アフリカで怪物「トコロシェ」の呪い被害が告発される! 親族間の呪術対立が深刻に/遠野そら
アフリカにつたわる怪物「トコロシェ」の呪術被害についてのレポート。ある夫婦を悩ませる嫌がらせに、トコロシェが使役されている……。呪術の悩みの解決は、やはり呪術しかない?
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古代ギリシア起源とされるヨーロッパの伝説上の動物、ユニコーン(一角獣)。意外なことにアフリカ南部でユニコーンが描かれた古い岩絵が発見されている。この2つユニコーンは偶然に時を同じくして生まれたのだろうか――。
19世紀後半に登場した電話の特許はグラハム・ベルが取得しているが、実はこの時期にはトーマス・エジソンやイライシャ・グレイ、さらにイタリアのアントニオ・メウッチといった顔ぶれがそれぞれ独自に電話を完成させていたといわれている。
それぞれまったく独自のプロセスながら同じ時期に似たような発明やアイデアが生まれることは歴史的にも決して珍しいことではなく、そうした現象はシンクロニシティ(共時性)と呼ばれたりもする。
はたして、このシンクロニシティは伝説の一角獣でも起きていたのだろうか。ヨーロッパの古典に登場し、文化史的にも重要な存在であるユニコーンを示唆する岩絵が、なんとアフリカ南部でも見つかっているのである。
古代ギリシアにさかのぼるという想像上の一角獣であるユニコーンについて、ローマの自然史家である大プリニウスは紀元1世紀に言及していたことが文献に残されている。また、ユニコーンは中世のキリスト教とケルトの両方の信仰に登場し、スコットランドの国獣でもある。
ヨーロッパが近代を迎えると動物学の面からユニコーンはリアリティを失い、神話上の架空の生き物としてマイナーな存在になった。しかし、アフリカ大陸の未だ見ぬ未開の荒野には1本の角を持った動物が実際に存在しているのではないかと考える者がいた。
1770年代にスウェーデンの博物学者、アンデシュ・スパルマン(1748~1820)はヨーロッパ人として初めてアフリカ南部でユニコーンを積極的に捜索したが、残念ながら何の手掛かりも得られなかった。
イギリスの政治家にして探検家で作家でもあったジョン・バロー卿(1764~1848)もまた、アフリカのユニコーンに興味を魅かれた人物であった。彼は南アフリカへの旅行中に出会った入植者や現地の人々からユニコーンについての聞き取り調査を行ったのである。
バロー卿が現地で聞いた噂の一つに、この地域の先住民であるサン人(ブッシュマン)が残した岩絵にユニコーンが描かれているという話があった。
絵が描かれているということは、やはりユニコーンは実在しているのだと考えたバロー卿は積極的に捜索を行ったが、アフリカの地でユニコーンを見つけることはできなかった。
しかし収穫はゼロではなかった。現在の東ケープ州の山中で、ユニコーンの岩絵(ロックアート)を見つけたのである。
バロー卿によれば、この岩絵から想像されるユニコーンは体高3メートルで、長さ70センチにもなる茶色い1本の角の根元は人間の腕ほどの太さで、先端は人間の指ほどの太さである。雄牛のようなひづめと尾を持ち、黒く短いたてがみがあり、馬のような体表をしており非常に獰猛、角で木を引き抜き枝を食べるということだ。
しかし、この岩絵の模写を見た少なくない人々は懐疑的であった。岩絵はサン人が描いた岩絵というよりは、むしろヨーロッパの版画に似ていたからだ。懐疑派はこのユニコーンの岩絵はおそらく南アフリカのオリックス(長く真っ直ぐな2本の角を持つレイヨウ)を真横から眺めたものか、またはサイからインスピレーションを得たものであると説明している。
探検後もバロー卿はしばらくの間、アフリカにユニコーンがいると信じていたようだが、残念ながらUMA(未確認生物)ユニコーンは現在も発見されていない。かつて存在していた絶滅種であるとの説を立証するのも、化石などが何もないのできわめて困難だろう。
南アフリカのウィットウォータースランド大学でロックアートを研究しているデイビット・ウィテルソン氏は、南アフリカのユニコーンの岩絵をどう考えればよいのか、論点を整理している。
まず、岩絵のユニコーンがサイやオリックスを描いたものである可能性はあまり高くないという。サイの場合、角は頭部ではなく鼻先にあり(角が2本あるサイもメインの角は鼻先)、ユニコーンの姿と一致させるには無理があるからだ。
また、オリックスを真横のアングルから見て2本の角が重なっているとしても、岩絵の角は垂直か前方に向かって伸びているの対し、実際のオリックスの角は後方に傾いていることが大きな相違点となる。そして、2本の角があるオリックスやイランド(レイヨウ)を描いた岩絵も、それはそれで別に存在しているという。
では、南アフリカでもユニコーンは神話や伝説上のキャラクターなのだろうか。古代ギリシアと同時代にアフリカ先住民の間でもユニコーンが神話の世界に登場していたとすれば、まさに文化的なシンクロニシティが起きていたことになる。
ウィテルソン氏は先住民の信仰に着目し、サン人によって語り継がれる物語の一つに、「水の子」または「雨の生き物」が1本の角を持っているという描写を見つけ出した。つまり、岩絵に描かれているのは彼らの伝説上の生物であり、それらがヨーロッパのユニコーンから影響を受けて生まれた可能性もじゅうぶんにあるという。
社交界の名士であり、ケープ植民地秘書官でもあったレディ・アン・バーナードは、1797年にスコットランドの政治家であり擁護者であるヘンリー・ダンダスに宛てた手紙の中で、ユニコーンが描かれた国王ジョージ3世の紋章を見た原住民の数人が大いに驚き、大金を出せばこの動物を入手できるかどうか尋ねてきた一件を記している。彼らにとって、一角獣は既知の存在であり、かつ神聖な存在であったというのだ。
こうしてヨーロッパのユニコーンと南アフリカの「雨の生き物」が出会い、植民地時代の南アフリカで外国の神話と地元の信仰が融合して“ハイブリッド”化したユニークなユニコーンが誕生したのかもしれない。この南アフリカのユニコーンの物語は、文化交流の歴史を研究するうえでも興味深いケースになるだろう。
【参考】
https://theconversation.com/unicorns-in-southern-africa-the-fascinating-story-behind-one-horned-creatures-in-rock-art-202395
https://www.cambridge.org/core/journals/cambridge-archaeological-journal/article/revisiting-the-south-african-unicorn-rock-art-natural-history-and-colonial-misunderstandings-of-indigenous-realities/5875B2016D8EB1C598C95B21D720F862
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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