超能力者・秋山眞人の「音と声のサイキック呪術」!特殊な声で願いをかなえる実践法
人間が発する声には強力な呪力が宿っていると、超能力者の秋山眞人氏はいう。それを活用すれば、成功と幸運を引き寄せ、自分の望みどおりに現実を変えていくことができる!? 古今東西の事例をひもときながら音と声
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人の心を操り、思い通りにコントロールする催眠術。テレビ番組などで、催眠術状態に陥った被験者が、思わぬ行動に出たりするのを見たこともあるだろう。人はなぜ、催眠術にかかるのか。催眠術の歴史から、人が暗示にかかる理由、自己暗示の効力まで、催眠術の謎を追う。
目次
現実社会において、マインド・コントロールによって死に追い込まれた者はいくらでもいる。一例を挙げれば、自爆テロがそうだ。
あの9・11アメリカ同時多発テロ事件以来、自爆テロに対する関心は急激に高くなった。なかでも大きな問題となったのは、そういった行為に自ら身を投じた犯人たちの心理状態だった。おそらく相当に強い社会への恨みや敵愾心を抱いていたのだろう――と。
ところが調べてみると、彼らが特別な異常心理にとらわれていたことは証明できず、また特に信仰心が強い家庭で育ったとか、殉教的行為を望んでいたということもなかった。
しかも、多くの人々は裕福で、恵まれたエリート階級の出身者だった。つまり、世界を恨むような環境に身を置かれていたわけではなかったのだ。
調査を行ったイスラエルの心理学者アリエル・メラリは、彼らが自爆テロに至るプロセスをトンネルにたとえた。細長い管状の通り道で、入り口と出口以外は完全に外界とは遮断されている世界だ。
しかも視野は、遠くに見える出口のみに集中させられている。後述するが、じつはこのふたつ、つまり「情報の遮断」「視野を狭める」ということは、マインド・コントロールにとってきわめて重要な要素とされているのだ。
では、人の心を操る行為とは、具体的にはどのようになされるのだろうか。
人を操るテクニックというと、真っ先に思い出されるのは催眠術だ。トンネルにたとえられたこの「視野を狭める」という行為は、催眠においてもきわめて重要なテクニックとなる。
だがその前にまず、催眠と催眠術は、分けて考えるべきだという指摘があることはお伝えしておこう。
催眠とは、他者からの暗示を受けやすい意識の状態であり、催眠術はそうした意識へ人を導くテクニック(術)である。問題はこの催眠術を何に用いるのか、ということだ。
われわれが目にする機会が多いのは、テレビなどでショーとして行われる催眠術だろう。こちらは人を意のままに操るという点で、マインド・コントロールと共通する。
一方現在では、心因的症状に対する医療の現場でも催眠術は重視されている。そちらでは、「術」というショー的な要素を嫌い、もっぱら「催眠」という言葉が用いられているようだ。
いずれにしても催眠術は、一種の暗示である。したがってその歴史は、遥か古代にまで遡ることができる。たとえば、宗教儀式におけるシャーマンのトランス状態も催眠の一種と見なすことができるからだ。
また。古代ローマにおいて独裁者カエサルを暗殺したブルトゥスの行為も、一種の催眠状態もしくはマインド・コントロールのもとで行われたということもできる。
とはいえ、一般に催眠(術)の始まりは、18世紀後半のドイツの医師、フランツ・アントン・メスメルだとされる。
メスメルは、この宇宙には「動物磁気」というエネルギーが満ちていて、病気はこの時期が乱れることによって引き起こされるものだと考えた。
そこでメスメルは。患者に鉄分を含んだ水を飲ませたうえで、体に磁石を張りつけ時期を整えるという治療法をあみだした。そこから彼は、磁石ではなく自らの手を患者にかざし、動物磁気を調整することで病気を治せると主張しはじめたのだ。
その効果は高く、実際に多くの患者が彼に手をかざされただけで痙攣を起こしたり、失神したりしたという。そして目が覚めると病気が治っていた、という人々が続出したのだ。かくしてメスメルの名声は大いに高まり、もっとも多いときには1日に3000人もの患者が彼のもとを訪れたという。
もちろんこの治療効果は、暗示の結果である。だから暗示が解ければ、治療効果も消滅した。
動物磁気なるものは宇宙には存在しないし、メスメルに超能力的な癒しの能力があったわけでもない。その代わり、彼には強い自身と確信、それによって醸し出されるオーラがあった。それを感じた患者はメスメルに絶対的な信頼を抱き、自ら暗示にかけられたのだ。
