最新プルームテクトニクス理論の地震予知/MUTube&特集紹介  2024年3月号

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    プレートテクトニクス理論に基づいた地震予知に意味はあるのか? そもそも地震予知はできるのか? 三上編集長がMUTubeで解説。 

    巨大地震はなぜ予測できなかったのか?

     2024年1月1日に起きた能登半島地震の衝撃は、1年たった今も薄れていない。現地の復興は遅々として進まず、水道がいまだ使えない地域があるなど復興の遅れに行政の問題も指摘されている。
     なぜ、能登半島地震は予知(予知という言葉は定義があいまいなので、地震学では地震発生予測と呼ぶ)できなかったのか? 2011年の東日本大震災を予測できなかった公益社団法人日本地震学会は『地震学の今を問う(東北地方太平洋沖地震対応臨時委員会報告)』というレポートを出し、地震発生予測に否定的な意見を取りまとめ、現在の地震学の問題点を明らかにした。
     そこには、さまざまな意見が上がっている(報告書は175ページに及ぶ)。
     東日本大震災はまったく予測できなかったかに思われているが、「政府の地震調査委員会は、2000年からの30年以内に90%以上の確率で次の宮城県沖地震が発生すると警告していた」(同報告書「何故、後予知なのか」科学技術政策研究所客員研究官松村正三)し、「M7.7前後の地震が2040年までに80〜90%の確率で発生するとした予測を公表していた」(同)ので、まったく何もわからなかったわけではない。現在の地震発生モデルに基づき、できる範囲で警告を出してはいた。
     ただし実際に起きた地震は、マグニチュード7クラスではなくマグニチュード9.1で、地震のエネルギーには150倍も開きがあった。この数値の違いが、行政やインフラ関連の防災意識に影響した可能性は高い。
     また「福島県沖のプレート境界地震の発生確率は30年以内に7%以下」で「他の東北地方太平洋岸の各県沖合におけるプレート境界地震の発生確率に比べて著しく低かった」(「2011年東北地方太平洋沖地震後における地震の予知・予測研究への批判について」産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター 小泉尚嗣)ことも、地震学者に猛省を促す点ではある。
     報告書全体からわかる問題点は、
    ◦現在採用されている地震モデルだけでは、説明はできても予測できない地震があること
    ◦地震に周期性があることは事実でも、そのパターンに当てはまらない場合があること
    ◦必ずしも地震に予兆があるとは限らないこと 
     である。いまだ科学は地震のメカニズムを研究している最中で、東京大学名誉教授のロバート・ゲラーがいうように「地震科学は、ありえない地震予知に拘泥するのではなく、その多様な研究成果をほかの分野に提供する」ことで、「社会に大きな貢献ができる」(「防災対策と地震科学研究のあり方:リセットの時期」同氏)、つまり地震予測などできっこないんだから無駄なことはやめたほうがいいというわけだ。

    天動説に挑むガリレオ? 異端の「熱移送説」

     科学にはさまざまな異論異説がある。
     たとえば宇宙論。宇宙がビッグバンから始まり膨張しているという定説に対して、宇宙の膨張に伴って物質が生成され、宇宙全体の密度は変わらないという定常宇宙論や、宇宙は3次元の映像だとするホログラフィック理論などさまざまな説がある。
     どれもある点では正しいがある点では矛盾し、完全な宇宙論はいまだにない。
     定説となっているビッグバン理論も、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データが理論値と大きく矛盾したため、再検討が始まっている。同じことが地震にも当てはまる。
     現在の地震学を支えている理論はプレートテクトニクス理論だ。プレートと呼ばれる地層の板がいくつも組み合わさって地殻という地球表面の殻ができている。プレートの動きが地震の原因であり、地球の表面を作り上げているとする。
     現在の地震理論は1960年代に生まれたプレートテクトニクス理論に基づき、でき上がっている。プレートテクトニクス理論は、いわば地震におけるビッグバン理論だ。完全ではないが、現在の地震関連の問題のほとんどを説明できる。
     しかし東日本大震災のように、現行
    の理論だけでは説明がつきにくいパターンの地震もある。より精度の高い地震理論があればそちらに枠組みを変える必要があるかもしれない。
     プレートテクトニクス理論とは異なる地震理論として、埼玉大学名誉教授の角田史雄氏が提唱しているのが「熱移送説」である。地震が起きるのはプレートの運動ではなく、マグマによる熱の移動が原因だという。
     これはビッグバンに対するホログラフィック理論であり、正直なところ、学会では相手にされていない。だから「信じようと信じまいと」の世界ではあるのだが、角田氏は熱移送説で一定の精度での地震の予測は可能だとしており、データも出している。
     地震学者たちが東日本大震災以降、地震発生予測はほぼ不可能とする意見に傾きつつあるなか、異端の科学者はプレートテクトニクスというパラダイムが間違っている、地震の正体はプレートの運動ではない、超深度での熱の動きであり、熱移送説なら予測は可能だと主張する。
     角田氏はプレートテクトニクス理論という天動説に挑むガリレオなのか? 熱移送説は地球の真実を映しだす地動説なのか? あるいは熱移送説に根拠はなく、地球は平面だというフラットアースの類いなのか? その真偽を図る前に、まずは地震のセントラルドグマ、プレートテクトニクス理論について説明しよう。

    (文=久野友萬 イラストレーション=坂野康隆)

    続きは本誌(電子版)で。

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    webムー編集部

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