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角田史雄/藤和彦 著
地震に抱く常識を一変させる「熱移送説」
日本では、地震発生のメカニズムの基盤として、絶対の真理のように扱われている「プレート説」。
だが、著者らによればこのプレート説は、実際には多くの無理や矛盾に満ち満ちた「現代の天動説」にほかならない。
このような誤った根拠に基づいていたずらに研究を重ねてきた結果、日本の地震予知学は50年にわたって停滞し、何の成果も挙げられなかった、というのが著者らの主張だ。
このような惨状に対して著者の角田氏は、地球内部を解析する「マントルトモグラフィ」と呼ばれる最先端技術を駆使し、地下の熱の流れこそが地震の原因であるとする「熱移送説」を提唱。実際にこれに基づき、数々の地震予知を的中させてきた。
たとえば2008年5月の四川大地震は、プレート説では説明がつかないのだが、「熱移送説」なら説明可能で、しかも著者は実際、1年前にその発生を予想していたのである。
本書は、文体が非常に読みやすく、文系の素人(評者)でもすんなり理解できた。表題の南海トラフのみならず、最新地質学の知見も身についてしまうから嬉しい。
著者のひとりである角田史雄氏は理学博士で、埼玉大学名誉教授。地震関係の著書多数。もうひとりの藤和彦氏は、元内閣官房内閣情報分析官。そんなふたりが、がっちりタッグを組んで放つ本書である。われわれが地震というものに抱く常識を、一変させてくれるだろう。
(月刊ムー 2024年12月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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