新島の秘祭「海難法師」に神霊出現!? 外出禁止の夜に現れるのは悪霊か妖怪か?/うえまつそう
伊豆諸島で江戸時代から行われているといわれる、外出禁止の風習「海難法師」。現在も多分に伝説のヴェールに覆われたその謎に、新島出身の怪談師が迫る。
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現役教師にして怪談師。唯一無二の二足のわらじをはく語り手、うえまつそう。彼だからこそ知り得た「学校の怖い話」が一冊の本にまとめられた。そこには、ふだんは隠された「もうひとつの学校」の姿が……。
起立、気をつけ、礼、着席。
皆さん、こんにちは。現役で高校の体育の先生をしているうえまつそうと申します。
二十年ほど教育の現場にいながら、もう異動したのは何校目でしょうか。
その先々すべてで言える確かなことは「怪談のない学校はない」ということです。
何十年、時には百年以上もの間、あまたの子どもらがさまざまな想いを抱えて日々の大半を過ごし、限られた期間で去ってゆく。
そんな環境下で、周りは壁に囲まれ、出入口は門となる造り。
まるで結界が張られているかのようではありませんか?
日常と非日常。その境目にあるような特殊な世界だからこそ、異世界やあの世と呼ばれる空間とも繋がっているような気がしています。
ずっと昔から受け継がれてきた怪異。新しく生まれた怪異。
誰しもが三年、長くても六年で去る場所に、何年もいつづける先生だからこそ知り得る「学校の怖い話」。普段は隠された「もうひとつの学校」。
そこに皆さんをいざなえることを大変嬉しく思います。
読み終わったとき、あなたの知っている学校の姿はまったく別のものになっているかもしれません。
それでは授業のはじまりです。
都内の高校に勤める四十代の男性、U先生の体験談になります。
U先生が以前勤めていた高校には不思議な言い伝えがあって、「真冬」「土砂降り」「夕方」この三つの条件が揃うと、体育館の裏に「ハテナのおばけ」が出ると言われていたんです。
ハテナのおばけと言われても想像がつかないかと思いますが、二メートルくらいの背丈で、顔も体も全身真っ黒。ずぶ濡れになりながら猫背になってググググっと背中をまげ、ちょうど「?」マークのような格好で覗き込んでくる。そうして口を大きく開けると、ニヤニヤしながらこう訊いてくるのです。
「ハテナ? ねえねえ、ハテナ?」
そのあまりの怖さに逃げ出すのが普通なのですが、そのハテナのおばけをやっつけてやろうと思い立ったのが、不良生徒のA君。条件が揃うたびに体育館裏に通っていると、真冬のとある日の夕方、とうとう出くわしたらしいんです。
「はてな? ねえねえねえねえ、は? て? な?」
「おまえ何言ってんだよ。俺は全然怖くないからな。おまえなんてとっちめてやるよ。なぁ。なぁ。なぁ!」
「『な』でいいのね? なぁ~~~~~~~」
「ぎゃあああああああ……!!」
一緒に来ていた仲間は一目散にその場から逃げだしたそうなんですが、翌日学校に来てみると教室に不良生徒A君の机がない。
出欠を取るときも先生からA君の名前が呼ばれないので、昨日一緒にいた子らが、
「あの……先生、A君の名前は? 席はどこにやったんですか?」
そう聞くと先生はきょとんとして、
「え? A君? 誰だいそれは?」
……先生も、他の生徒たちも、誰もA君の存在を覚えていなかったんです。
この話を聞いてU先生、気づいたんです……ハテナのおばけって、ハテナ(?)じゃなくて、「歯と手と名どれがいい?」って聞いてたんじゃないかなって。
つまり、「歯と手と名前、どれを失いたい?」って言っていたとしたら……。
A君はそのとき「なぁ、なぁ!」と言ったから名を……名前を……その存在ごと消されてしまったんじゃないかと思うんですよね。
それからほどなくして、いちだんと冷え込んだ冬の日、とうとう体育館裏でU先生、遭遇してしまったんだそうです。
大きな黒い塊がU先生に向かってズズズズ……っと寄ってきて、
「ハテナ? ねえねえねえ、は? て? な?」
その姿が怖くて怖くて、何より気持ち悪くて、U先生は泣きながら震えて後ずさりました。その時、思わず出た言葉が「は……はぁ!」だったんです。
……そのあとどうなったかは皆さんがいま想像している通りです。
U先生は、健在です。一部の歯をゴソッと失ってしまいましたが、それだけで済んだのでまだよかったのかもしれません。
あの時の体験はいまでも忘れられません。あ、大きい声では言えませんが僕、奥歯が全部ないんですよね。
そんなうえまつ……あ、U先生の体験談でした。
続きは書籍「うえまつそうの学校の怖い話」にて。
うえまつそう
怪談・都市伝説などをテーマに活動する怪談師、YouTuber。現役教師で「地獄先生」の二つ名ももつ。新島出身で「渋谷モヤイ像」の持ち主でもある。
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