるのではないだろうか。 

    ▼参考動画:YouTubeチャンネル「SPIRITUAL LABO〜スピラボ〜」 
    https://www.youtube.com/@splabo2026

    #2 説明のつかない”運の差”には決定的理由があります 

     

    杉浦みな子

    オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
    音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
    https://sugiuraminako.edire.co/

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