逆にいうと、催眠状態に誘導するには、相手からの信頼が絶対に必要だということである。猜疑心や警戒心があると、催眠術は効かないのだ。
メスメルは自ら催眠治療を、あくまでも科学的なものであると主張していた。後世、それは「メスメリズム」と呼ばれるようになる。
これは、現在でいうところの手かざし、つまり超能力治療や気功治療など、いわゆるオカルティックな治療法につながるものといえる。
当然、時間とともに科学の世界とは一線を引かれることになった。
一方で、メスメルの理論はともかく、催眠が心に起因する病に対しては一定の効果をあげていることに注目し、別の理由を考える人々も出てきた。
たとえば、19世紀前半のスコットランドの医師、ジェイムズ・ブレイドがそうだ。
メスメリズムを研究した彼は、ある実験を公開した。
患者に花瓶の模様を長時間見つめさせ、「あなたはとても疲れていて眠い」とささやきつづける。やがて患者の意識が朦朧とし、トランス状態に入ったときに、「体が痙攣する!」と叫ぶ。すると患者は、痙攣発作を起こしたのだ。
これによってわかったのは、催眠と動物磁気は関係がないということだった。と同時に、何かひとつのものを長時間見つめつづけることで視神経が疲労し、眠気を誘われた患者は暗示を受けやすくなる、という新たな事実だったのだ。
ブレイドは、催眠現象はあくまでも大脳内部の生理学的な作用であるとして、これを「ヒプノティズム(催眠術)」と名づけたのである。
この実験でブレイドが花瓶の模様、つまりひとつのものを患者に見つめさせつづけたことは、催眠術にとって大きなポイントとされている。
なぜなら、催眠状態においては、視野や意識が狭窄(きょうさく)する。その結果、外界からの刺激や出来事が意識から締めだされて、ひとつの対象に集中するようになる。こうした意識状態において、人は暗示にかかりやすくなるからである。
本稿の最初で、テロリストの心理分析で、自爆テロに至るプロセスがトンネルにたとえられていたと書いた。そrはまさにこのことであり、彼らは与えられる情報以外はすべてシャットダウンされ、なおかつ「自爆テロ」という唯一の出口だけを長時間、見つめさせられていたのだ。
催眠術はその後、世界中へ広まっていったが、日本に入ってきたのは明治時代初期のことだった。このときの催眠術は、医療よりも見世物的、魔術的な側面が強かった。
だが、その効果に人々は目を見張り、熱中した。
たとえば日本の超能力研究のパイオニアとされる福来友吉も熱心な研究者で、明治39年には「催眠術の心理学的研究」という論文で文学博士号を取得している。その後博士は、東京帝国大学助教授となり、千里眼や念写といった超能力の実験・研究に没頭するのだ。
このころから催眠術は、心霊学、心理学、さらには日本古来の呪術などと融合し、大きく発展することになる。これを「霊術」と呼ぶ。
東洋医学研究家の井村宏次によれば、霊術とは「おのれの思いを遂げるために、逼塞を迫る外界の圧力を超常的な方法で打ち破るための、さまざまな方法群」と定義されるという。簡単にいえば、超常的な能力による願望実現だ。
もともと日本には病気治しを行う修験者が市井に数多くいた。明治維新により西欧文明と医学が入ってきたものの、そうしたオカルト的な現象に対する人々の関心もまだ強かったし、西洋医学では補えていない心因的疾患治療への需要もあった。
催眠術によるショーはそんな人々の歓心を大いに買い、そして李術は一般の人々への病気治しの秘術として、日本流の発展を遂げたのだ。
井村によると、霊術家の登場は明治30年ごろで、昭和5年には全国で3万人もいたという。
特に明治時代末期には、九字を切って気合を発し、病を癒した「気合術師」の浜口熊嶽(ゆうがく)、霊術の開祖である桑原天然、太霊道の創始者・田中守平(もりへい)という3人の代表的霊術師が登場。以降の霊術に大きな影響を与えたのである。
マインド・コントロールや催眠の根底にあるのは、当人の心の奥に隠れた願望や恐れ、憎しみだといわれている。そこを巧みに刺激されると、人は思いもよらぬ行動に走るのだ。
たとえば相手を説得するときに、正論を並べていただけでは必ずしも効果があがるとは限らない。それよりも味方であるふりをして、「あなたはだまされている……」と囁くほうがはるかに効果的なのだ。
「あなたは、彼の下にいるような人じゃない」とほのめかしてもいいだろう。
