南北戦争から逃れた人々の子孫か!? 失踪事件が相次ぐ米国立公園に毛むくじゃらの野生集団が潜む
行方不明となった人々は、身の毛もよだつ恐ろしい最期を迎えていたのか──。アメリカの国立公園で囁かれる恐ろしい噂とは?
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、世界の海域に出没し、その目撃情報は古代までさかのぼるという、巨大な海の怪物について取りあげる。
紀元前332年のこと、かのアレクサンドロス大王が、地中海に面するフェニキアの小さな都市国家ティールを攻めた。
前年、大王はイッソスの戦いでアケメネス朝ペルシア軍に大勝利し、これを見たフェニキアの都市国家はこぞって彼の軍門に降った。しかし、ティールだけは大王に服属することを拒んだのだ。
ティールの中心部は、沖合1キロばかりに位置する城壁に囲まれた小島にある。そこでアレクサンドロスは、本土から海を埋め立てさせ、島に至る道路を建設するよう命じた。ここから攻城兵器や兵士を送り込み、島を攻略しようというのだ。
この海上道路がティールまであと少しに迫ったとき、不思議なことが起きた。1世紀のギリシア人歴史家ディオドロスが書き残すところでは、信じられないほど巨大な海の怪物が波に乗って姿を現し、道路にぶつかってから消えたという。
この怪物の姿については、途方もなく巨大という以外に伝わっていないが、古代における「シーサーペント」の目撃談とも考えられる。
シーサーペントとは、海洋で目撃される巨大なUMAの総称であり、多くの場合、長い首や細長い胴体を持つことから、日本で「オオウミヘビ」と訳されることもある。
目撃の歴史は古く、アレクサンドロス大王よりはるか昔、紀元前8世紀のアッシリア王サルゴン2世が、キプロス島に向けて航海中、地中海でシーサーペントを目撃したともいわれている。ほかにも、アレクサンドロスの家庭教師を務めた古代ギリシアの哲学者アリストテレスも、リビア沿岸で船を襲う巨大なウミヘビについて書き残しており、1世紀ローマの博物学者プリニウスの『博物誌』にも、エチオピア沖の巨大な竜の記述が見られる。
世界各地の神話や伝説の中にも、この種の海の怪物について述べるものが無数にある。
『旧約聖書』は、巨大な海の怪物「レヴィアタン」について言及しており、北欧神話には人間の住む世界ミッドガルドを取り巻くほど巨大な蛇「ヨルムンガンド」が登場する。
トロイア戦争の伝説によれば、ギリシア軍が残した木馬を城壁内に運び込むことに反対した神官ラオコーンが、ふたりの子どもとともに、海の怪物によって海に引き込まれて殺された。さらに東洋の竜も、海などに潜むヘビに似た生き物である。
16世紀になると、スウェーデンの司教オラウス・マグヌスが何種類もの海の怪物について解説し、その中でノルウェー沖には全長60メートルの巨大なウミヘビが棲むと述べている。このころからシーサーペントの目撃談は増大し、現代も多くの銅版画などにその姿が伝えられている。
近代から現代にかけても、多くの目撃談が伝えられている。
いくつか例を挙げると、1808年、スコットランドのオークニー諸島にあるストロンゼー島では、長い首を持ち、たてがみのある動物の死体が打ちあげられた。
イギリスのフリゲート艦ディーダラス号は、1848年8月6日、セントヘレナ島へ向かって航海中、全長20メートルのシーサーペントを目撃、マックヘイ船長はこのUMAの詳細なスケッチを残している。
1852年1月13日、帆船モノンガヘラ号は太平洋の赤道地帯を航行中、ワニに似た全長30メートルもある巨大な生き物を発見、これを銛でしとめて頭部を切り取ったという。
フランスの砲艦アヴァランシュ号は1897年から翌年にかけて、ベトナムのアロン湾で3度にわたりシーサーペントを目撃した。怪獣は鯨とは違った潮吹きをし、頭はアザラシに似て、背はのこぎりの歯のようなもので覆われていたという。アロン湾では、1915年にも馬に似た大きな頭をした長い首の怪獣が目撃されている。
同じ1915年には、ドイツの潜水艦U28が北大西洋上でイギリス客船イベリアン号を撃沈した際、魚雷の音に驚いたのか、全長20メートル余りのワニのような怪物が突如海面から飛びあがってきた。
さらに1947年12月30日、汽船サンタ・クララ号がニューヨークからコロンビアに向かう途中の大西洋上で、体長13.5メートル、ウナギのような体と頭を持つ生物を目撃した。
イギリスのコーンウォール海岸のファルマス湾では、「モーガウル」と呼ばれる首の長いUMAが何度も目撃されており、1976年には写真にも撮られている。
