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保江邦夫 高野誠鮮 著
規格外のふたりの著者が、多彩な話題を縦横無尽に語り尽くす痛快な対談集
著者のひとりである保江邦夫氏は本欄の常連で、日本を代表する理論物理学者であり、湯川秀樹博士の衣鉢を継ぐ「素領域理論」の専門家。
一方で「キリスト活人術」と呼ばれる独自の霊的修行法を極め、伯家神道の奥義「祝之神事」の伝承者でもあるなど、スピリチュアル方面でも赫々たる活躍を続けている。
もうひとりの著者・高野誠鮮氏は日蓮宗の僧侶にして放送作家、そして「スーパー公務員」という、ちょっと紹介するだけでも至難な人物。「神通智力」を備え、「仏教経典の秘奥に迫る知識と理解」は、そのへんの仏教学者のレベルを遙かに超えているという。
本書は、そんな規格外のふたりがUFOと異星人、陰謀論から地球環境、日蓮聖人から宇宙テクノロジーまで、多彩な話題を縦横無尽に語り尽くす痛快な対談集。
ロズウェルのUFO墜落現場を見学に行った保江氏に、当の異星人の霊が取り憑いたのでそのまま持ち帰ったとか、地球は元来、異星人の流刑地だったとか、そう語る保江氏自身、アンドロメダ星雲の出身で、その後シリウス経由で地球へやってきた「宇宙艦隊の司令官」だったとか、ともかくブッ飛んだ話がばんばん飛び出すから、思わず呆気にとられる。
一方の高野氏によれば、日蓮宗が勧請する菩薩の「迹化他方来」とは他の惑星から来たという意味であり、日蓮の御遺文にも「月の如き鞠のような光物」など、「やたら宇宙船が出」てくる。さらに氏は「月面最後の男」サーナン船長から「ロケットの父」オーベルト博士、果てはマザー・テレサまで、世界的な偉人たちと交流し、世界の知られざる裏情報を直接入手しているという。
そんな両氏が熱く語るナマの話に比べれば、アメリカ空軍士官学校の教科書に「異星人は5万年前から地球を訪れている」と明記されているとか、日本に持ち込まれた米軍の核兵器の上空にUFOが滞空して監視しているとか、遺伝子組み換え食品の最大手であるM社の社員食堂には遺伝子組み換えのものはいっさい出されていない、とかいうような話はむしろ些末なことに思えてしまう。
著者ふたりのファンはいわずもがな、常識に凝り固まった頭に喝を入れたい人、日本と世界の現状を憂える人は必読の快著である。
瀧音能之 水谷千秋 監修
あっと驚く最新の歴史情報をコンパクトに紹介
歴史は日々書き換えられている。従来は1192年とされていた鎌倉開幕は、いつの間にか1185年になっているし、最近では江戸時代には「鎖国」がなかったとか、ひと昔前の常識はもはや通用しない。
中世や近代ですらそれである。ましてや、本書のテーマとなっている古代となると、たったひとつの出土品、あるいは日進月歩の新たな研究手法の導入によって、これまでの定説が一夜にして180度覆る、ということも珍しいことではない。
本書は日本人のルーツに始まり、石器時代から縄文、弥生、古墳、飛鳥を経て奈良・平安時代まで、ここ20年ほどの間に明らかとなった、なかなか知ることのできない歴史的事実の数々を、50項目以上も取り上げ、詳細かつコンパクトに紹介するとても便利な一冊である。
縄文時代にアスファルトの精製工房があったとか、「魏志倭人伝」の記述はまったく当てにならないとか、淡路島は古代における一大工業地域だったとか、厩戸王子(聖徳太子)の主要な事績は、冠位十二階や十七条憲法ではなくむしろ外交にあったとか、平安貴族の労働環境は実はブラックだったとか、武士の起源は芸能人だったとか、あっと驚く最新の歴史情報が目白押し。
装本も小型軽量、気軽に持ち歩いて、いつでもどこでも知識のアップデートを図ることができる。現代人たる者の当然のたしなみとして、常に手許に備えておきたい。
