岩木山の神を祀る東北王朝の拠点 青森県「靄山」ピラミッド
列島各地に存在するピラミッドと超古代文明の謎を徹底ガイド!
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“光る眼のおかめ”を掲げる屋形船が夜の街を突き進む。周囲には、魑魅魍魎の如き異形達が駆けずり回る。北陸の奇祭「上村木七夕祭」の模様をレポート第2回。
*前回から続く
翌日、8月7日の夜は幸い天気に恵まれ、両日中止の最悪の事態は避けられた。
祭り開始30分前の午後7時頃、上村木神明社付近にある住宅街の交差点(お練りの出発地点)に向かうと、何やら物々しい太鼓の音が聞こえてくる。
音のする方を見ると、七夕竹と太鼓を積み、提灯飾りだらけのド派手な改造リヤカーがある。
それに乗った法被姿の若者が、激しいビートを刻んでいるではないか。祭りの開催を告げる“ふれ太鼓”だ。
すると程なくして、太鼓の音に吸い寄せられるように、道路の彼方から複数の“何か”がこちらにズンズン向かってくる。
頭や腰に網代を着付け、手に木刀や長刀を持った天狗や般若、狐の仮面集団――そう、待ちかねた「アジロ」の襲来である。
改めて眺めると、その姿は基本的に東北のナマハゲなどに通じるが、カラフルでモジャモジャな装いは、むしろ南国の精霊か何かのような印象だ。
ともあれ、異形の来訪神が人間界に続々集結する光景は、身震いするほど壮観であった。
やがて今度は、上村木神明社の方からゆっくりと、屋形船(型の神輿)が台車で運ばれて来た。普段は境内の奥に保管されているらしい。
ライトアップされた船体には、大きな行灯(屋形)と小さな鳥居が載せられている……が、そんな事より何よりも、一番気になるのは船首の正面。
上棟飾り風の御幣が掲げられ、象徴的に“おかめ”の面が付いているのである。
しかも何故か、その眼は不気味に光り輝き、今にもビームを発射しそうなのだ。
異様な屋形船の登場に呆然としていると、法被姿の少年達も篝火を持って現れた。
実はこの七夕祭、大正2年(1913年)に上村木(当時の加積村)の少年3人が、入善町の吉原と芦崎の「えびす祭」にヒントを得て始めたものだとか。
江戸時代から続くえびす祭は、大漁と航海安全を祈り、華やかな飾り付きの屋形船を担いで、町内を練り回る伝統行事。当時、この祭りを見た少年3人は感動し、自分達の村でも何かできないかと考えた。
そこで上村木神明社の天狗伝説に注目し、同年代の15、16歳の少年を集め、竹と御神木の杉葉で屋形船を製作。さらに天狗の面を付け、身体を大きく見せるよう網代を纏い、七夕の日に屋形船を担いで村内を練り歩いたのである。
以降、祭りは地元の中高生達だけで長年受け継がれてきたという。
近年は少子化に伴い保存会が作られ、大人も参加しているが、今も祭りを仕切る“親方”は中学生が務めているそうだ。
そんな訳で午後7時半、少年達を先頭にして、いよいよ神幸行列がスタート。
人々の諸願成就や世界平和を祈願しながら、屋形船が川に浮かぶ感じで男達に担がれ、「ヤッサホーレンマ」の掛け声とともに進んでいく。
「ヤッサ」=「ソレ~」、「ホーレンマ」=「鳳凰様」という意味らしい。
その後方を、リヤカーが太鼓を叩きながら追っていく。
これは何処か、天狗から迷子を取り返す為に、太鼓と一升桝を叩いて歩いた風習のようでもある。
そして、屋形船とリヤカーに追従しつつ、「アジロ」達は分散して練り歩く。
「アジロ」はそれぞれ個別のご利益を司っており、勇気を出して握手したり、刀で撫でてもらうと、心身健全、病気平癒、家庭円満などが得られるという。
また、「アジロ」が落とした網代の切れ端は、拾うとお守りになるとされるが、直接むしり取ると逆に罰が当たるそうだ。
「アジロ」の中でも天狗や般若は、沿道で人々を追いかけ回し、あちこちで恐怖と悲鳴をもたらしていく。ただでさえ強面なのに、刃が剥き出しの刀を持って迫って来るのだから、それはもうトラウマものである。
しかし、逞しく育って欲しいという思いから、親達は幼い我が子を「アジロ」に続々差し出すので、子供達の泣き叫ぶ声が後を絶たない。
一方、雑種の狐は屋形船の横を休む事なく走り回り、ひょっとこは熊手を持って千鳥足でリヤカーの後に続き、行列の警護を担当。無秩序のように見えて、意外と組織的な神々だ。
そんな中で筆者は、織姫も彦星も逃げ出しそうな、一際恐ろしい姿のアジロに目を引かれた。
(続く)
影市マオ
B級冒険オカルトサイト「超魔界帝国の逆襲」管理人。別名・大魔王。超常現象や心霊・珍スポット、奇祭などを現場リサーチしている。
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