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オーストラリアの美しいビーチに打ち上げられた不気味な死骸。その正体に関する議論が加熱している。これは本物の人魚なのか、それとも――!?
オーストラリアのビーチに打ち上げられた「人魚の死骸」が世界を騒然とさせている。英紙「DAILY STAR」をはじめとする複数の海外メディアによると、同国北東部に位置するクイーンズランド州の小さな街、ケッペルサンズのビーチで先日、散歩をしていたボビー=リー・オーツさんの目に、腐乱した不気味な死骸が飛び込んできた。
それは下半身が魚に似ているが、長い胴体には哺乳類らしき胸郭と背骨、さらに人間のような頭蓋骨をもち、体長は約180cm、皮膚の一部に牛やカンガルーのような毛まで残されていた。
オーツさんは恐怖を覚えながらも「新種の生物かもしれない」と考え、何枚も写真を撮るとFacebookにアップロードして人々から意見を募った。すると画像は一気に拡散、大騒ぎに。「人魚に違いない」という興奮した声のほか、「ジュゴンではないか」という冷静な指摘も寄せられるなど議論は白熱し、やがてメディアの目に留まったというわけだ。
メディアから見解を尋ねられ、写真を詳しく調べたロンドン動物学会のロブ・ドーヴィル氏をはじめとする専門家たちは、イルカ、クジラ、シャチのいずれかである可能性が高いと考えているようだが、明確な回答を避けている。
しかし、現物を目にしたオーツさんの意見は専門家たちの見解と真っ向から対立するものだ。
「これまでの人生でこのようなものは見たことがありません」「私にとってあれは現実的なものとは思えませんでした」と、未知の生物だと確信している様子。
では、仮に今回打ち上げられた死骸が未知の生物である場合、これは本物の人魚なのだろうか? オカルトや民間伝承に通じた読者であるならば、死骸に“腕がない”点に妙な違和感を覚えるに違いない。
現在、実写版の映画『リトル・マーメイド』が好評を博していることもあり、この死骸を「人魚」と言われて、反射的に欧米での人魚、すなわちマーメイドを想像してしまう気持ちも理解できる。しかし、マーメイドは上半身全部が人間であり、2本の腕をもっているのだ。一方、腕がない人魚といえば――そう、ここ日本で語り継がれている人魚には、頭だけが人間で腕を持たないものが存在するのだ。
まずは江戸後期の戯作者、山東京伝(1761〜1816)の『箱入娘面屋人魚』に登場する人魚。竜宮城で乙姫の男妾となった浦島太郎が、鯉と浮気してもうけたのが人面魚体の娘だった。ちなみにこの娘は、物語終盤で玉手箱によって魚の部分がするりと抜けて手足がある女性に変身する。
また江戸中期、18世紀の宝暦年間に津軽藩の漁師が捕まえたという人魚も頭だけが人間の人面魚タイプだった。それ以外にも、17〜18世紀の大衆本には、腕がある人魚と、腕を持たない人魚の挿絵が混在している。つまり、日本人にとって腕がない人魚は大昔から馴染みある存在なのだ。
そう考えると、(現代の日本を含め)世界の人魚のイメージは欧米寄りに相当偏ってしまったことになる。オーストラリアで打ち上げられた死骸のような人魚が実在しても、日本人にとっては本来それほど驚くべき話ではないとも言えるのだ。このように多角的な視点から、今回の人魚に関する考察が行われることを期待せずにはいられない。
【参考】
https://www.dailystar.co.uk/news/weird-news/mystery-corpse-washed-up-beach-30451618
webムー編集部
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