インド騒然「裸に見える眼鏡」詐欺の話など/南山宏のちょっと不思議な話

文=南山宏 絵=下谷二助

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    「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2026年10月号、第510回目の内容です。

    偽チェンソーマン

     英国サマセット州ワールの住民たちはソーシャルメディアを通じて、A370号線沿いのとある地下道に出没する道化師姿の不審者に関し、厳重な注意を喚起した。

     この怪しい道化師はいつも大きなチェンソーを振りかざして、通行人に襲いかかるが、あいにくそのチェンソーは仮装パーティなどで使う〝チェンソー型風船〟なので怪我人はなく、警察に「被害届はまったく出ていない」そうだ。

    X線眼鏡

    「着ている衣服の下が丸見え!」 という触れ込みの怪しげな眼鏡を売りつけようとしたかどで、インドはタミルナードゥ州チェンナイ市の詐欺師3人が逮捕された。

     彼らは裕福そうな実業家たちをターゲットにして、まずこの〝X線眼鏡〟がどう働くか、仕組みを説明する動画を見せてから、それを実演できる〝秘密の場所〟まで連れていった。

     そこではあらかじめ薄暗い部屋に用意しておいたヌードモデルたちをX線眼鏡で見せ、顧客を3人まで信用させて、まんまとX線眼鏡を購入させたのだ!

     この詐欺師3人組はそれだけでなく、〝お米引き寄せ容器〟なる珍発明品まで考案して、手広く売り捌こうとしていた。

     彼らの主張するところでは、この容器は〝稲妻に射たれた〟銅とイリジウム製で、おかげで持ち主に繁栄をもたらす特別の超能力がそなわっているのだとか。

     ご用心。詐欺師の繰りだすあの手この手のやり口には、限界とか限度とかはまったくないようだ。

    音声クローン

     米国アリゾナ州スコッツデールのジェニファー・デスティファノさんが、知らない番号の電話に応答に出ると、15歳の娘ブリアナのすすり泣く声が聞こえた。

    「ママ、あたしよ……」

     その声を聞いただけでもう、ジェニファーは(娘だわ!)とすっかり信じきってしまった。

     その日、娘のブリアナはスキー旅行に出かけていたので、怪我でもしたか、何かほかの問題を抱え込んでしまったのかと思った。

     次の瞬間、電話の向こうでこう怒鳴る男の声がした。

    「床にうつ伏せになって、両手を頭の後ろに当てろ!」

     続いてブリアナの叫ぶ声――

    「ママ、悪い人たちに捕まってるの! 助けて、どうか助けて!」

     男が電話を奪い取って脅した。

    「いいか、よく聞けよ。お前の娘はこっちの手の中だ。お前がだれかに話したりサツを呼んだりなどしたら、娘をむりやりヤク漬けにして弄んでやる。メキシコあたりに放りだして、二度と会えないようにしてやるからな!」

     母親のジェニファーはその時、別の娘のダンスレッスンに付き添っていたが、電話を短時間ミュートにすると、スマホでママ友たちに事情を説明して助けを求めた。

     母親はできるだけ冷静に〝誘拐犯〟と身代金交渉を続け、相手を電話口に釘づけにする一方で、ママ友たちは警察に通報した。

     だが、ママ友のひとりが〝生成AI(人工知能)なら音声クローンを自在に作成可能〟なのを思い出し、ジェニファーに知らせた。

     そこで彼女は身代金の支払いを承諾するふりをして、いったん電話を切り、念のため娘をスマホで呼びだしたところ、娘は何も知らずに屈託がなく元気一杯だった。

    「それがわかるや、私はそれ以上何もいわず急いで電話を切ると、床にへたへたと座り込んで、安堵の涙に暮れました!」

     コンピューターセキュリティ専門のマカフィー社によると、だれかの声の音声クローン作成は声が3秒分あれば可能だそうで、100人中70人までが、クローンの声と本物の声との区別がつかないという。

    不安全飛行

    「飛行機にコインを投げつける行為は、出発を遅らせ、また航空の安全を著しく妨害しますので、絶対におやめください!」

     アジア最大級の規模を誇る中国南方航空は、中国最大級のSNSメディア「微博」にそんな異例のお願いをするショートビデオを掲載させられるはめになった。

     元はといえば、とある年配の乗客が〝空の旅の安全を願って〟同社の旅客機エアバスA350のジェットエンジンに、3枚から5枚のコインを投げ入れた、という笑えぬ珍事件が原因だ。

     おかげで同機は、整備士たちがエンジンの損傷の度合いを調査する間、出発が4時間近く遅くなる破目になった。

    手榴弾奇譚Ⅰ

     ポーランドの国家検察官グループはこのほど、

    「国家警察本部において強烈なエネルギー放出があった結果、警察庁長官ジャルスラウ・シムジック氏が緊急入院した、との件については現在鋭意調査中である」

     という公式声明を発表した。

     だが、同国の新聞各紙はもっとあけすけに、こう書きたてた。

    「シムジック氏は、以前ウクライナを訪問した際にお土産に貰った擲弾発射機(手榴弾を遠くに飛ばす装置)をいじっていて、ついうっかり実弾発射してしまった」

    手榴弾奇譚Ⅱ

     ちょっと耳慣れない軍事用語だが、戦闘工兵の一種に地雷除去や陣地構築を主任務とするサッパーと呼ばれる専門兵がいる。

     ロシアと戦うウクライナの首都キーウで、爆発物処理訓練を受けた一団の医師たちが、負傷サッパーの胸に残留する不発手榴弾の摘出手術にみごと成功した。

     不発弾は負傷兵の心臓のすぐ下あたりに食い込んでいて、不発とはいえまだ〝生きている〟状態だったから、兵士当人だけでなく手術を担当した医師たちも、終始命の危険に曝されていたわけだ。

     だが、彼らは負傷兵の胸を開いて不発手榴弾を露出させると、まず雷管を衝撃爆発させる撃針を外し、次に爆弾全体を起爆させる信管を外して手榴弾の完全な無能化を達成したのだ!

     ウクライナ内務省のアントン・ゲラシュチェンコ長官顧問は、感慨深げに当時をこう振り返る。

    「私が思うに、この一件は世界の医学界の教科書に、永遠に記録されると思うよ!」

    南山宏

    作家、翻訳家。怪奇現象研究家。「ムー」にて連載「ちょっと不思議な話」「南山宏の綺想科学論」を連載。

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