現教皇フランシスコでカトリックは終焉する!? 聖マラキ予言「最後の教皇」の正体/宇佐和通・ヒストリーチャンネルレビュー
900年前、ひとりの大司教が残した予言の書には、最後のローマ教皇とカトリック教会の終焉が明記されているという。預言に記された112番目、最後の教皇とはいったい誰なのか?
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、2000年もの長い歴史を持つ ローマ・カトリック教会の歴代教皇にまつわる予言を取りあげる。
*本稿は月刊ムー2025年5月号(4/9発売)掲載の内容です。
*ローマ教皇フランシスコは2025年4月21日に逝去されました。
Pope Francis died on Easter Monday, April 21, 2025, at the age of 88 at his residence in the Vatican's Casa Santa Marta. pic.twitter.com/jUIkbplVi2
— Vatican News (@VaticanNews) April 21, 2025
3月2日、日本時間では3月3日朝、過去1年間にアメリカで公開された映画の中から優れた作品を表彰する第97回アカデミー賞の発表が行われた。いずれ劣らぬ傑作が目白押しの中、8部門でノミネートされ、最終的に「脚色賞」を授賞したのが、エドワード・ベルガー監督の映画『教皇選挙』であった。
この映画は、全世界に14億人以上いるローマ・カトリック教会の信者を束ねる最高位聖職者にして、世界最小の国バチカン市国元首でもあるローマ教皇を選ぶ教皇選挙、「コンクラーベ」の秘密の内幕を描いた話題作である。映画では、候補者となる100以上の高位聖職者が教皇位を目指して暗闘を繰り広げ、権謀術数が渦巻き、遂には爆弾騒ぎまで起こる。こうした混乱を乗り越えて新教皇が選ばれるが、彼は重大な秘密を抱えていた。その驚きの結末は、ぜひ映画館に足を運び、自ら確認してもらいたい。
ちなみにローマ教皇の座は、イエス・キリストの一番弟子にして12使徒のひとり、ペテロを初代として、21世紀の現代にいたるまで2000年にわたり、いっさいの断絶なく続いてきたという、世界でも例を見ない地位であり、現在のフランシスコ教皇は第266代目にあたる。
ところが一部では、そのように連綿と続いてきたローマ教皇という存在が、フランシスコ教皇で最後になるのではないかともいわれている。それは教皇にまつわる、「すべての教皇に関する大司教聖マラキの予言」に基づくものである。
この予言は、12世紀アイルランドの聖職者聖マラキ(1094~1148)に帰せられるのでこの名がついているが、単に「聖マラキの予言」とか、「教皇の予言」とも呼ばれる。
聖マラキはアイルランドのアーマーに生まれ、リスモア島で学んだ後アイルランドに戻り、1134年にアーマーの大司教になった。その後1142年には、アイルランドで最初となるシトー会修道院をラウスに創設、1148年にローマを目指して旅をする途中、フランスのクレルヴォーで客死した。
その聖マラキは予言の才にも恵まれており、予言の多くが的中したともいわれている。
「聖マラキの予言」は、彼がまだ存命だったころの第165代教皇ケレスティヌス2世(在位1143~1144)以後における未来の教皇について予言したものだ。もちろんそれぞれの教皇の名前はないが、代わりに彼らの特徴を示すシンボルのような短い言葉が即位順に列記されている。
たとえば、最初に登場するケレスティヌス2世のところには、「テヴェレ川の城より」と記されている。じつはこの教皇の出身地は、テヴェレ川沿いのチッタ・ディ・カステッロ(城の都市の意味)である。つまり彼の出身地をいい当てたことになる。
もっとも、最初のケレスティヌス2世から3番目のエウゲニウス3世(在位1145~1153)までは聖マラキの存命中に即位しているから、厳密には予言といえないかもしれない。しかし、その後の教皇についても、それぞれの世俗名や出身地、紋章の模様などで特徴を端的にいい表している。
聖マラキの死より70年近く後に即位した第177代教皇ホノリウス3世(在位1216~1227)については、「ラテラノの教会参事会員」と記している。実際ホノリウス3世は、サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂の参事会員だった。
教皇即位前の世俗名を記している場合もある。第168代教皇アナスタシオス4世(在位1153~1154)には、「スブッラ神父」という言葉が与えられているが、実際彼はスブッラ家の出身だった。
