日本最古の巨人伝説記録を物語る巨人像を目撃! 茨城県・大串貝塚のダイダラボウの威容
日本各地に残る超大型巨人の伝説。そんな伝説を体感できる場所が茨城県にあった。
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青森県弘前市の岩木山。津軽平野にそびえる最高峰の雪原に、謎の足跡が発見された。ホラー作家で妖怪研究家の筆者が、その正体を巨人伝説の観点から考察する!
8月某日、青森県弘前市在住のNさんから、不思議な画像が送られてきた。
雪の上を等間隔に刻む、切り取り線のような跡。
まるで「一本足」の生き物がつけた足跡のようだ。
これが撮影されたのは、2019年3月。津軽平野にそびえる岩木山。同山のスキー場で働くNさんはこの日の深夜、いつものように圧雪車でコースのメンテナンスをしていた。
山上まで行って戻ってきたNさんは、さっきまではなかった足跡に気づく。大きさは30〜35センチ。「ストンストンとスタンプを押したみたいな跡」で、付近の森を出たり入ったりしながら100メートルほど続いている。
普段は人も車も通らない静かな場所だ。しかも、現場を離れていたのは、ほんの20分ほど。これは人のつけた跡ではない。ならば動物の足跡かと、何十年と山で働いてきた先輩に画像を見せたが、こんな足跡は見たことがないという。
私は動物行動学の資料から類例を捜したが、目ぼしい情報は見つからない。そこで画像を日本モンキーセンターに見てもらったところ、「断定はできないがイタチかテンが両脚を揃えて走った跡ではないか」とのこと。なるほど、それならば一本足の足跡に見える。
だが、何十年と山にいた人が、今まで見たことがないと答えたのは不思議である。
調査の方向を変え、民俗誌を中心に調べた。
すると驚くことに「雪に残る一本足の跡」の記録は日本各地にあった。
高知県では「山鬼」「山ヂイ」と呼ばれる、ひとつ目で一本足の獣が6、7尺の間隔で足跡を雪に残す。その形は丸く、径4寸ほど。杵で押したような跡だという。まさに「スタンプを押したみたいな跡」だ。同県幡多郡には「タテクリカエシ」という手杵のような形のものがスットンスットンと音を立てて雪に跡を残す。他にも紀州の「雪坊」、飛騨の「雪入道」など、一本足の怪の足跡とされるものが各地で記録されていた。
また、足跡とは別件だが、Nさんからこんな話を聞いた。
「スキー場ができたばかりのころ、山頂のゴンドラ乗り場で待機していると、巨人のような大きな影が現れた。仕事のことも忘れ、慌ててスキーで下山した」
これは、Nさんの職場の先輩の体験談だ。
私は驚いた。実は岩木山には「大人」なる巨人の伝説があるのだ。山麓にある阿曾部の森に鬼がいて、人間に懲らしめられ、山頂の赤倉というところの洞窟に棲んだという。「大人(鬼)」は製鉄などの高度な技術をもっていたらしく、彼らと村人の交流を語り継ぐ伝説もある。鬼の作った堰がある村は「鬼沢村」と呼ばれ、それが現在の弘前市鬼沢であるという。
本件の調査中、私は熊野地方の「一本タタラ」を思いだした。ひとつ目一本足の怪物で、姿を見た者はなく、30センチほどの足跡を雪上に残す。名のタタラは製鉄関連を語源とする説があり、巨人「ダイダラボッチ」の「ダイダラ」と同じく「大きな人」を意味するという説もある。これは「一本足の大人」なのだ。
撮影された30センチ以上の足跡。Nさんの先輩の目撃した巨人。
突き詰めていけば、どちらも同じ正体に辿り着くのではないか。
岩木山には「一本足の大人」がいるのだろうか?
各地の記録にある「一本足の跡」には、人の数倍のサイズの足跡もある。
雪の夜に現れる巨大な「一本足」。彼らは今も、各地の山に足跡を残しているかもしれない。
(月刊ムー 2024年11月号より)
黒史郎
作家、怪異蒐集家。1974年、神奈川県生まれ。2007年「夜は一緒に散歩 しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞してデビュー。実話怪談、怪奇文学などの著書多数。
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