「天使への進化」ムー2023年8月号のカバーアート/zalartworks
「ムー」2023年8月号カバーアート解説
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日本史上屈指の超人、役行者の足跡を追って伊豆大島にやってきたタニシ。さっそく「役行者が自分で彫った行者像がある」との有力な情報をゲットし、さらに調査を進める。目的地に着いてから大ネタを引き当てるのがタニシスタイルだ!
役行者が自ら彫った行者像。これはマストで見にいくとして、調べてみると大島には他にもミステリアスな伝説が数多く残されていた。
たとえば「ひいみ様」の伝説。日忌様と書くが、むかし悪代官の圧政に耐えかねて代官を殺した若者たちが、小舟で海に逃れたものの、ほかの島民たちから見殺しにされて上陸を許されず溺死してしまったという話で、いまでも毎年正月24日の夜にはその若者たちの霊をなぐさめ餅をそなえるというならわしがある。
しかし、その夜は島に霊があがってくる日でもあるため、祭りに関わる神職など限られた人間以外の島民は、屋外に出歩くのも、覗き見するのも厳しく禁じられている。それも大昔の話ではなく、今現在もその禁忌が守られ続けているのだ。
または、「七人様」という伝説。その昔、沖合で溺死した七人を埋葬供養したという話が残る2基の石碑があるのだが、これが大島に流された武田信玄の孫、武田信道の伝説にもむすびついているのだとか。
とりあえずは腹ごしらえに、食堂で大島名物のあしたばの天ぷらと漬け丼をいただく。この食堂で聞き込みをしたところ、「行者の像はわからないけど、近くに七人様のお墓がありますよ」と教えてもらった。なら行者像の前に、そっちも見に行こう。
「詳しいことはそこのタバコ屋さんで聞いてみて」とのことだったので、案内されるまま行ってみると、懐かしい雰囲気のタバコ屋がありここに90歳近い長老的おばちゃんがいらっしゃったのだが、お話をきくとなんと武田信玄の老中の末裔なのだとか。しかも代々ここに住んでいたわけではなく、たまたま大島で暮らすことになったのだという。すごい偶然だ。
ということで、おばあちゃんに道順を教えてもらい、信玄の孫武田信道の墓を目指す。途中珍しい造りの建物があったので見学してみようかと向かっていくと、同行スタッフから「タニシさんあぶないっ!」との叫び声が。
みると、なぜか鉄製の大きな台車がタニシめがけて傾斜を転がり落ちてきていたのだ。
侵入者を自動追尾するトラップなのか……? 前回の旅のカモシカに続き、大島でもまた衝突事故に巻き込まれかけてしまった。
トラップをかいくぐってしばらく歩くと、「七人様」の墓に到着。大島に流された武田信玄の孫・武田信道とその従者たちのうち、島で没した七人をまつった供養塔なのだとか。
武田信道は江戸時代の初め頃、ある事件に連座して妻子とともに島流しになり、この島で亡くなっている。その後信道の子は罪を許されて本土に戻っているのだが、ここで亡くなった信道はじめ七人は、村を開発した祖先として供養されてきたのだそうだ。これが「七人様」なのだが、この伝承がさきに紹介した溺死した七人の話と混同されている可能性があるのだとか。
さて、そんなこんなで、大島にきたからには三原山をみないわけにはいかない。
三原山にむかって道を登っていくと、大島からくっきりと富士山がみえることがわかる。こうして実際に来て見てみると、なるほど「空を飛んで大島から富士山に渡っていた」という役行者の伝説も納得できる気がしてくる。
三原山は現在噴火も休止しているため見学することができるが、とはいえ車で火口まで行くことはできない。駐車場はだいぶ離れたふもとにしかなく、しかも警察官が常駐している。ここで車をとめて、その先は徒歩ルートのみ。火口付近までは歩いて1時間というけっこう過酷なコースをいくことになるのだ。
道は整備されているものの、道路脇にはところどころに噴火があったとき退避するための壕が設けられている。実際まわりをみるとあちこちに飛んできた溶岩が落ちている。生々しい。
しばらく進んでいくと、「パホイホイ溶岩」と書かれた看板と矢印があった。「パホイホイ」ってなんだろう?ということで、せっかくだから行ってみるかと矢印の方向進んでいくと、突然足に激痛が!
何?と足元をみると、こんな草が生えている。これが、全体にむちゃくちゃトゲが生えているのだ。しかもそれが、矢印方向にむちゃくちゃ茂っている。ここ歩いてかなならんの……? 仕方がないからどうにか矢印の指し示すとおりに進み、ゴールらしきところにたどりついたのだが……それで「パホイホイ」どれなん?
よくわからないまま、結局ただ痛い草に刺さりにいくだけの寄り道となってしまった。三原山登山を予定してる読者のみなさん、パホイホイの看板には気をつけてください。
そしてやっとこさ火口に到着。黒く見えている部分が溶岩の流れたところだ。しかし、到着したとはいっても火口内部はよくみえない。ちゃんと火口をながめられるスポットにいくには、ここからさらに50分歩かなくてはならないのだ。
三原山、しんど……。
松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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