「南極のゴジラ」との遭遇ーーその前日譚の”幼生体”の謎/妖怪補遺々々
かつて南極観測隊が、航海の最中に目撃したものとは…… ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」だ!
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無気味な姿形の正体不明の謎の生き物UMA。UMAと遭遇し、恐怖の体験をした人は多い。忘れようにも忘れられない、そんな恐怖体験の数々を紹介しよう。
あなたは南極ゴジラというUMAをご存じだろうか?
南極ゴジラは、南極海で1958年、日本の南極観測船宗谷の松本満次船長と乗組員たちが目撃したという未確認生物である。
白夜でまだ明るい午後7時のこと。船の前方300メートルほどのところに突然黒い物体が現れた。最初は前の船が落としていったドラム缶だと思ったが、確かめてみるとそれは生き物で、頭を船のほうに向け、こちらをじっと見ている。頭は牛のように長く、頭の横にははっきりと目、尖った耳があり、焦茶色の体毛までが確認できたという。
何かの水生哺乳類かと思ったが、頭の大きさは70〜80センチほどもあったため、全身の大きさを想像するとかなり大きい。体は水中にいたため全体の大きさは未確認だが、背中にはノコギリのような背ビレを確認した船員の話もあった。
残念ながら、船長と乗組員の目撃談だけで、写真や映像資料もないため当時はいろいろな憶測が飛んだ。
クジラやアザラシを見間違えたのではないか? 全員が疲労で幻覚を見ていたのではないか?などといわれたが、船長を含め乗組員は全員経験豊富であり、見間違いや、ましてや幻覚を見ることなどありえない。
どれも、これといった決め手がなく、その容姿から「南極ゴジラ」と呼ばれ、結局謎のUMAという扱いになってしまったのだ。
今から10年ほど前、Yさんはインターネットでこの話を知り、非常に興味を持ったという。もともとオカルトに傾倒していたこともあったが、父親を含め家族に船乗りがいたことも関係していたのかもしれない。Yさんは早速、家にいた元船乗りの父親に「こんな話があるんだけど……」と南極ゴジラの話を聞かせた。
すると父親は少しの間をおいて、「南極じゃないけど、俺も似たようなものを海で見たことはあるな」と話しはじめた。
Yさんの父親は、かつて蟹工船の乗組員であった。若いころは近海での漁業が盛んで、船に乗ればいくらでも魚が捕れたが、近年ではめっきり魚が少なくなり、仕方なく知り合いのいる蟹工船に替えたのだという。
それは遠洋に出て何度目かのことだった。その日は海がしけっており、朝からかなり船が大きく揺れていたという。
とはいえ、波が高いからといって仕事を休むわけにはいかない。叩きつけるような雨が降る中、Yさんの父親はカッパを着込むと甲板へと出ていった。
船には叩きつけるような波しぶきがぶつかり、揺れる船の上には何人もの同僚が網の巻き上げ作業にかかっていた。ひとりが網の巻き取り機を操作すると、沈めてあった網が船の上に巻き取られていく。それと同時に上がってくるズワイガニをYさんの父親は選別していた。
突然大きな波が船の甲板を襲うと、そばにいた仲間の何人かが波をかぶり船の上を滑っていった。
「危ない!」
思わず助けに行こうと思ったが、Yさんの父親にそんな余裕はなかった。自分も飛ばされてしまわないように船の縁に手をかけると必死に足を踏ん張った。
そのとき、荒れる海の波間からこちらを覗く黒っぽい影が見えた。何かこちらの様子をじっと見つめているようにも見える。
シルエット的にはイルカやシャチの類に見えたが、よく見ると牛のような頭をした見たことのない生き物だった。それが荒れた海の波間から悠々とこちらを窺っているのだ。
隣で同じものを見つけた同僚が「なんだありゃ!」と大声を上げた。次の瞬間、大きな波が船を襲うと、Yさんの父親は船の上に転がった。
立ち上がって再び波の合間を見たが、すでにその生き物はいなかったという。
一緒に乗っていた同僚も何人か同じ生き物を見たが、皆初めて見るものだと口をそろえていった。
「ゴジラっていわれてもわからないけど、俺の経験の中では、ありゃ海の生き物には見えなかったな……」とYさんの父親はぼそりと話したという。
海にはまだまだわれわれの知らない未知の生き物がいる。いつか南極ゴジラもわれわれの目の前に現れる日があるのかもしれない。
西浦和也
不思議&怪談蒐集家。実話怪談の調査・考察を各種メディアを通じて発信。心霊番組「北野誠のおまえら行くな。」や怪談トークライブ、自身のYouTubeなどで活動する。
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