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高橋雄二 北海道
物心がついたころにはすでにその家に住んでいました。
その家は町中にあるものの周囲には倉庫や工場が点在しています。そのため昼間はにぎやかですが、夜は陰気で寂しいところでした。
奇怪な出来事が起こるようになったのは高校3年生のころからです。
それまで家族の寝室は2階でした。夜になると2階の天井裏でネズミの活動が活発になります。ネズミを追う猫まで出現し、騒がしさは相当なものでした。
ところが、ある日を境に音がピタリと止んだのです。同時に奇妙なことが起こりはじめました。
「2階で寝ると金縛りに遭う」
母がそういいだしたため、部屋を改造し、母は1階で寝るようになりました。代わりに母が寝ていた2階の部屋は私の勉強部屋になりました。
私が人生初の金縛りを体験したのは部屋を移動した初日の夜のことです。身動きができず、耳元では赤ん坊の泣き声が聞こえてきました。
その日以降、私はたびたび金縛りに遭うようになり、夏休みに入るころには、毎晩、金縛りに遭っていました。時間帯は午前2時ごろです。
そのことを母に話したところ、
「2時まで起きててごらん」
と、いわれました。
母いわく、2階で丑三時まで起きていると、天井から金属音が聞こえてきて、それを合図に屋根の上を人が歩く音が聞こえてくるそうです。
「だけど、外へ出て屋根まわりを見ても何も異常はないのよ」
興味を持った私は、その夜、寝ずに午前2時になるのを待ちました。
いよいよ2時をまわったころ、母がいうように天井から金属が擦れる音が聞こえてきました。屋根の上をだれかが歩く音もします。急いで外に出て屋根の上を確認しましたが、やはり人影はありませんでした。
夏休みが終わりに近づいたころのこと、金縛りに遭うのが怖くて私は眠らないようにしていました。
午前2時をまわったころ、部屋の空気がゆがむのを感じました。これは金縛りに遭う前兆です。
やがて金縛り状態に陥った私は、ボーッと天井を見ています。
そのときです。天井から毛むくじゃらの足が1本、私の太ももあたりに垂れさがってきました。その足が一回転したかと思うと、なんと私の顔の上に落ちてきたのです! !
恐怖のあまり大声を上げてしまったのですが、そのときにはもう毛むくじゃらの足は消えていました。
それ以来、夜になるのが怖くて仕方ありません。悩んだ末、助けてもらいたい一心で、夜9時に山の上の産土神社に出かけていきました。
社殿に続く石段で急に肩が重くなり、呼吸が苦しくなりました。
そして社殿にたどりつき、柏手でを打つと、社殿の中からゴーッという音が聞こえてきます。その直後、境内の電灯が消えてしまいました。
不思議なことにその夜から金縛りに遭うことがなくなりました。
その後、私の自宅のまわりで縊死が6件発生。ほかにも女性ふたりが心中で亡くなったりと、不可解な出来事が立てつづけに起こりました。
やがて私は大学進学のために上京。家族は隣のマンションに引っこしました。以来、私たち家族に不可解な出来事は起こっていません。
今、思えば、あの家は何かいわくでもあったのかもしれません。

(本投稿は月刊『ムー』2026年07月号より転載したものです)
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