猫と人間の歴史と精神文化「猫はスピリチュアル」/ムー民のためのブック

文=星野太朗

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    猫はスピリチュアル

    ジョン・A・ラッシュ 著

    「スピリチュアル」という観点から猫を語る

     家畜の中でも、猫は別格である。他の家畜とは違い、一見、何の役にも立たないにもかかわらず、人は甲斐甲斐しくその世話を焼き、時には崇め奉る。だれとはいわないが、愛猫家の中には自ら飼い猫の「下僕」を名乗る者までいると聞く。ことほどさように、猫は人間にとって特別な存在である。

     本書は、何百万年にもおよぶ人間と猫の共生の歴史から説き起こし、猫の特殊能力や猫と信仰の関係、猫をスピリチュアルなものと見なした古代の文化といった興味深い話題について、詳細に解説を加えた良書である。さらには小説や映画、アニメなどに登場する猫の紹介もあり、最終章では猫と宇宙論の関係が説かれるなど、盛りだくさんの内容である。

     著者のジョン・A・ラッシュ氏は人類学者で、専門は自然人類学と象徴人類学。当然ながら世界各地でフィールドワークを行っており、その成果は本書においても、随所に花開いている。

     現在は空前の猫ブームとやらで、猫に関する出版物も多いが、「スピリチュアル」という観点から猫を語るのは、本書が唯一無二であろう。スピリチュアル愛好家の猫好きには最高の一冊である。
     いずれにせよ、猫のミステリアスでスピリチュアルな側面がここまで開陳されれば、猫飼いでなくとも、ちょっと猫に触れたくなる。もふもふ、してみたくなる。ちょっと猫カフェ、行ってこようかにゃ。

    徳間書店1870円(税込)

    (月刊ムー 2025年4月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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