現代タイ人の生活に生きる「ピー」の深い実在/髙田胤臣
タイ人たちはいつも心霊話をしている。日本人同様に怪談が大好きな国民性で、大人だって怪談が始まれば真顔でその話を受けとめる。 一方で、タイ人たちは心霊に対して日本人以上に恐怖心を抱く。タイの文化、タイ人
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取材=松原タニシ 構成=高野勝久
結局今回も山を登っている超人化計画。三原山を踏破し、あとは目的の役行者自作の行者像……と思ったのだが、想定外の事実が発覚。そして、さらに新たな超人伝説へとつながるいとぐちがみえてきた。
というわけで、さらに1時間かけて三原山火口付近まで登る前に、三原神社にお参りする。
こんな火口近くにある神社だが、三原山が噴火してもこの神社にだけはなぜか溶岩が当たらないのだそうだ。現在の社殿も、1986年の噴火を切り抜けてきたのだろう。これが三原山七不思議のひとつだ、と紹介されていたのだが、あとの6つがなんなのかは全然教えてくれない。
さて、火口をぐるっとまわるお鉢巡りのルートの途中、ふしぎなかたちの岩が目に飛び込んできた。あれ、なにかに似ているぞ……。
ゴジラだ! しかもゴジラの向こうに富士山おる! これは大発見ちゃうか?
と、思ったのだが、有名なビュースポットだった。やっぱり地元の人もそういってんねや。
そうしてゴジラ岩を過ぎたあたりでのこと。ふと空に目をやると、なんだか奇妙なものが。これは……
UFOやん!ムー的にいえば雲に擬態したむちゃくちゃでかいUFOやないか。
登山道から見える海や、「裏砂漠」といったビュースポットも絶景だ。波間にみえるのは伊豆七島のひとつ、利島だそうだ。
などといいつつ歩いているうちに、ようやく火口中央がみられるスポットに到着した。やっと見えたのだが、しかし見えるようでギリ見えへん……。思い切り手を伸ばして撮影してやっとこのくらい。
ここまできたらどうしても全容がみたいので行けるだけ一番高いところまでいってみようとなったのだが、しかし風が強すぎて立っているのもやっとの状態。強風が勝手にボタンを押していたのか、撮った覚えのないポートレートが大量に保存されるという不思議現象まで発生した。
安全のためか、火口からは17時までに撤収しなければならないらしく、夕日を眺めながらの下山となった。しかし下山中にさっきのUFO雲をみると、こんなことになっていた。
巨人の腕にも見紛う巨大な雲がするするとのびて、UFOをキャッチしているかのような……。もしかしたらこの雲は、役行者が出現させたものだったんじゃないだろうか。そのぐらいの奇跡をみせられたような、壮大な情景だった。
ということで今日はここまで。役行者窟の調査は明日として、その夜は島のスナックで情報収集につとめることとなったのだが、なんとここで、ママから衝撃的な情報を知らされることになる。
「役行者窟なんて、行ってる人いないわよ」
……え?
「そもそもあそこ、今は立ち入り禁止。行っちゃだめよ」
なんと、役行者が自ら彫ったという石像がある窟は、現在岩崩れのために立ち入ることができず、年に一度その前で祭礼が行われるだけだ、というのだ。
まさか、このままだとただの火山マニア旅になってしまう。
そんなわけで超人化計画どうしようかなーと考えながら宿への帰路についたのだが、その道すがらふいにこんなものが目にとまった。
これは「赤門」という史跡で、源為朝(みなもとのためとも)の館跡だとかかれている。
源為朝とは、平安末期の武将で、後白河天皇と崇徳上皇が敵味方になって争った保元の乱(ほうげんのらん)の折、崇徳上皇側についたために敗者となって伊豆に流罪になった人物だ。
為朝は身内からも恐れられるほどの剛勇でしられた武将で、あまりに素行が悪いために父によって九州に追放されるのだが、たちまち九州一帯の有力者を従えて自分の勢力圏にしてしまったという伝説的功績を残したほどの豪傑である。
そのために、大島に流罪にされたときには腕の腱を切ってから流されているのだが、その後リハビリに成功して完全復活、今度は大島どころか伊豆諸島全域を制圧してしまうのだ。最終的には追討軍が送られ自害に追い込まれることになるのだが、じつは密かに逃れて琉球諸島に渡り、そこで琉球王朝の祖となったとの伝説も有名だ。
そんな為朝を祀る神社がこの門のむこうにあるのだが、その境内にある、この小さな石に注目してほしい。
為朝は伊豆諸島を制圧する前、手始めに青ヶ島に住んでいた鬼たちをやっつけて家来とし、一緒に全島制覇に乗り出したといわれる。その最初に手下になった鬼を「鬼夜叉(おにやしゃ)」というのだが、その鬼夜叉の墓がこの石だというのだ。
鬼を使役する男。どこかで聞いたことのある話。
そう、鬼を使役するという意味では、役行者とおなじではないか。行者窟には行けなかったけど、行者とおなじ伝説を持つ超人が、ここにいたのである!
というわけで、役行者を調べにいったはずが、もうひとりの鬼を従える超人、源為朝にたどりついたというのが今回の超人化計画レポートとなります。
超人化の旅は、こうして次へ次へとつながっていくのだ。
松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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