「宇宙人の真実をドラマに盛り込め」米軍関係者が有名プロデューサーに指示! 極秘情報操作の手口とは?
90年代のSFドラマシリーズ『ダークスカイズ』の元プロデューサーが、海軍関係者から作品中に「エイリアンに関する事実」を盛り込むよう依頼を受けていたという事実が明らかになった。自らの体験談を語るのは、
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米国の内外にかかわらず世論を操作し、世界を自らの望む形に変えようと活動するCIA。いったいこれまで日本はどのように操られてきたのか――?
※ 前編:「口裂け女」はCIAの実験だった? 情報機関によるソーシャル・エンジニアリングの実態
※ 中編:CIAによる世論操作は新たな舞台へ! サブリミナルコントロール新時代を徹底解説
「最も恐ろしいのは、すべての動きが深い秘密へと向かっている事実だ。既存のメディアにチャンスはまったくない」
1982年に製作された『How CIA Disinformation Tactics Manipulate Public Opinion by Planting Stories in the Press』というドキュメンタリー番組に出てくるナレーションの言葉だ。番組タイトルを直訳すると「マスコミに偽情報を流すことにより、CIAのニセ情報戦略が世論をどう操作するか」というかなり強めな意味合いの文章になる。CIAが何らかの方法で世論操作をしていることが既成事実であるかのような響きが否めない。
番組のビデオがYouTubeにアップされたのは2022年10月。この原稿を書いている時点での再生回数は2万3千回で、興味深い書き込みも多い。
「今の時代は、さらに巧妙なやり方が実践されているはずだ。ドラマを使って多くの視聴者の心をつかむための方法論も確立されていると思う。ニュースにせよエンタテインメントにせよ、何の影響もない媒体は存在しないだろう」
「国家の上層部には、結果さえよければ手段は問わないという考え方の人間が多い。そういう人間たちの逆鱗に触れないよう、われわれ一般国民は慎ましく生き、目立った動きをしないことが賢明なのかもしれない」
「ちょっと待ってくれ。このビデオが82年に製作されたものと断言することはできないはずだ。今の技術でわざと古めかしい映像を造り、それをアップしているのかもしれない。誰がそんなことをするのかはあえて言わないが……」
アメリカ国内の主流派メディアに関して言うなら、おおむねCIAのグリップが効いた状態にあるのかもしれない。ならば、その影響力は日常生活レベルのさまざまな形で一般国民に対しても向けられていると考えたほうがいいだろう。さらに言うなら、影響が及ぶ範囲はアメリカ国内だけにとどまらない。
オバマ政権でCIA長官を務めたレオン・パネッタは、「国内世論の流れを変えるために」海外のメディアに働きかけた事実を示唆する発言をいくつか残している。もちろんすべてが明らかにされているわけではないが、ごく基本的な部分について言えば、特定の国あるいは地域においてメディアを買収して特定の方向性のメッセージを流し続けたり、メディアに対して影響力を持つ人々に協力を求めたりといったことが行われていたようだ。
一説によれば、CIAは第二次世界大戦終結当時からこうした情報工作を行い、他国の選挙結果にも少なからぬ影響を与えていた。冷戦時代に多くの工作に関わったリチャード・ビッセルは「マスメディアに影響を与え、管理し、望み通りの選挙結果を実現する」ことについての文章を残している。
チリの総選挙に関する報告書では、CIAが推す候補に“賢明で誠実、意識が高い政治家”というイメージを創出するために左翼系の対立候補に“計算高い策略家”というレッテルを貼り、それを徹底的に強調するメディア工作を行った。
1980年代の一時期には、1日に80本ものスポットCMが流されたことがあった。左翼勢力が強くなれば、やがて政権まで握ってしまうかもしれず、アメリカの国策としては決して望まれない状態だ。早いうちから手を打って、可能性の芽さえ出ないようにしておいたのだろう。
もちろん、思い通りの影響を与えるための効果的なツールを確立することも工作活動の目的の一つだった。マスコミ関係者に現金を渡してニュースを流してもらったり、エージェントが自ら偽情報を流すこともあるが、こうした方法は簡単に見破られてしまうことが多い。そこで、より巧妙な方法が必要となる。
よく使われるのは、偽の情報に本物の情報を盛り込む手法だ。大使館などの公式チャンネルを通して行われるので、情報全体の信憑性は高まる。その一方で、発表される情報を否定する役割の人々も準備しておく。彼らに対しては、否定するのに十分な論拠となる要素を含んだ情報を流す。対決機軸を通すと、単に偽情報だけを流すよりもインパクトが高まるのだ。
