古代インドの叙事詩が描いた核戦争と超兵器!! 空飛ぶ戦車“ヴィマーナ”の謎/羽仁礼・ムーペディア

文=羽仁礼

    毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、古代インドの叙事詩で神や英雄たちが乗り、古代核戦争にも使われたとされる謎の飛行装置を取りあげる。

    高度な超古代文明は核戦争で消滅した?

     世界の四大古代文明というと、古代エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、そして黄河文明の4つである。日本では小学生でも知っている常識であるが、これは第2次世界大戦後に江上波夫が提唱したものらしく、世界的に見ると日本などごく限られた国でしか通用しない。
     結果的にこの説は、古代史に関する日本の常識を世界とかけ離れたものにしているうえ、「文明」の定義そのものさえ歪めてしまっているのだ。とはいえ、これらの文明が非常に古い起源を持つことは確かだ。

     しかし、この4つの文明よりも遙かに昔、記録にさえ残らない古代の地球に、現代文明を凌駕するほどのテクノロジーを誇る超古代文明が存在したと主張する者もある。
     たとえばアメリカの“眠れる予言者”エドガー・ケイシーやルドルフ・シュタイナー、ウィリアム・スコット=エリオットなどは、その霊視能力を用いて、かつて存在したアトランティスやレムリアなどに、現代の文明に劣らない高度な文明が発達していたと述べている。
     彼らによれば、アトランティスでは照明や暖房に電気が使用され、空や水中を自由に移動する乗り物まで使用されていたようだ。
     ラマ教の伝説に伝わる地下世界シャンバラにも、地表とは比べものにならないほど高度な文明が栄えており、それはかつて存在したアトランティスやレムリアの知識を引き継いだものともいわれる。

     では、かつてそのような高度な文明が存在したとして、それがどうして地上から姿を消してしまったのだろう。
     プラトンによれば、アトランティスは大規模な天変地異により、一夜で海中に没したということだが、太古の昔に地球規模の大きな核戦争が起こり、その結果古代文明が跡形もなく消滅してしまったと主張する者もいる。
     現に古代史研究家のデヴィッド・ダヴェンポートとエットーレ・ヴィンセンティのふたりは、古代インドの遺跡モヘンジョダロの一画で、高熱のため完全にガラス化した平原を発見し、古代に起きた核戦争の証拠と主張している。
     さらにふたりは、トルコのチャタル・ヒュユクでも高熱で焼かれた跡のある日干しレンガや黒壁が発見されており、カッパドキアにいくつも残る地下都市は、核戦争の際の地下シェルターであったとも主張している。

    古代の伝承に残された現代的な科学兵器の存在

     古代から伝わる文書にも、核戦争を思わせる記述がいくつも見つかる。
    『旧約聖書』の「創世記」に記されたソドムの町は、天から降ってきた硫黄の火で滅びたとされる。まるで、空から核兵器のような強力な武器で攻撃されたようではないか。
     また、古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』にも、核兵器の使用を思わせるような場面が描かれている。

    『マハーバーラタ』は、分量が「聖書」の4倍、18巻に及ぶ壮大なサンスクリット語の叙事詩で、古代からインドに伝えられてきたものである。その起源については、古代の賢者ヴィヤーサが語ったものと伝えられるが、詳しい成立年代はよくわからない。ただ、現在の形になったのは5世紀ごろといわれている。
     内容は、バーラタ族のクル家とパーンダヴァ家の間で争われた18日間の凄絶な大戦争を中心に、さまざまな神々に関する伝説や神話、哲学問答なども組み込まれ、ヒンドゥー教の精髄を示す聖典ともなっている。

