獣人ヤフー、地下ペンタゴン、正体不明の民族…! 未知の宝庫・米アパラチア山脈のミステリー/ブレント・スワンサー
ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
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ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
世界各地に共通する伝説のひとつに、いわゆる「ヘルハウンド(Hellhound)」がある。ヘルハウンドの姿はその土地の伝承によって異なるが、一般的には大型の猟犬のような姿として描かれている。真っ黒い毛はぼさぼさでマットな質感、目は皿のように大きく、悪意に満ちた赤・黄・緑色の光を放っている。彼らは恐ろしい爪と牙を持ち、超自然的な俊敏さで行動する。今回は、アメリカに伝わる「ヘルハウンド」を見てみよう。
物語の舞台は、ノースカロライナ州ヴァジェ・クルーシスという山間の町である。この名はラテン語で「十字架の谷」を意味し、谷の中でほぼ直角を描いて合流する2つの川の流れに由来する。ハイウェイ194号線沿いには古い石造りの教会が建っている。そこには木々や雑草が生い茂り、崩れかけた墓石が並ぶ無気味な墓地がある。そしてこの墓地こそ、地獄から抜け出してきたような悪魔の猟犬が歩き回っていると噂されているのだ。
この話は1800年代から語り継がれており、最も有名な証言は、2人の若者がハイウェイを車で走っていたときに、大きな影が墓地から飛び出してきて目の前に着地し、急ブレーキを踏んで車を止めたというものだ。
2人は最初、普通の犬だろうと思ったが、そうではないこと悟ったのは、犬が顔を上げて燃えるように光る目を見せたときだった。全身真っ黒でボサボサの毛と目立つ牙。若者たちは車から出るべきではないと直感的に理解した。
その犬はしばらくの間、彼らを見つめていたが、やがて小走りで車に向かってきたという。しかも、再発進した車が、時速50マイル、60マイル、さらには70マイルとスピードを上げても、どこまでもぴったりとついて来るのだった。無気味な犬がようやく諦めたのは、車が十字型の川にかかる橋を渡ろうとしたときだった。しかし、車が視界から消えるまで犬はその場所を行ったり来たりしていたという。
ほかにも有名な話がある。ひとつは、掲示板「reddit」ユーザーの体験談だ。
このユーザーは、家族や親友のスティーブンとともに、スキーとスノーボードを楽しむために同地にいた。ある時、彼らは食事のためにダニエル・ブーン・インへと向かったのだが、その途中、あの教会のそばを通りかかった。すると、運転手を務めていた叔父の顔が恐怖で凍りついていることに気づいた。以下がユーザーによる説明だ。
「叔父はトランス状態のような目でリアウインドウに釘付けになっていた。みんなも後ろを見たが、ブレーキの明かりの向こうに……あれがいたんだ。大きな狼の頭と黒い毛皮、腕は長く、しかし体は人間そのもので、筋肉質な2本の脚で直立していた。意味がわからなかった。本当に愕然とした。
車をもっと早く動かすようにと母が叫んだ。数秒後、車はスピードを上げ、ゴトゴトと音を立てた。その生き物は、腰を落として四足歩行の体勢になって私たちの車の後ろを追いかけてきた。あの姿を思い出すと、今でも眠れない。とても滑らかだが、極めて不穏な、自然にはありえない動きだった。車は時速60マイル(約96キロ)まで加速したが、あれは私たちのすぐ後ろをついてきた。
一番覚えているのは、あの生き物の目だ。2本の葉巻の燃えさしのようで、黄色の虹彩は動かず、中心には黒い瞳孔もあった。彼らは、まるで催眠術のように心を奪うのだ」
もう一つ紹介する報告は、筆者がヘルハウンドに関して(海外メディア上で)執筆した記事を読んだ人物(匿名希望)から、直接筆者宛に寄せられたものだ。
その人物はある晩、夫と一緒にあの教会の前を車で通りかかった。すると、道の真ん中に、大きくて黒いなにかが現れ、急ブレーキを踏んだ車に接近してきたという。彼女は、その時のことを次のように説明している。
「黒くて大きく、猫背の生物でした。最初は熊だと思ったのですが、生物が顔を上げると、目には赤みがかった輝きがあり、犬歯も特徴的でした。それはマスティフ(大型犬)に似ていましたが、もっと大きく筋肉質で、不精髭のような毛が四方八方に伸びていました。そして、前触れもなく全速力で私たちに向かって走ってきたのです。私たちには、ギアを入れて逃げる暇さえありませんでした。しかし衝撃に備えて身構えた瞬間、それは消えてしまったのです。そして、それきりでした」
ヴァジェ・クルーシスの悪魔の猟犬は、この地域にすっかり定着している。私たちは、それが一体なんなのか考えなければならない。興味深い解釈として、これは「チャーチグリム(Church Grim)」と呼ばれるもので、古くからの風習に関連しているのではないかという説がある。かつて、墓地に最初に埋葬された者は、その墓地を永遠に見守る義務を背負わされる運命にあると信じられていたため、人々はしばしば、まず大きな黒い猟犬を埋葬するよう手配し、その犬を永遠の守護者とした。
都市伝説にしろ、レジャー中の超常現象にしろ、チャーチグリムにしろ、いわゆる「地獄の猟犬」と呼ばれるこの種の犬とよく似た話は、世界中に存在するのだ。
Brent Swancer(ブレント・スワンサー)
豪ミステリーサイト「Mysterious Universe」をはじめ数々の海外メディアに寄稿する世界的ライター。人気YouTubeチャンネルの脚本、米国の有名ラジオ番組「Coast to Coast」への出演など、多方面で活躍。あらゆる“普通ではない”事象について調査・執筆・ディスカッションを重ねる情熱と好奇心を持ちあわせる。日本在住25年。『ムー』への寄稿は日本メディアで初となる。
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