古代インド「ヒーローストーン」とサイコポンプに見る“あの世への旅立ち”の真実! 天使の存在は全世界共通か
インドでは古来より自らの命を犠牲にして戦った英雄を讃えた石碑「ヒーローストーン」が各所に建てられいる。この記念碑を考察することで見えてくるのが「サイコポンプ」と世界中の文化に共通するあの世への“旅立ち
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神器「ブラフマンシラス」は弾道ミサイル、怪鳥「ハンサ」は神々が搭乗した宇宙船ヴィマーナか!? 古代インド神話から読み溶ける核戦争の描写は有名だ。その有力な記録が、遠く離れたカンボジア、アンコール・ワットの遺跡に残されていた!
目次
古代インドで核戦争が起きていた──!
本誌読者なら、その話はよくご存じのことだろう。根拠となっているのは有名な叙事詩『マハーバーラタ』や『プラーナ』などの記述だ。なかでも『マハーバーラタ』は世界最大の叙事詩で、紀元前10世紀ごろに起こった親族間の戦争を、吟遊詩人たちが伝えるうちにさまざまな要素が混ざって膨らみ、5世紀ごろに現在の形になったといわれている。
その『マハーバーラタ』にあるのが、次の一文だ。少し長くなるが、引用してみよう。
「アシュヴァッターマンは烈火の如く怒り、戦車の上で口を丁寧にすすぎ、炎の輝きの神器アグネーヤを呪文とともに発射した。無数の矢は空を覆い炎に包まれアルジュナの頭上に落下した。
悪魔鬼神たちが騒ぎ、不吉な風が巻き起こり、天地は波立ち、太陽は光を失って逆の方位に向かった。神器におののいた戦象は突然駆けだして逃げる。水は熟せられ水棲動物が暴れまわる。
落下するアグネーヤに灼かれた将兵は、山火事の樹木のように次々と倒れていった。それはユガ(宇宙時間)の終わりに一切を焼き尽すサンヴァルタカ(宇宙破壊の火)のようであった」(『マハーバーラタ』第4巻/山際素男訳より抜粋/筆者意訳)
ここに登場する「炎の輝きの神器アグネーヤ」とは何なのか? 「無数の矢」が「空を覆い炎に包まれ」るとは、どのような状況なのか? そしてそれ以下の大地の描写は、何が起こったと告げているのか?
確かなのは、どう読んでも古代の原始的な戦争ではない、ということだ。まさに現代の核戦争を描写したとしか考えられないのである。
しかも、『マハーバーラタ』には、「神器ブラフマンシラスが攻撃した地域一帯は、12年間一滴の水も降らず大旱魃に見舞われる」という記述もある。この兵器を使うと大地は死の世界と化すわけで、神器ブラフマンシラスとは、まさに核弾頭を積んだミサイルそのものである。それゆえ、古代核戦争説には説得力がある。
ちなみに「アグネーヤ」と「ブラフマンシラス」だが、『マハーバーラタ』を詳しく読むと、両者が同一の兵器を指していることがわかる。
同書は1000年以上にわたる編纂のせいで固有名が煩雑になっており、神器も多種登場するうえに同意異名が多く、文脈上の不統一が著しいのだ。
実際、英語資料ではアシュヴァッターマンの神器はブラフマンシラスとなっている。したがって本稿でも、ブラフマンシラスで統一する。
さて──。
古代インドで核戦争があったとしたら、その舞台はどこだったのか。有力なのが、紀元前に滅んだインダス文明のモヘンジョ・ダロ遺跡である。
筆者もかつて同遺跡を訪れた際、現地で「テクタイト」と呼ばれる高熱で溶けて固化した砂を撮影した。
だがその一方で、膨大な考古資料を擁するインド国内には、古代核戦争を描いたような決定的な図像はほぼ見当たらない。そこで大きな手がかりとなるのが、古代ヒンドゥー文化の飛び地ともいえるカンボジアの有名な世界遺産、アンコール・ワットである。
アンコール・ワットは12世紀に造られた世界最大の宗教建築であり、当時の東南アジアに君臨したクメール帝国の建築美術の至宝である。東西1500メートル、南北1300メートルの濠で囲まれた敷地に、須弥山(しゅみせん)を模した中央祠堂(高さ65メートル)がそびえ、それを取り囲む3層の壮麗な内回廊から構成される。
最外となる第1回廊は東西200メートル、南北180メートルの矩形(くけい)プランで、全壁面に緻密な浮き彫りが施されている。この総延長760メートルにおよぶ膨大な芸術作品こそが、同寺院の世界評価の源なのである。
第1回廊は東西南北の4面がそれぞれ中央門を境に分割されているので、計8面の浮き彫りパネルに8種類の物語が描かれている。
そのなかで戦争関連のパネルは5面あり、たとえば第1面には「マハーバーラタの戦闘」が見られる。高さ2.5メートル、長さ48メートルの浮き彫りで、場面は卑劣なクル家100兄弟と虐げられたパーンドゥ家5兄弟の戦争だ。