    『マハーバーラタ』が述べる大戦争は、インド各地の王や神々、悪魔までが入り乱れ、数百万人もの大軍勢が入り乱れて戦う大規模なものだ。使用される武器としては、弓矢や槍はもちろん、棍棒、槌、矛、円盤、さらには風を起こす兵器や魔法までもが用いられ、中には現代のミサイルや核兵器を思わせるようなものもある。
     たとえば第7巻に登場する「ナーラーヤナ」という武器は、使用すると一陣の風が起こり、空に雷鳴が鳴り響き、大地は震え、海が泡立ち、川は逆流し、山野の頂が裂け、敵軍は紅蓮の炎に包まれたかのようになったと、まるで核爆弾のような威力が記されている。
     第8巻では、シヴァ神が魔神アスラの3都市を矢で攻撃する描写がある。これによればシヴァの矢の一撃で都市は崩れ落ち、一瞬にして灰燼と化したという。

     これらの記述は、実在した武器の威力を極端に誇張したものと考えられなくもないが、じつは『マハーバーラタ』に描かれた大戦争は、紀元前10世紀ごろに本当に起こったともいわれている。

    二大叙事詩に登場する神々の“空飛ぶ戦車”

     さらに『マハーバーラタ』には、ほかにも超古代文明の痕跡を示唆するような武器が登場する。それが「ヴィマーナ」と呼ばれる空飛ぶ乗り物である。
     ヴィマーナという言葉自体は、ときに神殿や戦車の意味にも用いられているが、『マハーバーラタ』には「戦車が空を飛ぶ」という描写がいくつか見られる。

    空を自在に飛び、恐るべき攻撃力と防御力を持つ究極のハイテク兵器として、古代インドの叙事詩に登場する空飛ぶ乗り物「ヴィマーナ」の図面。
    『マハーバーラタ』の戦闘シーンを描いたレリーフ。物語中ではミサイルや核兵器を思わせる武器も使われており、高度なテクノロジーの存在が垣間見える。

     たとえばパーンダヴァ家のガトートカチャという人物が戦車に乗って空を飛ぶ場面があるし、アスラのマヤが周囲12キュビトで4つの車輪があるヴィマーナを持っていたとも記されている。
     じつは『リグベーダ』など、『マハーバーラタ』より以前から伝わる文書にも、空飛ぶ機械らしきものが登場するのだが、ヴィマーナという名称が用いられるようになったのは、『ラーマーヤナ』が最初といわれている。
    『ラーマーヤナ』もまた、『マハーバーラタ』と並び称される古代インドの壮大な叙事詩で、ヒンドゥー教の主神のひとり、ビシュヌの化身であるラーマを主人公とする。
     物語は、神々さえ打ち破った大魔王ラーヴァナに妻のシータをさらわれたラーマが、猿の軍勢を率いてラーヴァナの軍勢を打ち破り、シータを取り返すまでの奮闘を描いている。
    『ラーマーヤナ』においては、大魔王ラーヴァナがヴィマーナを持っており、シータもこの乗り物で連れ去ったが、最終場面では、ラーヴァナを倒したラーマが同じヴィマーナで空を飛んで帰還する。

    『ラーマーヤナ』で大魔王ラーヴァナを倒したラーマが、妻シータとともにヴィマーナに乗って故郷へ帰るシーン。

     後述するように、ヴィマーナにはいくつも種類があるようだが、ラーヴァナのものは「プシュパカ」と呼ばれている。『ラーマーヤナ』によれば、プシュパカはアスラのヴィシュヴァカルマがヒンドゥーの創造の神ブラーフマのために作り、のちに富の神クベラが譲り受けたものだが、それをラーヴァナが彼の弟と一緒に奪い取ったものとされている。

    インド・ブリハディーシュワラ寺院の建物。大空へ向けて飛び立とうとするヴィマーナを思わせるシルエットだ。
    神殿や戦車などさまざまな姿で表されるヴィマーナだが、「飛行装置」である点は共通している。
    インド・ラジャスタン州のジャイナ教寺院の内部を飾るヴィマーナの模型。象がモチーフになっている。
    インド文化圏の寺院の本殿や高塔は、神々の乗り物を模して作られたといわれ、これらもヴィマーナと呼ばれる。