成瀬雅春 著
だれにでも実践可能な42段階のクンダリニー覚醒法
クンダリニーとは、人体内にある根元的な生命エネルギーのこと。これを覚醒させると、神秘体験や解脱、能力の増強などが獲得できるとされているが、あまりにも強力なエネルギーであるがゆえに、そのコントロールは至難の業。現在のインドのヨーガ道場でも、誤った危険な修行法が横行しているらしい。
そこで著者は、ヨーガ経典のサンスクリット語原典に基づき、だれにでも実践可能で安全な、42段階のクンダリニー覚醒法を独自に開発した。 著者・成瀬雅春氏は「ヨーギーラージ(ヨーガ行者の王)」の称号を持つ、日本のヨーガ界の大御所。1メートルを超える空中浮揚をしたり、空間を縮めたり、果ては瞑想によって宇宙の果てを9回も超えてきたりと、もはや意味不明なほどの超人だ。
そんな成瀬氏が、初めてクンダリニーを覚醒させたのは、1980年のこと。だが、氏のヨーガの究極目的はあくまでも「解脱」にあり、クンダリニー覚醒はそのための通過点のひとつに過ぎなかったのだ。
とはいえ、われわれ一般人にとっては、クンダリニー覚醒だけでも遠大な目標である。何しろ氏の修行法は、レベル1から42まであるのだ。当然、レベルが上がるほど修行はハードになるが、心配は無用。何も律儀にレベル42まで成就する必要はない。この技法を「少しでも体得する」だけで「あらゆる面での能力が高くなる」というのだ。これはやってみない手はない。
時雨 著
植物で邪気を「浄化」するテクニックを紹介
木偏に神と書いて「榊さかき」。その名の通り榊は植物の中でも、特に神々との繋がりが深いものとされ、神道では神木とされたり、玉串として用いられたりしてきた。本書はこの榊を中心に、さまざまな植物を用いて邪気を「浄化」するテクニックを集大成した、読みやすい指導書である。
著者のいう「浄化」とは、「自分自身はもちろん、空間、物についた目に見えない霊的な汚れを綺麗にすること」。霊的な汚れは、知らず知らずのうちに蓄積され、心身に悪影響を及ぼすので、定期的な浄化が必要となる。
著者の時雨氏は、ウェブデザイナー、占い師、そしてYouTuberと、多彩な活動を展開する人物。YouTubeの「あらかし時雨」は、植物による気の浄化法について専門的に発信する、日本唯一のチャンネルである。幼少時より霊感体質で、それゆえにさまざまな霊障に悩まされたこともあったが、とある山伏との出会いを経て、植物による気の浄化法に開眼し、現在に至るという。
それにしても驚いたのが、冒頭に置かれた担当編集者氏の序文。何と彼は、ある意味で人生のどん底状態にあったときに著者と出会い、運命が逆転したというのだ。今まで多くの本を読んできた評者であるが、冒頭で著者ならぬ担当編集者が、当の本の効能を保証するという構成にはちょっと憶えがない。これほどまでに編集者に心酔され、愛されている本。ただものではない。
不二龍彦 梨岡京美 書
日本全国の寺社霊跡を巡拝し霊査した一冊
当代屈指の霊視者・梨岡京美氏と、斯界の重鎮・不二龍彦氏のコンビによる「霊視の人」シリーズ、待望の第2弾。
前回の「仏事編」に続く「神事編」というわけだが、今回は少々趣向が異なっている。ふたりの著者に版元の社長を加えた3人が、天狗や天照大神といった神霊の霊示に導かれるまま、日本全国の寺社霊跡を巡拝し霊査するという内容で、各地で梨本氏が受け取った神霊からのメッセージを不二氏が慎重に検証していくという、並々ならぬ労作。
第1部では梨岡氏が、巡拝での具体的なエピソードを交えつつ、神事の世界の真実を語る。続く第2部では、不二氏がその該博な史的・霊的知識を存分に駆使して神示を審神者し、確証された情報に基づいて霊能と霊術の世界を解き明かしていく。
