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小泉八雲の代表作のひとつ「耳なし芳一」。それは怪談という枠をこえた、鎮魂のための物語だった!
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福井栄一 著
尾張を中心に、東海道の古典怪談を辿りなおす一冊
この標題から、かつて『東海道怪異記』という本が実在し、本書はその全文を現代訳したものか、と思われるかもしれないが、そうではない。江戸時代に書き継がれた東海道沿いの古典怪談を辿りなおす一冊なのだ。
中心をなすのは「東海道最大の怪異都市・尾張に伝わる数々の異聞奇譚」で、主要な原典は江戸後期の奇書『尾張霊異記』。著者によれば、本書の読者諸賢は「この異様な書物の現代語デビューの生き証人という訳です」。
他にも『虚実雑談集』『古今弁惑実物語』などが原典として採用され、江戸の日本橋を起点に、東海道を京へと上る旅路に沿って、百篇近い怪談が語られる趣向となっている。
出発地である日本橋で髑髏を釣り上げた話に始まり、尾張では山犬の群れに襲われ、京の三条大橋では、狐に化かされた男が正気を喪う。まさに、江戸時代の東海道を徒歩で旅する気分が存分に味わえる。
江戸時代の日本の怪異の集成本であるにもかかわらず、表紙を飾るのはオディロン・ルドン。お洒落だ。
著者の福井栄一氏は、京都ノートルダム大学で非常勤講師を務める上方文化評論家。前著『全訳 大和怪異記』は宝永6年刊行、著者未詳の同題の怪談集の初の現代語訳であった。これらはジャパニーズ・ホラーの原点ともいえる貴重な作品でありながら、古語である所為で敬遠されてきたという経緯がある。今後とも、同じ著者による「怪異記」シリーズとして、続々刊行をお願いしたい。

(月刊ムー 2026年11月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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