    古代の叡智が生みだした飛行装置“ヴィマーナ”

     こうしたヴィマーナの種類や形状、構造については、『ヴィマーニカ・シャーストラ』と呼ばれる文書に詳しく記述されている。

    ヴィマーナの種類や構造について詳細に記された古伝書『ヴィマーニカ・シャーストラ』。

     この文書によれば、ヴィマーナには作られた時代に応じて、大きくマーントリカ、ターントリカ、クリタカの3種類に分類され、さらにそれぞれの区分の中に何十種類もの機種がある。
    『ヴィマーヤカ・シャーストラ』には、これら数多くのヴィマーナのうち、特にシャクナ、ルクマ、スンダラ及びトリプラの4種類について詳しく述べられており、それらの図面も掲載されている。これら4種の中では、トリプラだけが一番古い時代のヴィマーナ、マーントリカの一種であり、ほかはクリタカの種類である。

     シャクナは「大きな鳥のヴィマーナ」とも呼ばれ、全長約30メートル、幅約6メートルの船型をしており、両側面に翼があって羽ばたくこともできる。
    「美しいヴィマーナ」とも呼ばれるのがスンダラで、大きな砲弾のような形をし、外周が約30メートルある。
     ルクマは「黄金のヴィマーナ」とも呼ばれ、その名の通り黄金のような色をした釣り鐘型で、4層構造になっている。
     トリプラは船のような形をした3階建てのヴィマーナで、出し入れ可能な車輪を持ち、空だけでなく地上や海中も進むことができるという。
    『ヴィマーニカ・シャーストラ』には、これら4種類の構造や部品なども詳しく述べられ、ほかにもヴィマーナの機体に用いる金属の作り方、推進機関、操縦法、さらにはパイロットの訓練やふさわしい食事など細々とした注意事項も含まれている。

     ヴィマーナの動力源としては、太陽の力など7種類の力で7つのモーターを動かすとされる。また内蔵される部品の中には、「ヴィシュワクリヤー鏡」と呼ばれるものもある。これは、操縦士のそばの回転台の上に固定され、外で起こることを全方位にわたって観察できるという、現代のモニターカメラのようなものである。こうした装置が古代インドにおいて実用化されていたとすれば、誠に驚くべきことである。

    『ヴィマーニカ・シャーストラ』に描かれたヴィマーナの図面。右上から時計回りにシャクナ、スンダラ、ルクマ、トリプラ。
    古代インドにこれほどの機械機構の概念があったことに驚かされる。

     だが、『ヴィマーニカ・シャーストラ』については批判もある。じつは『ヴィマーニカ・シャーストラ』の存在が最初に公表されたのは、1952年のことなのだ。
     発表したのは、国際サンスクリット研究学会の設立者G・R・ジョスヤーという人物で、ジョスヤーによればこの文書は、スッバラヤ・シャストリーという人物が1918年から1923年にかけて口述したものだという。つまり、20世紀になって書かれたことが明らかなのだ。

     他方、シャストリーはヴィマーナに関する知識を、古代インドの聖者バラドヴァージャとのチャネリングで得たとされており、古代インドの実際の知識が反映されている可能性もある。
     インドにはほかにも、デリーにある鉄柱など、超古代のテクノロジーを示唆するオーパーツや伝説が残っており、インド人の中にも自国の超古代文明の存在を信じる者が大勢いるようだ。じつは、現在のインド首相ナレンドラ・モディもそのひとりで、古代のインドに核兵器やヴィマーナ、遺伝子工学が存在したと公言している。

    ●参考資料=『神々の遺産オーパーツ大全』(並木伸一郎著/学研)、『古代の宇宙船ヴィマーナ』(遠藤昭則著/中央アート出版社)、『マハーバーラタ』第4巻、第5巻(山際素男訳/三一書房)、『人類は核戦争で一度滅んだ』(D・W・ダヴェンポート、E・ヴィンセンティ著/学研)他

    羽仁 礼

    ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
    ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。

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