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重層するパラレルワールドが描かれたモキュメンタリー作品が公開。細緻な設定と風刺が現実を先取りするという事例まで発生した、そのリアルな世界観に迫る。
モキュメンタリーとは、フィクションをドキュメンタリー映像のように見せる手法を意味する言葉だ。WOWOWの制作による『PORTAL-X~ドアの向こうの観察記録~』もそんなモキュメンタリー作品のひとつ。
作品では、異世界につながるいくつもの扉が開いており、その向こう側には、われわれが知る歴史から分岐した別の現実世界=ポータルが広がっている。ドラマの舞台となるのは、それぞれのポータルに対する内部観察が始まってから50 年が経過した世界だ。
本シリーズを手掛けた伊藤峻太は監督・VFXと脚本も担当し、最終的に映像に含まれない部分まで設定を作りこんだという。食糧危機の世界、地底人と暮らす世界、AIが人格や人権を備えていく世界……それぞれに歴史があり、現実世界との交流が始まった50年分の時系列を設定する。そのうえで、架空の世界をドキュメンタリータッチで描いていくリアルなプロセスに、現代社会への批評と問題意識を織り込んでいった。
「根底にあるものはまず今の社会をどう風刺するかという思いでした。今の社会に対する怒りだとか虚しさとか、危機感のような負の感情を入れる。下手をするとものすごく説教くさくなるし、社会的なテーマに振りすぎると、見ていて面白くない。そこで、見ていて関心が高まる、テンションの上がるモチーフをどんどん入れていこうと考えました。
それが50年前に見つかったドアをはじめとする仕掛けです。今回のドラマはマルチバースというよりはパラレルワールド。並行世界を描くために、量子力学をはじめとするいろいろな要素を盛り込みました」
撮りたい映像があって、そこにたどり着くためのリバースエンジニアリングのような作業が積み重ねられた。
「事故はたくさんあったと思います。ドアが発見されて、向こう側に取材にいくことの危険性もあるし、向こう側とこちら側どちらかのドアが壊れてしまったら、もうポータルが潰れてしまいます。それでもいろいろな危険を冒して取材にいって、途中でドアがなくなって、向こう側に閉じ込められて帰ってこられなかった人たちもたくさんいたにちがいありません。それにポータルの政治的・経済的利用もあるでしょう」
現実世界をえぐるために、当然、葛藤もある。
「取り組むテーマによっては傷つく人がいる。病気、隣人関係も悩んでいる当事者の方がいます。モキュメンタリー、ドキュメンタリータッチでどう描くべきか、難しいテーマはいくつかありました」
構想から2年を経ての放送・配信となるが、エピソードで描いた話がまるで予言のようにほぼそのままの形で現実化した例もあるという。このシリーズがムー的だと思うのは、こういうところなのだ。
筆者が特に気になっているエピソードは、『フロムアンダーグラウンド』の地底人、『不死鳥の歌』のAI、そして『ラストベイビー』で描かれる少子化問題だ。どんな問題が指摘されているかは、番組で確認してほしい。
われわれが生きている世界以外に、並行して存在する世界が無数にある。分岐点で何かをしていれば、あるいはしなければ、今では考えられないような世界になっていたことは明らかだ。未来の世界につながるひとつひとつの決断や選択を、未来の時点から検証していく。そういう方法論は、先端科学技術が進化を続けていくこれから先の時代で主流になるかもしれない。
モキュメンタリーを通して描かれる予言的要素に関しても、リバースエンジニアリングのコンセプトが活かされている。
突如発見された異次元への扉「ポータル」。その扉は、この世界とは別の歴史を辿った並行世界につながっていた――。本作はドアの向こうの世界を「PORTAL」と名づけ、その内部観察が始まってから今年で50年後を描くモキュメンタリードラマ。歴史の転換点で選択を誤り、取り返しのつかない状況に陥っているPORTALは、食糧難、不死が実現した世界、真の多様性を獲得できなかった社会、極端な少子化、運に頼りきる世界など多種多様。各ポータルの失敗事例をわれわれの社会に活かすことを目的とした観察番組として構成されている。
並行世界をリポートする新人番組ディレクターのカイフ(柄本時生)と、番組カメラマンのルナ(伊藤万理華)は何を見るのか? 取材を重ねるごとに、この世界の輪郭と並行世界「PORTAL」の秘密が明らかになっていく。
全8話/放送・配信日:2024年1月12日(金)午後11:30~放送・配信スタート(第1話無料放送) /監督・脚本・VFX:伊藤峻太、撮影・音楽:椎名遼/出演:柄本時生、伊藤万理華 ほか
https://news.wowow.co.jp/750.html
(月刊ムー 2024年2月号より)
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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