短期間で数多くの対象に最も効果的に働きかけるには、これまでも何回か触れている通り、娯楽メディアを活用する。これまではアメリカで言うなら三大ネットワークとハリウッドが主なステージだったが、ここ数年は自社ブランド映画やドラマを作り始めた動画配信サービスが注目を集めている。莫大な製作費にCIAの資金が流入していることを指摘する声も日に日に大きくなっている。それに加え、テレビ離れが顕著化している若年層に対しては動画サイトやSNSを中心に展開されるオペレーションが効果的だ。CIAがこういう方向性で活動しているため、その思惑を暴こうという勢力も同じリングの上で戦いを挑むことになる。
そんな一人、かつて『The Intercept』というYouTubeチャンネルのホストを務めていたジャーナリスト、グレン・グリーンウォルドは、エドワード・スノーデンから入手した情報に基づいて行った「英米政府による世界監視システムの追究」で知られている。彼は、ブラジルに渡って新しいチャンネルを立ち上げ、いわゆるロシアンゲートに対する徹底調査でさらに知名度を上げた。
2016年の大統領選挙の直前、CIA上層部は何とかしてヒラリー・クリントン候補に勝たせたいと考えていたようだ。『ニューヨーク・タイムズ』紙や『ワシントン・ポスト』紙でも、歴代CIA長官がドナルド・トランプ候補を「クレムリンの手先」とこき下ろすコメントが多く見られた。
トランプ候補は、なぜここまで嫌われてしまったのか。当時のCIAは、対外政策の軸足をシリアからウクライナに移しつつあった。ウクライナに武力提供し、クリミア半島を併合したロシアの脅威に対抗するためだ。しかしトランプ候補は、こうした流れに公然と反論を唱えた。
大統領就任前から始まったCIA対トランプの戦いが長引く中でロシアゲートは陰謀論の中核となり、そこからディープステートやQアノンが生まれた。その結果、最終的に2021年1月6日の連邦議会襲撃事件にまで発展したという意見も根強い。
トランプ政権とロシアゲートの密接な関係を印象づけながら、CIAは高貴な精神に基づく正義の情報機関であるというアピールが行われたことも指摘されている。過去のダークでダーティーなイメージを一気に払拭しようと試みたのかもしれない。
こういう手法は、もちろん米国内だけに限られるものではない。傀儡政権とまでは言わないまでも、一定の影響力を保っておきたい国の政府に対して働きかけたり、政権維持のために協力するなどの活動は、スパイドラマ『ホームランド』で描かれている通りなのかもしれない。同様の思惑は、時として同盟国に向けられることもある。もちろん日本とも無縁な話ではないのだ。
本稿の前編冒頭で触れた「口裂け女」の件に関しては、日本の社会と文化について実践的な考察が行われたと考えるのが妥当かもしれない。CIAによる日本への働きかけに関する考察は、かなり多く発表されている。『CIA MEDDLING IN JAPANESE POLITICS』(日本政治に介入するCIA)という記事では、第二次世界大戦終結直後からの日本の社会的・政治的枠組みの再構築やその後の運用に関するメカニズムが述べられている。地理的に旧ソ連と中国に近い日本が共産圏の影響を受けるような状態を作るわけにはいかない。第一の理由と目的はそこにあった。当時は、マルクス主義の脅威が今では考えられないほどリアルだったのだろう。
ジャパン・ポリシー・リサーチ・インスティテュートという非営利団体が発行した1995年度版調査報告書には『M資金に関するメモランダム』という文書が含まれている。GHQが占領下の日本で接収した財産から構成されるM資金という極秘資金が、誰にも知られないまま今も運用されているという都市伝説的な話についての考察だ。
『シカゴ・トリビューン』紙の1994年10月9日号には、CIAの資金が政治献金という形で日本に流れたメカニズムについて触れた記事が掲載されている。ただし、この記事に関して言えば、カウンターインテリジェンス的なニュアンスを感じている人たちも少なくないようだ。長年くすぶる疑念をあえて公にして意識を高め、記事内ですべてを否定する要素を明らかにする。媒体を変えながらこうした作業を定期的に繰り返し、じっくり刷り込みをしていくという長期プロジェクトもあるのだろう。
動画配信サービスにSNS、そして都市伝説的。日本社会のさまざまな分野に及ぶCIAのグリップは、誰も知らないところで日々強められているのかもしれない。最後に、冒頭で紹介した文章にもう一度触れておきたい。
「最も恐ろしいのは、すべての動きが深い秘密へと向かっている事実だ」
今回、3本シリーズの記事を書かせていただく過程でさまざまな事実がつながっていることを確信した筆者の焦りは、さらに深まっている。
~おわり~
※ 前編:「口裂け女」はCIAの実験だった? 情報機関によるソーシャル・エンジニアリングの実態
※ 中編:CIAによる世論操作は新たな舞台へ! サブリミナルコントロール新時代を徹底解説
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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