出身家の家紋に言及する場合もある。たとえば第190代教皇ホノリウス4世(在位1285~1287)のところには、「獅子の薔薇より」という言葉が付されているが、実際彼の属するサヴェッリ家の紋章は2頭の獅子に支えられたバラだった。
こうした予言が、111人目まで続く。ところが最後となる112番目の予言だけは、少々趣が異なり、例外的に長い文章となっている。そこにはこうある。
「ローマ人ペテロがローマ教会への極限の迫害の中で即位するだろう。彼はさまざまな苦難の中で羊たちを司牧するだろう。そして、7つの丘の町は崩壊し、恐るべき審判が人々にくだる。終わり」
つまり、ケレスティヌス2世から数えて112人目の教皇の時代に7つの丘の町ローマが崩壊し、最後の審判が下されるとも解釈できるのだ。
そして、この予言された112人目にあたるのが、現在のフランシスコ教皇なのだ。
ここで読者の皆さんは、少しばかり疑問に思うかもしれない。
「聖マラキの予言」は、第165代ケレスティヌス2世から始まっている。そこから数えて112人目というと第276代目の教皇となるはずだ。
しかし、現在のフランシスコ教皇は第266代目であるから、今後まだ10人の教皇が誕生するではないか、と。
じつは「聖マラキの予言」における歴代教皇の数の数え方は、少し特殊なのだ。というのは、そこには「対立教皇」と呼ばれる者たちが10人含まれているのである。
ローマ教皇の長い歴史の中では、選挙がうまく機能しなかったことや、政治的な対立などが原因で、同時期に複数の人物が教皇を名乗るという状況が何度か発生している。
いわば日本の南北朝時代のようなもので、当時はこの複数の教皇が独自に教皇としての執務を行っていた。しかし、後世にそうした状況が解消されると、その中のひとりだけが正式な教皇として名を記録されるようになった。このとき、正統と認められなかった者が対立教皇とされている。
「聖マラキの予言」は、こうした対立教皇についても予言しているというのだ。
この教皇の数え方については1595年、ベネディクト会修道士アーノルド・デ・ヴィオンが『生命の木』で最初に「聖マラキの予言」を公表して以来、このやり方が定着している。ヴィオンはその根拠として、スペイン人のドミニコ会士アルフォンソ・チャコンが著したという解説に言及している。
慣例となっているこの数え方に従う限り、現在のフランシスコ教皇が112番目、つまり最後の教皇となるのだ。
では、ペテロについてはどうか。ペテロとは、本来ギリシア語で「石」とか「岩」を意味するが、イエス・キリストの最初の弟子にして最初の教皇であるペテロにちなんで、現在ではキリスト教圏で広く男性名に用いられている。
しかし現代では、言語によって異なった名になっている。たとえば英語では「ピーター」、フランス語では「ピエール」、イタリア語では「ピエトロ」などである。
他方、現教皇の「フランシスコ」という名は、イタリアの聖人アッシジの聖フランシスコ(1182~1226)に由来する。そしてアッシジの聖フランシスコの本名はジョヴァンニ・ディ・ピエトロ・ディ・ベルナルドーネ。なんと名前の中に「ピエトロ」、つまりペテロが使われているのだ。
となると、やはりフランシスコ教皇の在位中に最後の審判が訪れるのだろうか。
一方で「聖マラキの予言」についてはさまざまな批判が寄せられていることも事実だ。
すでに述べたように、この予言が最初に公開されたのは1595年、聖マラキの死後450年も後のことだ。しかもそれ以前の文書で「聖マラキの予言」に触れるものは、少なくとも現時点まで確認されていない。聖マラキの伝記においても、彼が教皇の予言を行ったということはいっさい書かれていない。つまり、本当に「聖マラキの予言」かどうかは不透明なのだ。
また、リストの数え方に関して、アーノルド・デ・ヴィオンが指摘するアルフォンソ・チャコンの解説というものも確認できていない。そこで、この予言は16世紀の贋作であるとの主張もある。また、リストの数え方自体が間違っている可能性もある。
もしそうだとすれば、最後の審判はフランシスコ教皇の在位中には起こらないか、あるいはまだまだ先のことになる。
ただ、フランシスコ教皇も現在88歳と高齢で健康不安もあり、生前退位の可能性も囁かれている。いささか不謹慎ないい方であることを承知の上で、誤解を恐れずに述べると、彼の在位中に、予言通り最後の審判が起こるかどうかは、比較的近いうちに明らかになるのではないだろうか。
●参考資料=「ムー」2013年8月号(学研)、『検証予言はどこまで当たるのか』(ASIOS/菊池聡/山津寿丸著/文芸社)、「ノストラダムスWiki」(ウェブサイト)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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