静嘉堂創設130周年・新美術館会館記念展Ⅱ「初春を祝う 七福うさぎがやってくる!」展/静嘉堂@丸の内
昭和の名工が生み出した圧巻の御所人形から、和漢の吉祥画まで、新春にふさわしい名品がずらりとならぶ展覧会が開催。1月2日から!
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18年ぶりのリーグ優勝を目前に迎える阪神タイガース。かつて「カーネル・サンダースの呪い」に苦しんだとされるが、もはや負のジンクスからは解放されているようだ。しかも、今やあの像は関西全域の福の神になっている……?
「カーネル・サンダースの呪い」という都市伝説がある。
1985年10月16日、阪神タイガースリーグが21年ぶりのリーグ優勝を果たした際、喜びに高ぶった阪神ファンがよってケンタッキーフライドチキン道頓堀店前のカーネル・サンダース人形を持ち出し、道頓堀に投げ込んだことに由来する負のジンクス、都市伝説だ。
当時の主力打者であるランディ・バースに似ているということにちなみ、祝福の胴上げの勢いで川へ投げ込まれたわけだが……仮にバースだったとしても川に投げ込むのは乱暴すぎるだろう。
ともあれ賑やかに1985年のリーグ優勝を飾った阪神タイガースは西武ライオンズとの日本シリーズも制し、見事日本一に輝いた。だが……その翌年、1986年には、開幕から大洋ホエールズに3連敗、主力選手がケガによって戦線離脱が相次いでスタメン編成にも苦しむことに。それでも昨年日本一の精鋭たちはシーズン中に7連勝や9連勝という快進撃の状況も作るが、いずれも大洋ホエールズにストップをかけられる。結果、ペナントレース3位にとどまった。
さらに1987年には戦績がいっそう振るわず、球団史上最低勝率の勝率.331を記録。球団は成績低迷をファンから強く指摘されることになった。
そのほか球団内部や選手にいくつもの不幸が重なり成績低迷。そのたびに「栄光の1985年」が回顧され、名珍場面として「道頓堀に投げ込まれたカーネル・サンダース」も繰り返し想起され……転じて「呪い」とまで囁かれるようになったというわけだ。
実際のところ、阪神タイガースは低迷から脱し、2003年と2005年にリーグ優勝、2014年はリーグ2位からクライマックスシリーズを制して、日本シリーズに出場している。しかし、1985年から現在(2022年)まで日本シリーズ制覇からは遠ざかっているのだ。つまり「カーネル・サンダースの呪い」は今でも発動しているのではないか……という声もまだまだある。
このあたりは「プロ野球のジンクス」として有名なので、もっと詳細をご存じの方も多いだろう。
その後、「呪い」のカーネル・サンダース人形はどうなったか。
店頭人形が失われたケンタッキー・フライド・チキン道頓堀店では1992年に新しい人形を復活設置したものの、同店は1998年に閉店している。
すべて忘れられたかのような2009年3月10日、それは突如、地上に姿を現した。
大阪市による整備事業の一環で、潜水作業員が道頓堀川の戎橋下流を調査をしていたところ、偶然にも「人の上半身」のようなものを発見。引き揚げてみれば1985年に投げ込まれたカーネル・サンダース人形だと判明したのだ。
そのカーネル・サンダース人形は、ヘドロに漬かって灰色に変色し、下半身だけでなくメガネや両の手首も失われた状態であった。翌3月11日の調査で右手と下半身部分が発見されたが、左手と両足首は発見に至らず、不完全なままでの「復活」となったのだ。
「呪い」の発信源とされた人形が発見されたことで、不幸のジンクスは解消された……ように思える。
しかし、「ムー」としては「カーネル・サンダースの呪い」の影響は、形を変えてまだ続くと見ている。
まずは「カーネルサンダースの呪い」について、もう少し考えてみたい。
そもそも道頓堀からの飛び込み、投げ込みで有名なスポットは「戎橋(えびすばし)」だ。
これはそこから南に位置する今宮戎神社の参詣のために設置されたもの。つまり道頓堀の戎橋は、地域の商業的隆盛を信仰面で支える「えべっさん」にちなんだ重要スポットといえる。阪神タイガースの優勝など奉祝のタイミングでなくても「戎橋」は日々賑わい、人を集めていることからそのご利益は確かなものだ。