これらはシェークスピアの戯曲でもよく用いられた技法であり、それによって主人公は常軌を逸した行動をとって、苦悩するのである。
なお、最初に催眠術には信頼関係が必要であり、猜疑心や警戒心があると効かないと書いたが、この手法が効果を発揮するのは、自分に絶対の自信があり、他者には猜疑心を抱いているタイプだといえる。
「悪魔のささやき」はあくまでも善意の第三者からのものであり、その真偽を判断するのも、実際に行動を起こすのも、自分自身だからである。
マインド・コントロールを直訳すると「心理的操作」ということになる。もっと簡単にいえば、人をだまし、操ることだ。あらゆるテクニックを用いて相手の思考や感情に影響を及ぼし、行動を思いどおりに支配するのである。
そう書くと、マインド・コントロールは悪いことばかりと思えてしまうかもしれない。
だが、話はそう単純ではない。マインド・コントロールには善悪だけでない、きわめて複雑な面があるからだ。
相手の行動を支配したり、操作したりする。具体的には洗脳したり、催眠をかけたりする。あるいは集団ヒステリー状態に導いたりする。
それだけではとてもよくないことのように思えるが、実際にはわれわれの日常生活において、現在も頻繁に行われていることでもある。
具体的にいうと、テレビのコマーシャルがそうだ。特定の商品を大ヒットさせたり、いわゆるブームを招いたりするには、できるだけ多数の人々の意識を一方的に向ける必要がある。
極論すれば、それは商品そのものの価値とは関係ない。コマーシャルによって人々の購買意欲を作りだし、さらにさまざまな方法で意識を同じ方向に向ける。それがヒットにつながる近道だということを、企業もよくわかっているのだ。
政治的なアピールにしても同様だ。マインド・コントロールは独裁国家の専売特許のように思われがちだが、実際には民主主義国家においても、その効力は大きなものになる。なぜなら国家の方向性や意志を決定するのは、人々による投票である。その投票結果は、選挙において事前に流布される情報によって大きく左右されるからである。
特定の政党が大勝する。それを「風が吹く」などというが、その風の正体は、一種の集団マインド・コントロールが成功した結果といえなくもないだろう。
これらはマインド・コントロールによって他者を操るという意味で、ある程度はネガティヴなものといえる。だが一方で、ポジティヴなマインド・コントロールもある。いわゆる自己暗示だ。
スポーツ選手が試合の前に、勝利への道筋をイメージ・トレーニングする、あるいは、絶対に勝つと自分に何度も言い聞かせる。オリンピックなどでもよく見られる光景だ。こうした自己暗示は、自らが行うマインド・コントロールということもできる。
あるいは朝、一杯の水を飲む。そのときに、「今日一日がすばらしい日になる」と心にささやく。こうした成功術を実践している人も多いはずだ。
このように、マインド・コントロールは、使い方次第で善にも悪にもなるし、自分を高める特効薬にもなる。
ミルトン・エリクソンという精神科医がいた。彼は催眠や暗示を用いて人間の無意識の世界を動かす技法を研究し、問題解決のためのさまざまなアプローチを捜し求めた人物だ。
次の話は、エリクソンがセミナーで語ったものだ。
高校時代、学校帰りのエリクソンの前に、どこからか逃げだしてきた一頭の馬が現れた・取り押さえたものの、どこの農家の馬かわからない。そこでエリクソンは馬にまたがり、馬の意思で自由に走らせることにした。
表通りに出ると、馬は駆け、小さな路地に入り込む。エリクソンは周囲の様子を見ながら道へ馬を引き戻す。そんなことを繰り返しているうちに4マイル(約6.4キロ)ほど走り、馬はある農家に入っていった。
すると農家の主人が飛びだしてきて叫んだ。
「どうしてここが、わかったんだ!?」
エリクソンは平然と、こう答えたという。
「馬が知っていたんです」
このエピソードを人間の心にたとえると、無意識というものの本質がよくわかる。馬は言葉を話せない人間の無意識だ。
だが、自分が何をしたいのか、どこへ行きたいのかはよく知っている。その無意識に働きかけ、本当に自分が望むことを実現させるのも催眠や自己暗示の目的であり、マインド・コントロールの効果的な利用方法なのである。
(月刊ムー2018年2月号掲載)
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