謎のゲーム「ポリビアス」は米政府の極秘プロジェクトだった!? MIBも暗躍した40年前の都市伝説/オレゴン州ミステリー案内
超常現象の宝庫アメリカから、各州のミステリーを紹介。案内人は都市伝説研究家の宇佐和通! 目指せ全米制覇!
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超常現象の宝庫アメリカから、各州のミステリーを紹介。案内人は都市伝説研究家の宇佐和通! 目指せ全米制覇!
世界中から観光客が集まる米ネバダ州ラスベガス。ギャンブルだけではなく、ありとあらゆるエンターテインメントが集まる観光都市として、知らぬ者はいないだろう。ネバダ州にはもう少し規模の小さいリノという観光都市もあるが、やはり圧倒的知名度を誇るのはラスベガスだ。
多くの人が集まる場所には、奇妙な話も生まれやすい。まずは、原話バージョンがラスベガスで生まれたといわれている「いかにも」な都市伝説を紹介する。
* * *
とあるカップルが、新婚旅行でラスベガスを訪れた。ストリップ地区にある超有名ホテル(誰もが知っている「シーザーズ・パレス」や「ミラージュ」あるいは「MGMグランド」だろう)のハネムーン・スイートに泊まることになったのだが、部屋に入るとすぐにネズミが死んだかのようなひどい臭いがした。すぐにフロントに苦情の電話を入れたが、部屋は掃除したばかりであり、客室係も前の宿泊者も臭いについての話は一切していないと言われた。カップルは部屋を変えてほしいと頼んだが、週末だったこともあり他の部屋は空いていなかった。
どうすることもできず、2人は自分たちで悪臭の原因を突き止めようと部屋の中を調べ始めた。どうやら、ベッドのあたりから漂ってくるようだ。ベッドの下や天板、ベッドサイドテーブルの裏側まで調べたが、それでも臭いの発生源はわからない。
そしてカップルは、最後にマットレスを外してみることにした。マットレスを押しのけると、すぐ下のボックススプリングの中に、男の死体があった。
再びフロントに電話を入れて事情を説明すると、すぐに警官がやってきた。死体は、死後数日から2週間くらい経過した状態だったという。身分証明書は一切なかったので身元は分からなかったが、服装から察するに、闇社会の抗争で命を落としたものと考えられた。
* * *
「いかにも」な都市伝説と書いたが、この言葉にはいくつかの意味合いを盛り込んだつもりだ。ひとつはラスベガスという都市の特徴にほかならない。ひと昔まえのラスベガスは、(あえて特定はしないが)全米レベルで見て「イケてない」州の人たちが新婚旅行で選びがちな観光地、というステレオタイプなイメージがあった。
それに加え、「ラスベガスは犯罪に満ちた危ない都市だ」という、映画やテレビドラマによって半ば意図的に作られたイメージもあったはずだ。イケてない州からやってきた新婚カップルが、犯罪の香りが絶えない派手な大都市で体験した奇妙な事件――。そんなコンセプトで展開するこの都市伝説が語られ始めたのは1990年代のことだ。
そして現在、ラスベガスは大きな変化を遂げている。市当局は、拭いきれなかったダークなイメージからなんとか脱却しようと試行錯誤してきた。1980年代半ばあたりから、大きな屋内遊園地を併設したメガホテルや、有名アーティストが常駐してステージを毎日楽しめるような仕組みを作り、家族連れが楽しめることをコンセプトにした街づくりを推進。その後も、コンサート会場として使われる巨大な球体のアリーナ「The Sphere」が建設されたり、NFLの人気チーム、レイダースのホームタウンになったりと、健康的な娯楽が満載の安全な観光地としての性格をさらに強めている。
それに伴って、ラスベガスでは市内中心部のイベントスペースの警備体制が強化され、人出が特に多いスポットを中心に監視カメラが大幅に増加されるなど、市内のセキュリティレベルが格段に上がり続けている。ところが、都市伝説のほうも町の変化に合わせるようにして、新しいバージョンが噂されるようになった。
* * *
ある夏、オハイオ州に住む一家4人――夫妻と娘、息子――が、念願のラスベガス旅行に出かけた。久しぶりの旅行なので、ミラージュホテルの高級スイートを予約し、思いきり楽しむことにした。しかし部屋に入ったところ、夫妻が使おうと思っていたベッドルームが異様な臭いで満たされていた。何かが腐ったような、何ともいえない嫌な臭いだ。気にはなったものの、とりあえず町に繰り出して楽しもうということになり、とても暑かったのだが、可能な限り窓を広く開けた状態で部屋を出ていった。
数時間後、部屋に帰ってきたが悪臭は消えていなかった。それどころか、強まっている気がする。フロントに電話をかけて助けを求めると、客室係とメインテナンス担当の男性が部屋に来た。そして家族が見守る中、部屋を調べ始めた。
バスルームの配管からクロゼットの中、大型テレビの裏側まで調べたが、異常はない。念のためベッドのマットレスを外してみると、下にあるボックススプリングの中に男の死体があった。
すぐに警察が来て、死体は指名手配犯であることがわかった。地元警察の刑事は、闇社会のルールで命を落としてしまったのだろうと見立てた。
しばらくすると、ホテルの重役らしき風貌の男が部屋に入ってきた。一家揃って自分のオフィスにきてほしいという。オフィスに行き、飲み物を出された一家は、信じられないような申し出を受けることになった。重役は彼らにこう言ったのだ。
「今回は、楽しいご旅行を台無しにしてしまうようなことになり、大変申し訳ございません。お詫びのしるしとして、当ホテルのラグジュアリー・スイートの宿泊券と、ビュッフェ・レストランの生涯パスを差し上げたいと思います。ですが、今回の件はどうかご内密にお願いしたいのです」
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最初に紹介したバージョンの要素がそのまま盛り込まれ、さらにパワーアップしている。オチの部分に関しても、豪華なスイートルームの宿泊券とビュッフェの生涯パスという、実にわかりやすいお詫びが特徴だ。
都市伝説は時系列が事実と異なる形で伝えられ、その結果として「本当に起きた都市伝説」のような話が生まれるのだが、本件も例外ではない。1996年7月、まったく同じ内容の事件がカリフォルニア州パサデナのトラベロッジというチェーンホテルで起きた。
宿泊客から複数の苦情を受けたホテルのスタッフが、ある客室で女性の遺体を発見したのは犠牲者が殺害されてから10日経過した頃だった。パサデナ市の公共図書館のオンラインアーカイブには、事件を報じた複数の地元紙(1996年8月2日号)に掲載されたデータが残されている。これは、有名なアーバンフォークロアのコピーキャット的な犯罪だったのだろうか。現存する記事は、そこまで触れていない。
「ベッドの下の死体」の派生バージョンは、アメリカの有名観光地やリゾートを舞台にしたものが数多く存在する。また、ヨーロッパでも同じような話が語られている。ただ、都市伝説らしい起承転結の流れの見事さ、納得できる背景情報や理由付け、そしてさらに気の利いた土地柄ならではのオチが付けられたバージョンも含め、ラスベガス生まれの都市伝説と考えるのがふさわしいと思うのだ。
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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