そして1977年4月25日、日本の遠洋トロール船瑞洋丸がニュージーランド沖で操業中、体長10メートルの謎の生物の死骸を引きあげた。死骸はかなり腐乱していたが、ヒレの一部のヒゲのような組織や写真が日本に持ち帰られ、「ニューネッシー」と呼ばれて評判になった。
このようにシーサーペントの目撃談は数えきれないほどあるのだが、その形状となるとかなりまちまちである。
あるものはヘビに似た細長い身体を持ち、あるものはワニに似てヒレがある。さらにたてがみや角が目撃される場合もあり、背中に多数のコブが見られることもある。一口にシーサーペントといっても、じつはさまざまな種類がそのように総称されているようだ。
未知動物学の開祖ともいうべきベルギーのベルナール・ユーヴェルマンは、1639年から1964年にかけてのシーサーペントの目撃談587例を詳しく調べた。
その結果、56例はインチキであり、52例は他の水中生物の誤認とした。さらに121例については情報が十分でないとしたうえで、残る358の目撃例を検討、シーサーペントには9種類のものがいると結論した。
彼は9種類のそれぞれに、「ナガクビ」「海中トカゲ」「マーホース」「多コブ」「スーパーカワウソ」「多ビレ」「スーパーウナギ」「全ウミガメの父」「イエローベリー(黄色い下腹)」という特徴的な名前をつけている。
ナガクビはその名のごとく長い首と4つのヒレのような脚を持ち、全長は4~5メートルから20メートルほど。9種類のうちでもっとも多く目撃されるものだ。体型は中生代のプレシオサウルスに似ているが、ユーヴェルマンによれば哺乳類らしいという。
海中トカゲは全長15~18メートルのワニのような形で、熱帯でのみ目撃される。ユーヴェルマンは中生代の海棲爬虫類の生き残りではないかとする。
マーホースは大きな目と赤っぽいたてがみを持ち、インド洋、北極海を除く世界中の海で目撃されている。
多コブはその名が示すように背中に多くのコブが並んでおり、肩から首にかけての部分に三角形のヒレと一対の水掻きが目撃されることもある。背中は黒または焦げ茶色をしているが、喉と腹は白い。全長は18~20メートルで、主にアメリカ沿岸で目撃されていたが、20世紀以来目撃は減少しているという。
スーパーカワウソは、首の長い巨大なカワウソのような姿をしており、全長18~20メートル。指に水掻きのある4本の足を持ち、ざらざらした灰色がかった茶色の皮膚を持つ。北極海、ノルウェー海岸、グリーンランド海域に棲むと考えられていたが、1948年以来その目撃は途絶えており、ユーヴェルマンは絶滅したのではないかと考える。
多ビレは全長18メートルくらい。熱帯の海に棲み、ベトナム、マダガスカルの海域に多い。体節と堅い皮膚、多くのヒレを持つ。色は茶色で、黄色のまだら模様がある。
スーパーウナギは深海に棲み、海面で目撃されるときはほとんど瀕死の状態だという。
全ウミガメの父は、その名の通り巨大な亀のような姿だ。
イエローベリーは黄色に黒い縞模様を持つ巨大なオタマジャクシのような奇妙な姿をしており、目撃例も少ない。
残念ながら、ユーヴェルマンが述べる9種類のものも含め、これまでシーザーペントの存在が公式に確認されたことはない。
古来、無数に伝えられる目撃談についても、そのほとんどは信憑性に疑問が持たれたり、他の海洋生物を見間違えたものとされている。
たとえば、モノンガヘラ号の船長がシーサーペントの首を切り取ったという話も信憑性が疑われており、1976年にモーガウルの写真を写したのは、ネッシーの偽造写真を作ったいわくつきの人物だ。ストロンゼー島の死体はジンベイザメのものと鑑定され、ディーダラス号のUMAも、その頭部の形状からザトウクジラではないかといわれている。
そして、ニューネッシーについては、ヒゲのような組織のアミノ酸成分を分析したところ、ウバザメと判定された。ほかにも、カイギュウ類やリュウグウノツカイなどが、シーサーペントと間違えやすい動物とされる。
一方で、地表の3分の2を占める海洋には、未知の部分がまだまだ多く残っている。深海底など人類の手がまだ十分及んでいない領域に、ヨルムンガンドのような巨大生物が息を潜めている可能性も完全には否定できないだろう。
●参考資料=『未確認動物UMA大全』(並木伸一郎著/学研)、『幻の動物たち(上)』(ジャン=ジャック・バルロワ著/ハヤカワ文庫)、『The Unecplained』第 7 号( Orbis Publishing Limited)
(月刊ムー2021年3月号掲載)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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