著者らの真摯な姿勢に触れれば、昨今流行りの、レジャー感覚のパワースポット巡りや、現世利益のみを追求する神社参拝が、いかに軽佻浮薄で無意味なものであるかを、まざまざと痛感させられる。とくに、観光スポット的な神社の多くには、もはや神さまはいないという指摘には胸が痛んだ。まさしく心を込めて再読、三読すべき名著である。
3人の旅は今なお続いており、その様子は雑誌『岩戸開き』(ナチュラルスピリット)に連載中の「霊査の古代史」に報告されている。本書を読んで感銘を受けた方は、ぜひ目を通していただきたい。
エドワード・マンデル・ハウス 著
小説の体裁で発表した「世界支配のプログラム」
1920年代のアメリカ合衆国で、南北ならぬ「東西戦争」とも称すべき内戦が勃発した。腐敗した金権政治の牙城である東部エスタブリッシュメントに対し、フィリップ・ドルー将軍率いる西部諸州が戦いを挑んだのだ。この戦争に勝利し、「統治者」という名の独裁者となったドルーは、その強権をもって諸改革を断行、理想の国家を創り上げていく。
これが1912年に世に出た予言小説『統治者フィリップ・ドルー』の筋立てである。一見他愛ないヒーロー物の素人小説のようだが、本書の監訳者である林千勝氏によれば、「20世紀最も影響力ある政治書」であるという。
原著者エドワード・マンデル・ハウスは、林氏によれば「ロスチャイルド家の代理人」である。第28代大統領ウッドロウ・ウィルソンを影から操り、「国際金融資本家らが展望している世界を政治的・経済的・文化的に牛耳る一元的な支配体制=新世界秩序」の樹立のために暗躍した。そして本書は、ハウスが小説の体裁で発表した、世界支配のプログラムだというのだ。
林千勝氏は歴史家で、長年にわたり近現代史の研究に取り組み、『近衛文麿 野望と挫折』『日米開戦 陸軍の勝算』などの著書がある。
本書は、いくつもの読み方ができる『統治者フィリップ・ドルー』の全訳に、林氏による詳細な解説を付し、一見ただの痛快な小説の裏に隠された、真の意味を明らかにするもの。文字通り現代の奇書である。
栗田英彦 編著
出版社・人文書院の前身は「日本心霊学会」だった
人文書院。その名の通り日本を代表する人文系の学術出版社であり、サルトルやボーヴォワール、アンドレ・ブルトン、ボードレールら独仏の詩人や哲学者、またフロイトやユングらの心理学者の著作を幅広く日本に紹介してきた。
東京中心の出版業界にあって、京都を基盤とする数少ない出版社でもあり、当然ながら京都大学を始めとする関西の学界や文士との繋がりも深く広い。また、とくにエリファス・レヴィの一連の魔術書やマンリー・P・ホールの象徴哲学体系など、優れた文献の邦訳出版により、オカルト者からの信頼も厚い。
だが、そんな人文書院の前身が「日本心霊学会」という霊術団体であったという事実は、あまり知られていない。というか、何を隠そう評者自身も、今までまったく知らなかった。
同会は、当時の霊術団体としては日本有数であり、一般社会や学界までをも巻き込んで大いに影響力をふるったが、長らくの間、資料の散逸のために、その活動の全貌を捉えるのは困難であった。ところが2013年、同会の機関誌である『日本心霊』を始めとする膨大な資料が発見され、ようやく同会に関する精緻な研究が可能となったのである。
本書は、霊術を根底として「日本近代の宗教と学知、出版を総合的に捉え直す」試み。人文書院創立百周年記念事業となる、共同研究の堂々たる成果である。襟を正し、心して挑みたい。
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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