UFO墜落現場と謎めいた証言者たち 「古代の宇宙人:ロズウェル事件の真相」で読む真相の一端/宇佐和通

文=宇佐和通

    CS放送「ヒストリーチャンネル」の人気シリーズ「古代の宇宙人」から、ロズウェル事件の回を解説。1947年に起きたUFO墜落事件の現場には、いまだ、多くの証言者や研究家が集まってくる。

    墜落UFO事件の証言者

     2019年7月。「ムー」創刊40周年記念号の総力特集記事の取材で、並木伸一郎先生とともにニューメキシコ州ロズウェルを訪れた。ロズウェルに行くのは今回で6回目だ。
     1990年代半ばに初めて訪れたときには、『The Roswell Incident』(1980年:C・バーリッツ/ウィリアム・ムーア)と『UFO Crashat Roswell』(1991年:ケビン・ランドル/ドナルド・シュミット)という2冊の本に記されている情報を整理し、バラード葬儀社や“墜落現場”──当時はシーラ・コーンという女性が一帯の土地の所有者で、「スピルバーグから話が来ている」なんていっていた──をはじめ、訪れるべき場所のリストを作ったことを覚えている。

    「Roswell Incident」 https://www.amazon.co.jp/dp/0448211998
    「UFO Crash at Roswel」 https://www.amazon.co.jp/dp/B01A65M4IO
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    ロズウェルのUFO墜落現場。
    アメリカのニューメキシコ州ロズウェル。デブリ・フィールドの手前1.6キロのところに立つ石積みの塔。

     ヒストリーチャンネル『古代の宇宙人:ロズウェル事件の真相』を見て思ったのは、70年以上たった現在でも、いまだに騙す側の人間も騙される側の人間も想像以上に多く存在すること、そして想像もできない“網”の広さと深さである。

     番組は、キャトル・ミューティレイションのリサーチで有名なリンダ・モールトン・ハウによる、事件についての説明で幕を開ける。
     驚かされたのは、この手の番組にロズウェルの元市長というオフィシャルな立場にあったデル・ジャーニー氏が登場し、ジョルジョ・ツォカロスのインタビューに答えて連邦政府による隠蔽工作の可能性に言及していることだ。
     場所はロズウェルのウォーカー空軍基地内にある格納庫。異星人の死体が最初に運び込まれたとされている施設だ。ジャーニー氏は、回収されたエイリアンの死体がライト・パターソン基地(当時はライト・フィールド基地)に運ばれたことにまで触れる。

    ライトフィールド陸軍基地(現ライト・パターソン空軍基地)。ここに2体の異星人の死体が運び込まれたという。

     証人として出演する人物のなかで特筆すべきだと思うのは、事件発生当時に情報将校としてロズウェル基地に勤務していたジェシー・マーセル少佐の孫息子、ジェシー・マーセル3世である。
     マーセル少佐の息子、ジェシー・マーセル・ジュニア氏は比較的マスコミへの露出が多かった感があるが、語っている内容が直接の体験に関するものではないにしても、ジェシー・マーセル3世がこういう形で人目に触れるのはきわめて珍しいと思う。

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    事件の際、ロズウェル基地の記者会見に登場したジェシー・マーセル少佐の孫息子、マーセル3世。

    エリア51とロズウェル事件

    「空飛ぶ円盤」が回収されたことを報じる当時の地元新聞。

     ところで、これまで多くの証人たちが語ってきたように、異星人の死体も墜落円盤も存在して、それが回収されたと仮定しよう。こうしたものが運ばれるのはどんな場所だろうか。それは、2013年にCIAがしぶしぶ存在を認めたネバダ州のエリア51だ。やはり、エリア51はロズウェル事件と直結する施設だったのだろうか。

    アメリカ、ネバダ州にある秘密基地エリア51。2013年に公表されるまで、〝地図にない極秘軍事施設〟とも呼ばれていた。

     ロズウェル事件には騙す側の人間も騙される側の人間も想像以上に存在すると書いた。騙す側の人間は、主として事件の本質をひた隠しにしたい軍関係の人間、それに情報機関の人間も見え隠れする。

     筆者も、騙す側である可能性がきわめて高い人間に何人か会っている。なかでもビル・ムーアのインタビューで会った、特に怪しいオーラをまとった男性が今でも忘れられない。
    『The Roswell Incident』の著者であるムーアは、穏やかな口調で話す、感じのいい60代の男性だった。このときの取材でコーディネーターを務めてくれたノリオ・ハヤカワ氏と並木先生が次々と質問をしていく過程で、ムーアと一緒に来ていた40代くらいの男性が「ビル、ケアフル!」(慎重に!)と何回も口にしていたことを思いだす。
     この男性、筆者の隣に座ってにこやかにインタビューの進行を見守っていたのだが、ときどき鋭い口調で「ケアフル!」という。そのたびにムーアは「これはダメだったか」というような表情を見せる。
     ひょっとしたら、ムーアの役割は表向きのものでしかなく、本当の意味での秘密の番人は、“お付きの男性”だったのかもしれない。そんなことを思ったりもする。

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    収容された異星人の遺体の検証が行われた、ウォーカー空軍基地格納庫内の小部屋。

     ニューメキシコ州のニックネームは、「ランド・オブ・エンチャントメント」=魅惑の地だ。
     アメリカ合衆国で5番目の広さがあり、文字通りさまざまな種類の魅惑で満ちているが、そのなかでもロズウェルが突出していることはいうまでもない。
     実際のところ、事件のすべてを知る人間など、どこにもいないのかもしれない。だが、そんな可能性を思い浮かべれば思い浮かべるほど、ロズウェル事件はますます魅惑的に映るのだ。
    『古代の宇宙人:ロズウェル事件の真相』を見た後、またすぐにでも現地を訪れたくなった。

    ヒストリーチャンネルYouTubeで視聴

    (2020年1月9日記事を再編集)

    宇佐和通

    翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。

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