私たちは宇宙の5%しか知覚できない/真実の目『宇宙奇譚集』プレビュー その1
この世界は、私たちが想像可能な領域を遥かに超えて複雑、かつ不確かに、そして、〝かなり興味深く〟成立しています。そのような奥深い世界を覗き込むために、サイエンスからオカルト、都市伝説まで縦横無尽に横断す
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取材=松原タニシ 構成=高野勝久
即身仏巡り旅もいよいよ佳境。即身仏の聖地・山形でたどりついたのは、タマ…睾丸のミイラだった! タニシ、これを目指すのか?
前回に続いて、旅先は出羽三山。出羽三山信仰の本場湯殿山には、即身仏界いち有名な即身仏もいらっしゃるのだ!
●鉄門海上人(山形県鶴岡市・湯殿山注連寺)
総本山大日坊の近くにある注連寺にいる即身仏が、鉄門海(てつもんかい)上人だ。21歳で注連寺に入門し、その後湯殿山で修行を重ねたという人物だが、この方が最も有名な即身仏といっていいだろう。
上人を有名にしているのはなんといってもその壮絶なエピソードだ。たとえば、自らの左目をくりぬいて江戸の隅田川の龍神に捧げ、世の中の眼病が収まるように祈願したといった話。目をくり抜くことで別の目、第三の目を開眼させようとしたのではないか、との説もあるらしいが、これが上人の「恵眼院(えがんいん)」という名前の由来にもなっているという。
残念ながら大雪のために注連寺に行く道が通行止になってしまっていて、この旅でお会いすることはできなかった。
●忠海上人、円明海上人(山形県酒田市海向寺)
次の海向寺は、ふたりの即身仏がいる珍しいお寺だ。珍しいどころか、複数の即身仏を安置しているのは全国でも唯一、ここだけ。
即身仏としての先輩にあたる忠海(ちゅうかい)上人は、元禄時代に武士の家に生まれた人で、出家して海向寺の住職となり寺を立て直すと、50歳にして即身仏になることを決意、58歳で入定したという方だ。
円明海(えんみょうかい)上人は忠海上人から遅れること約70年、江戸中期の明和時代に生まれ、同じく海向寺の住職を全うしたのち、これも同じく50歳で即身仏になることを誓う。その後5年間の苦行を経て55歳で入定。誓いどおりに即身仏となっている。
円明海上人のミイラは、他の即身仏にくらべておちょぼ口で、特徴的な顔をしている。骸骨の上の皮膚の残り具合でそのようにみえるのだが、入定するときの状態などによってミイラの仕上がりもかわってくる。即身仏にも多様な入定方法があり、個性があるのだ。
●鉄竜海上人、鉄門海上人の睾丸(山形県鶴岡市・南岳寺)
南岳寺には、鉄竜海(てつりゅうかい)上人と、その師である鉄門海上人がいらっしゃる。いや、さっき複数の即身仏がいるのは海向寺が唯一だといってたじゃないか、それに鉄門海上人は注連寺にいるんじゃないの、と思われるかもしれない。
だが、どちらも間違いではない。こちらの南岳寺にいるのは、鉄竜海上人と、鉄門海上人の睾丸のミイラ、つまりタマだけのミイラなのだ!
自らの左目をくり抜いた鉄門海上人には、さらにすさまじいエピソードがある。修行の最中、俗世にいた頃のなじみだった遊女が訪ねてきた時、彼女にむかって自分の片方の睾丸を引きちぎって投げつけたという。
左目をくり抜いたのは疫病退散祈願のため、そして睾丸をひきちぎったのは、女性に触れないという修行の掟、女犯戒を守るためだったという。その時ひきちぎった片タマがミイラになってこのお寺で守られているのだが、残念ながら現物は拝観させていただけなかった。
鉄竜海上人は南岳寺に入門したのち修行を行い、55歳で即身仏になることを決意。それから1000日間、肉類や穀物をたつ修行をして明治14年に62歳で入定している。
明治時代にも即身仏が誕生していたことに驚いたが、じつは明治政府は明治13年、即身仏になることを禁止する法律をだしている。そのため鉄竜海上人の入定は、寺と弟子たちの間だけで長く秘密にされていた。明治14年というのは入定した上人を掘り出した年で、生物学的な死亡はそれよりも数年前だったろうと考えられているのだが、そうした理由で正確なところはわかっていないのだ。
さて、こうして茨城から山形までたくさんの即身仏を見てきたが、やっぱり即身仏はすごい。間違いなく超人だ。
ミイラといえばミイラなのだが、ふつうのミイラと絶対的に違うのは、即身仏は生前から、自らが望んでミイラになるため行動しているところだ。
まず米や麦などの主な穀物を食べない五穀断ちをして、その後はさらに雑穀も口にしない十穀断ちをする。穀物も肉も魚も食べず、木の実や葉物だけを食べる木喰行に入るのだ。
これを続けること1000日、そうやって体からミイラになるのに邪魔な脂肪などを落としていく。生きているうちにミイラになる体づくり、準備をするわけだ。そして最後の最後には、漆の汁を飲む。それによって体の内部から腐りにくくするという、想像するだけでも大変な苦行だ。
エジプトのミイラは、死んだ後に家臣などが遺体のミイラ化処置をしてつくられるもの。南米のほうでは気候の関係で自然死しても勝手にミイラになってしまう。日本の即身仏は自分の意思で「なる」もの。圧倒的に違うのだ。
ここまで超人・即身仏を調べたところで、タニシも即身仏修行をスタートさせた。
ムーライブ配信時点で、修行1日目である。昨日から、タニシはキャベツしか口にしていないのだ。これをあと999日続ければ、即身仏になることができる、はず……。
それにしても、10年前、怪談和尚こと三木大雲住職から「このままだとあと5年で死ぬ」と宣告された人間が、即身仏修行を始めることになるなんて……世の中、わからないものである。
……翌日にはビールと中華を口にしてしまった、というから、タニシ入定はまだまだ、まだまだ先になりそうだ。
松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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