なお、冒頭に登場したアシュヴァッターマンは、クル家についた軍師ドローナの息子で、父からブラフマンシラスを授与された。対するアルジュナはパーンドゥ家の次男で、以前にドローナから武芸指南を受けてブラフマンシラスを授かっている。
また、第7面のパネルは、「アムリタをめぐる神神と阿修羅の戦い」で、高さ2.5メートル、全長94メートルと、横に長いパネルである。古典『バーガヴァタ・プラーナ』の、不老不死薬アムリタをめぐる争奪戦を描いており、無数の戦士にくわえ、やや大きいサイズの40名が相対する20組の対戦場面が見られる。
これら2枚のパネルに共通するのが、複数本の矢束を弓に番(つが)えた人物像である。一目瞭然だが、下のパネルでは戦車に乗ったアルジュナが、見かけ上3本の矢束を番えている。
また、下のパネルでは、太陽神スーリヤが2本の矢束を番えており、怪鳥ガルーダに乗る神ヴィシュヌは4本の矢束を準備している。さらにクジャクに乗った軍神スカンダは2本の矢束、ヤクシャ(夜叉)に乗った神クベーラも複数の矢束を準備している。
これら複数の矢束は、いったい何を表しているのだろうか。
もちろん、アルジュナのような勇者が、マシンガンのように弓矢を連続して放つ神業を披露するのは『マハーバーラタ』の定番シーンであり、矢束はその技術の象徴のようでもある。
しかし英語資料によれば、ブラフマンシラスとは「先端に神ブラフマーの4つ(または複数)の頭部が現れる矢」で、「その破壊力は世界を滅亡させる」と解説されているのだ。
ということは、アンコール・ワットに描かれたこれらの矢束は、ブラフマンシラスの「複数の頭」──すなわち古代の核兵器もしくはミサイルの多弾頭──を暗示している可能性がある。
最初のパネルをよく見ると、アシュヴァッターマンは確認できず、ただひとりブラフマンシラスを使えるアルジュナだけが矢束を構えている。また、神器の行使を命ずる神クリシュナも、この戦車に同乗している。
さらにこの考えを後押しするのが、太陽神スーリヤである。
研究者はこの背景にある円盤を太陽と考え、「?」つきでスーリヤと比定した。しかし、先の英語資料とあわせて考えるなら、円盤はむしろブラフマンシラスの使用の際に出現する巨大火球の可能性が強い。なぜなら解説には、「この武器が登場すると、激しく炎が燃え盛る巨大な火球体が輝く」という記述があるからだ。
であればこれは、ブラフマンシラスを構えた際に現出するエネルギー球体、核爆発で出現する巨大な火球であるとも考えられる。
最後に、インドの古典にしばしば見られる宇宙船「ヴィマーナ」についても触れておきたい。
20世紀初頭になってまとめられたサンスクリット文献に『ヴィマニカ・シャストラ』なるものがある。
これは古代インドの飛行船に関する技術資料であり、具体的な飛行船──すなわちヴィマーナ──の図が掲載されていたことで、大きな話題となった。
また19世紀後半に建築されたラジャスタン州のナスィーヤン・ジャイナ教寺院には、金色に統一された市街模型と神々の宇宙船が天井から吊るされており、これもヴィマーナではないかといわれている。
残念ながらアンコールワットの壁には、直接的に「宇宙船」を表現するような図像はない。だが、ジャイナ教寺院の宇宙船を観察すると、それらはいずれも動物の頭部を船首としていることがわかる。ゾウであったり、クジャクやハクチョウであったりするのだ。
実はアンコール・ワットに登場する神々も、しばしば動物に乗っている。
たとえば神ブラフマーは怪鳥ハンサに乗って弓を番えている。ハンサの原型はインドガンともいわれ、ヒマラヤ越えで世界最高地点を飛翔するスーパーバードである。神話ではその飛翔力から地上と天界を結ぶ霊鳥として崇拝されており、まさに神が乗る宇宙船=ヴィマーナそのものなのである。
そもそもインドの古典は、まるで大海のような広さと深さを持っている。
かたやアンコール・ワット回廊の長大な浮き彫りも、第1回廊だけで760メートルにも及ぶ広大な世界だ。
このふたつの小宇宙から共通点を捜しだすことが、きわめて困難な作業であることはいうまでもない。
しかし一方で、微妙な相違点や違和感から、今回のようなブラフマンシラスの相似が浮かびあがることもある。
もちろん批判もあるだろう。だが、文献や図像の真実を知るのは、古代の作者のみである。そしてこのふたつの小宇宙には、まだまだ謎が秘められているに違いないのだ。
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