高度化するAIは「ゴースト」になる!? エジソンが求めた霊界と電脳世界が一致する近未来とは
急成長するAIの正体は、電脳空間に生きる、意志ある「ゴースト」である! 急成長する人工知能がもたらす新世界を予見する。
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文=大槻ケンヂ イラスト=チビル松村
webムーの連載コラムが本誌に登場! 医者から「オカルトという病」を宣告され、無事に社会復帰した男・大槻ケンヂの奇妙な日常を語ります。
オカルトと関係ない話をまず書く。
その昔、井上陽水さんに高級なバーに連れていっていただいたことがあった。居合わせた客がすべて超有名人ばかりで、タレント、女優、スポーツ選手などがズラリ。身の置き所に困ったものである。セレブだらけで店は賑わっていた。スッカリ気押されていたそのとき、店の扉がバーンと開いて、夜なのにサングラスをかけた白いスーツの男が両手に花束を抱えて入ってきた。彼を見た瞬間店内の客が一瞬シンとしたことを覚えている。
野坂昭如だった。野坂先生は沈黙した客たちを気にするでもなく店のママに「おっ」といって花束を渡し、かなり飲んでおられたのだろう、千鳥足で店内へ歩みを進めると僕の横にいた井上陽水さんに「お、君が井上陽水かっ」声をかけた。「陽水、君は……」先生が何かいおうとした。
僕は、どんなスゴい言葉が直後に続くのだろうとドキドキした。「火垂るの墓」などの名作で知られたあの文豪・野坂が、あの音楽の神・陽水をいい表すのだ。いったいどんな鋭く文学的な言葉が発せられるのだろうと緊迫さえした。しかし、野坂は、こういったのだ。
「陽水、君……おっきいな〜」
確かに、陽水さんは大柄なのである。180センチ近くあるだろうか。僕も「おっきいな〜陽水さん」と思う。思うがしかし、まがりないにも言葉を操る作家という職業の、その頂点に君臨する者の着目点が、久しぶりに会った親戚のおじさんみたいなそれとは「そこかよ!?」と僕はそのときとてもズッコケたんだが、後になって「いや待てよ」と。
作家としていかようにも表現可能なところをあえて、自分の見たものを疑うことなく他人の評を気にすることもなく口にするという、考えるならそこには作家としてのかっこたる自信と誇りがあるからこそのそのまんま発言「おっきいな〜」だったのではないのか。だとするなら、虚栄の一切を取り払ったものいいをする野坂昭如こそは作家として本物。信じるに値する文筆能力者なのだと思い直し、僕は、野坂作品をその後読むようになったのである。
信じるに値する……とはちょっと上から目線なところがあるかもしれないが、先日「あ、この方は信じるに値するのかもしれない」という霊能力者的人物に会った。
本業は僕と同業者、ミュージシャンである。音楽の現場で「こんな話を聞いてくれるのは大槻さんぐらいだから」といってさまざまな方が僕に声をかけてくれることがあるのは前号にも書いた。「あ、そうなんですかー。霊が見えるんですか。なーるほどー」などと、ビリーバーでも否定派でもない僕はいつも話を聞くに留めるというスタンスでいる。でも、やはり霊が見えるというその方の場合はちょっと違った。不意に、こう来た。
「先日、海の景色が出てきて、そこに大槻さんとその親族の方がいてバーベキューをしているのを見たんです。親族の方は大槻さんに『またみんなで集まろう』といってました」
あ、そりゃ兄貴だ。と僕は思った。兄は数年前にウインドサーフィンの事故で亡くなっている。バーベキューが趣味で、最後に家族で集まったときに「バーベキュー教えるよ。またみんなで集まろう」といったのだ。だから、この方はなかなかオカルト面白がり派に過ぎない僕としても(上から目線でいうわけではなく)信じるに値する方なのもかもわからない、とちょっと思い、詳しく話を聞くことにした。
聞いてみると面白かった。
なんでも子供のころから〝見える〞ことがあるのだそうだ。金縛りにあってカチカチとガラス玉が弾けるような音が聞こえてくると、見えてくるのだそうだ。数年前には〝天女〞が目の前に現れた、とのこと。天女はこういった。
「あなた、ピアス外したら」
