悲劇の怪物「メロンヘッド」の正体は!? 政府の人体実験疑惑も囁かれる悪夢の都市伝説/ブレント・スワンサー
ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
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都市伝説研究家の宇佐和通氏の新刊『AI時代の都市伝説』から、今改めて知るべきトピックを抜粋して紹介!
シケイダ(Cicada=セミ)3301というのは、インターネット上で公開され、全世界のユーザーが挑戦したインターネット・パズルを提供していた個人あるいは組織のニックネームだ。IQが高い人を集めるという理由で始められたものだが、そういう人たちを集めてから行うことについては何も明らかになっていない。この話の核の部分は、難解なパズルを作成したのがどんな組織や個人だったのかということだ。最初にアップされたのは2012年で、次のようなメッセージから始まった。
「こんにちは。私たちは、高い知性を持つ人々を探しています。こうした人たちを見つけるため、テストを作りました。ここに示した画像には、メッセージが隠されています。これを見つけて、私たちを捜し出してください。長い道のりを経てたどり着く人たちにお会いできるのを楽しみにしています」
その後2013年、2014年(いずれも日付は1月4日)と合計3回にわたって同じことが行われた。パズルを解いた人だけが次の段階に進むというプロセスが繰り返され、最終的には何らかの賞品を手にできることが示唆されていた。
ヒントを探すためには、幅広くかつ深い専門的な知識が必要になる。インターネット関連はもちろん音楽やゲーム、中世のイギリスの詩、そして芸術作品の知識に加え、暗号化やエンコーディングといったコンピューターサイエンス関連の実務能力も欠かせない。世界中のユーザーがパズルに取り組み、実際に何らかのコンタクトがあった人もいたようだが、個人名は公表されなかった。2014年まで3年続いてアップされ、多くの人が取り組み、突如としてすべての動きが停まってしまった。
2013年は、政府機関の特殊な職務に向く人たちを探すためのリクルート活動ではないかという推測が有力だった。かなり昔の話だが、第二次世界大戦中には暗号解読者を募集するために全国レベルのクロスワード大会が開催された事実もあるし、情報機関に就職するためのテストにパズルが出題されることもあるという。大手IT企業によるキャンペーンという推測もあった。
ネットロア特有のおどろおどろしい要素も数多く盛り込まれながら話は拡散していった。インターネット上の秘密結社のイニシエーション(入会儀式)であるとか、既存の秘密結社がインターネットを使って行っているメンバー選抜であるとか、凄腕ハッカー集団の活動という解釈もあった。チリ政府当局は違法行為に関与したハッカーグループの活動のひとつであると主張したが、この説は今も立証されていない。さらにはカルト教団が関係しているとか、新しいところでは黒幕としてすべてを画策していたのが後にQAnon となるグループだったという説もある。
シケイダ3301には、画像内にデータを隠すために使われるステガノグラフィというテクノロジーが活用されている。最初の設問の画像をステガノグラフィ分析ソフトにかけると、イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの『天国と地獄の結婚』という作品の一節である“For Every Thing That Lives Is Holy” という文字列が浮かび上がる。参加者たちは、示される画像から得られるヒントを使って回答し、正解すれば次の段階に進みゴールに近づいていく。
謎解きのプロセスが繰り広げられるのは、コンピューター上だけではない。正解すると実際に行くべき場所が示されたウェブサイトに導かれることもある。サイトに示された場所にいくと、セミのロゴマークの横にQRコードが印刷されたポスターが貼られている。QRコードでたどり着くサイトに次のミッションが示されている。
現実世界で得られるこうしたヒントは、日本やポーランドも含めて全世界にまたがっていた。これだけのスケールで、サイバースペースと現実世界を行ったり来たりしながら展開するゲームを作ったのは誰だったのか。
〝主催者〞は、2014年に次のようなメッセージを複数のSNSにアップした。
「私たちは探していた人物を見つけました。私たちの旅は終わります。みなさんの献身と努力に感謝します。テストを完了できなかったとしても、絶望することはありません。このような機会はこれからもあるでしょう。皆さん、ありがとうございました。3301」
シケイダ3301が何の説明もなく唐突に終わったのは、手は込んでいるものの悪意のないいたずらだったからだという見方もある。この事件に関する資料を調べていると、日本語では「オタク」と訳されることが多いGeek(ギーク)という言葉をよく見る。シケイダ3301の存在が、世界中のギークたちに深く刺さったことは間違いない。もしかしたら、サイバースペースを舞台に繰り広げられたメタ・ギーク祭のようなイベントだったのかもしれない。
第3回を最後に、新しいパズルがアップされることはなかった。世界中の挑戦者たちの大半が単なるフォロワーであることを告げられた形で終わってしまっているのが事実だ。『ワシントン・ポスト』紙をはじめとする主流派マスコミ媒体も注目し、いまだにインターネット史上最も不気味なミステリーのひとつとして挙げられている。
2021年には『Dark Web: Cicada 3301』という映画も制作されている。シケイダ3301の再来をひそかに望むギークたちは、想像以上に多いと思うのだ。
<書籍情報>
『AI時代の都市伝説: 世界をザワつかせる最新ネットロア50』
宇佐和通・著/笠間書院
https://shop.kasamashoin.jp/bd/isbn/9784305710147/
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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