「えびす様」には諸相あるが、総じて「商業の神」「福の神」であり、戎の字を使う場合は「外来の神」の意味合いが強い。ケンタッキー・フライド・チキンというファーストフードの創業者の人形は「商業」「外来」という属性を備え、この地に立ち続けていたのだから、ご当地の「福の神」と共鳴していたに違いない。
さらにいえば「えびす様」の釣り竿と鯛を手にしたポーズは、チキンバレルを持つカーネル・サンダース人形ともシンクロする。
つまり、ケンタッキー・フライド・チキン道頓堀店のカーネル・サンダース人形は他店の人形とは異なり、「海の向こうからやってきた福の神」としての聖性を密かに強めた存在だった。それを川に流してしまうことこそが、いわゆる「呪い」のきっかけだったのではないか? さらにいえば、翌年に阪神タイガースに開幕連敗や連勝ストップを仕掛けたのが「大洋ホエールズ」であることも、海へ至る川へ「福の神」が流れてしまったことと何か因縁めいたものを感じてしまう。
えびす様とあのカーネル・サンダース人形の共鳴を踏まえると、「カーネル・サンダースの呪い」の行く末も少し違って見えてくるだろう。
繰り返しになるが、2009年にあのカーネル・サンダース人形は川底から引き揚げられた。その姿は左手と、両足首を失った状態であった。
お察しだろう。川底から引き揚げられたこの姿は「ヒルコ」なのである。
ヒルコは、『古事記』でイザナキとイザナミの国産みの際に生まれた最初の神だが、「わが生める子良くあらず」とされ、葦船に乗せられて流されたと記されている。「良くあらず」とは手足が異形という解釈もある。『日本書紀』では同じくイザナミとイナザギが産んだ神で、3歳になっても足が立たなかったために船に乗せて流された、とある。共通点は足の不具だ。
思い出してほしい。あのカーネル・サンダース人形も、最初に下半身を失った状態で発見され、その後も両足首だけは見つからなかった。足の不具という属性を得て、「戎」のカーネル・サンダース人形は、神話とは逆に「ヒルコ」に転じているのである。神話伝承では、流されたヒルコがエビスとなり、民間信仰の商業・福の神として祀られていったのだから、あのカーネル・サンダース人形の変遷は先祖返りのような転生として読めてくる。
あの人形が道頓堀・戎の地で備えた「商業」「外来」「福の神」という聖性は、蘇り、繰り返された神話によっていっそう強化されたに違いない。
こうした視点で「呪いのカーネル・サンダース人形」は「最強の福の神」となったといえるだろう。
その「ご利益」は今や、阪神タイガースという一プロ野球球団の趨勢どころではない。もっと大きな、大阪・関西地方全体の商業を盛り上げる神威が育まれているのではないか。
あえて断言しよう。
その最高に高まったご利益が期待できるのは、2025年の「Expo2025 大阪・関西万博」において、である。
万国博覧会で持ち込まれるものはまさしく「外来の福」であり、「戎」の霊性と一致する。
そして振り返れば、ケンタッキー・フライド・チキンが日本に初上陸したのは、1970年の大阪万博でのことなのだ。会場内のパイロットショップ(実験店舗)が成功を収めたことで、日本進出が進み、全国の店舗にカーネル・サンダース人形が並ぶことになる……。最強の福人形が霊性を発揮するのに、これ以上ない再来の現場を迎えるのだ。
川底から引き揚げられた「呪いのカーネル・サンダース人形」は、現在はケンタッキー・フライド・チキン日本法人の管理の元、関西オフィスで保管されているという(一般非公開)。
かつて「呪い」を冠したあのカーネル・サンダース人形は、今も変わらず、大阪・関西全域に外来の福を呼び込む守護者となり、2025年の万博を密かに支えているのだ。
そう考えたくなる、阪神タイガースの優勝目前の時間帯であった。
<参考>
https://www.kfc.co.jp/about_kfc/ilovekfc/colonelroom.html
https://www.imamiya-ebisu.jp/
https://www.excite.co.jp/news/article/E1505044192410/
webムー編集部
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