そこかよ! と思うものの、ピアスを外したほうが運気が上がるからとの霊的美容アドバイスであったらしい。ちなみにガラス玉ではなくて鈴の音が鳴るときは、その方いわく「ちょっと構えなくちゃ」といった類いの存在が出現するのだそうだ。
近年は〝おじーちゃん〞が何度も現れるとのこと。7年前にガンで亡くなったその方のおじーちゃんは、死後10日後に「タイタニック号くらいに大きな真っ白な船に乗って現れた」とのこと。
「……それは現実的な物として見えるんですか? それとも夢として?」
僕が尋ねるとその方は「そんな風に具体的に聞かれたのは初めてだ」という。エッ? といった表情になってしばし考えこみ「うん……夢ですね」といった。
「夢だとつまんないですか?」
「いえ面白いです。で、船に乗っておじーちゃんは会いにきた。で?」
「黒い巻ものをくれました」
「巻もの? どんな?」
「恵方巻みたいな」
「恵方巻……」
「恵方巻みたいなものをヒョイっと」
「なにが書いてあったの?」
「それはわからない。でもそれから何度か夢に現れるようになって、霊の世界での暮らしを見せてくれるんです」
おじーちゃんの見せてくれた霊界での暮らしはまずトイレ掃除であったという。おじーちゃんは霊界のトイレ掃除でお金をためて最近やっと家を購入した。広い平屋で「まるで『サザエさん』に出てくるような家だった」そうだ。
そんな広いとこにひとりで住んでさみしくないのかと思えば、おじーちゃんは若い娘とふたりで歩いているビジョンも見せてきたというからけっこうやるこたやっているイケオジなのかもしれない。「でもその若い娘はじつはおばーちゃんなのかもしれない」とのことで、おじーちゃんがおばーちゃんに「お前、若いころの姿でいてくれ」とお願いしたのならこれはいささか〝霊界ハラスメント〞といえるのではないだろうか。そうではなく若い女の子の霊であったなら〝霊界パパ活〞で、どちらにせよホットワードである。
そして現在(霊界の現在って何?)おじーちゃんは、霊界の屋台通りみたいなとこでヘビを売って商売をしているのだそうだ。
「ヘビ? ヘビを食べるの? 霊界では?」
「いえ、どうも地獄で使うようにヘビを売っているようなんですよ。責め道具用ですかね」
お客さまは神様ではなく鬼なのであろう。
「う〜ん面白いですね。あの、なんか霊界でのルールみたいなものはないんですか?」
「ルール……あ、そういえばおじーちゃんがいってました。お供えものについて」
「あ、お供えものにルールがあるんですか?」
「ええ、お供えものは詰め合わせにしろって」
「え?」
「お供えものはご近所の霊の人々と分け合うのが礼儀になっているから、詰め合わせにしろ、って」
そ……そこなのかよ霊界のルール! また思わず驚いたのだが、たしかに大事なことかもしれない。みなさんもお供えものは詰め合わせにしましょうね。
いろいろ面白いので「この話『ムー』に書いていいですか?」と尋ねてみたのだ。すると答えがまた驚嘆するべきものなのであった。
「『ムー』? 『ムー』……『ムー』ってなんですか?」
「ええっ? 『ムー』ですよ……『ムー』!!」
「え〜知らない。新しいSNSとかですか」
あわててスマホで「ムー」の最新号の表紙を検索して見せた。その方は「へ〜、うける」といって笑ったものだ。
「こういうのあるんですか。あはは、ぜんぜん知らない、へー幽霊とかUFOとか、マジ!? うけるんですけど。あはは、生まれて初めて見ましたよ」
おう! 信じるに値する! と僕はそのときに思ったのだ。
オカルトをどっぷり語るのに「ムー」の存在などまったく知らない。それが真実の証明になるわけではないけれど、野坂昭如の「おっきいなぁ」くらいに一周回ってピュアでこれは実に真実に値するといっていい逆にムー的な話であるぞ、と僕は思った。
そして兄貴へのお供えものは詰め合わせにしよう、と心に決めたのだ。
(月刊ムー2024年5月号より)
大槻ケンヂ
1966年生まれ。ロックミュージシャン、筋肉少女帯、特撮、オケミスなどで活動。超常現象ビリーバーの沼からエンタメ派に這い上がり、UFOを愛した過去を抱く。
筋肉少女帯最新アルバム『君だけが憶えている映画』特撮ライブBlu-ray「TOKUSATSUリベンジャーズ」発売中。
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