香川県の四国水族館へUMAを探しに行こう!「四国のUMA(未確認動物)たち ~河童・人魚・ツチノコの謎に迫る~」現地レポート
水族館に河童、人魚、ツチノコも登場! 海洋堂とムーが協力した特別展が開催中だ
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文=大槻ケンヂ 挿絵=チビル松村
ユリ・ゲラーと矢追純一。70年代に超能力ブームをもたらしたジャパン・オカルト最強コンビと40年後に出会ってみたら……その衝撃を振り返る!
「賢ちゃん、時計が動いたわよ!」
と母がいきなりいったのだ。小学生のころだ。学校から帰ってきて……とここまで書いたところで『この書き出し前回とソックリだな』と気づいたわけだが、本当のことなので仕方がない。
1974年2月1日、学校から帰って家族揃ってテレビ「木曜スペシャル」を観ていると、一人の外国人が通訳を介して「今から念力でフォークを曲げる」と言った。彼は超能力者なのだという。ユリ・ゲラーというイスラエルから来たその男は、フォークの首のところを持ち、指でこすり、見事に金属の食器を曲げてしまった。
全国のお茶の間がどよめいた一瞬だ。もちろん、大槻家も二男、賢二を中心に大騒ぎだった。だってそんな現象を家族全員初めて目撃したのだから。しかも生放送でなのだ。
「賢ちゃんフォーク持ってき……」と言いかけた母が「……やっぱ時計持ってきて」と言い直した。ユリ・ゲラーが動かなくなった時計も念力で直してみせたからだ。
「その引き出しに古い腕時計があるわよ」
そう言われるまま僕は母に、止まった腕時計を渡した。ユリによれば、みんなで心を合わせて「曲がれ、動け」と念じたならフォークは曲がり、時計は動き出すのだという。あの昭和49年の冬の夜、ほぼすべての家族たちはテレビの前で心をひとつに念じたのではないか。「曲がれ!」「動け‼」と。
「賢ちゃん、時計が動いたわよ!」
ものの5分であっただろうか。え、と叫んで父と兄とで母の手の中を覗き込むと、確かに、さっきまで止まっていたはずの秒針が、チクチクと動き出して時を刻み始めているのであった。
「……う、うわぁぁぁっ」
僕は驚きのあまり変な声を出して引っくり返ってしまった。すると母は例の、母ならではの“日常立ち返り力”によって、「そんなことよりも」といった感じで腕時計を賢二の手に戻し「あ、ハッサクあるから食べなさい」といって台所に立っていったのであった……思い出した、わが家では食後はやたらハッサクが出されたのだ。ハッサクは酸っぱくて苦手だったなあ……そんなことよりも超能力である。
今でも母の手の中の動き出した腕時計をまざまざと憶えている。いったい、アレはどういうことであったのだろうか?
考えられるのは、しばらく止まっていた時計が、外部からの刺激によって、また稼働を始めたという真相だ。そういうことって、よくある。止まっていた時計が母に動かされたことによって、機械的に再始動を始めただけのことだ。あるいは、母はそういうことがよくあることを承知のうえで、子供たちを驚かそうとちょっとした手品じみたマネを試みたのかもしれない。
逆に、超能力が本当にあって、なんということか、ユリ・ゲラーのパワーが遠く離れた大槻家の時計を動かしたのかもわからない。今でも「ムー」の広告などで見る彼の姿はオーラあふれる若々しさだ。この人ならそりゃそんくらいできるかもな~と思わせるスター感が昔からあった。
実際、数年前にテレビ番組収録でお会いした御本人も、登場した瞬間にあたりがパッと輝くような、華のある人であった。矢追純一さんを特集したオカルト番組のサプライズゲストで来日したのだが、楽屋に「ユリ・ゲラー様」とドーン!と書いた紙が貼ってあって、そのワードの強さと『それじゃサプライズにならないだろ』とで、驚いた。
ちなみにその時、ユリ・ゲラーと矢追純一のメルアド交換の現場を見た。久しぶりに会ったというお二方はよほどうれしかったのだろう、番組エンディングのまだ音楽とか流れて皆さんさよなら~とかやっている最中にもかかわらず、お互い携帯を取り出してメルアドの交換を始めたのだ。スタッフも出演者もびっくりしたが、オカルト界二大レジェンドのメルアド交換会をいったい誰が止められようか。「テレパシーでやれよ!超能力者なんだからそこは!」とも思ったものの、テレパシーがあったらそもそも携帯がいらないのか? 収録はそのままでエンディングを迎えた。
……閑話休題。もうひとつ、時計が動き出した理由として、実は母が超能力者だったから、ということも考えられる。あの夜、母は念力で時計を動かしたのだ。
んなバカなって話だが、可能性としてはなくはない。いつだったか、X-JAPANが紅白歌合戦に出場した時、ジッとYOSHIKI氏の暴れドラムを観ていた母が、唐突にこういったのだ。
「これくらい、お母さん簡単にできるわよ」
そうして、やおら両手両足をドラムス(2バスの)を叩いている体でズドドドドタバババババーッ!とモーレツに速くうごかしてみせたのだ。それはこれまで数多のドラマーの動きを見てきたロック・ボーカリストの息子さえ驚かせる激しいものであった。
ええっ!? 何? 突然そのスキル?
息子が焦っていると母はピタッとまた突然動きを止め、いった。
「ハッサク、あるわよ」
……なんの話だっけ? そうだ、ユリ・ゲラーの「木曜スペシャル」の衝撃についてだった。あれから48年(!)いまだに大槻家の腕時計の真相は不明だが、隠れスゴ腕ドラマー説と実は超能力者説を併せ持つ昭和8年生まれの母は健在だ。今年の正月に帰ったら、48年前に家族4人で「木曜スペシャル」を観たのと同じリビングで、ハッサクを用意して一人で息子を待っていた。
ユリ・ゲラーの「木曜スペシャル」が強烈な記憶として多くの人に今も心に残っているのは、超能力ももちろんインパクトが大きかったけれど、それと同等くらいに、昭和の昔に、一台のテレビを囲んで、「曲がれ!」「動け!」と、家族がひとつに心を合わせて念じたという体験が、胸に強く刻み込まれているせいなのではないかとも思う。もし超能力というものがあるのなら、時計をグルグルと巻き戻して、老いたる母を少しでも若返らせてあげてほしい。
大槻ケンヂ
1966年生まれ。ロックミュージシャン、筋肉少女帯、特撮、オケミスなどで活動。超常現象ビリーバーの沼からエンタメ派に這い上がり、UFOを愛した過去を抱く。
筋肉少女帯最新アルバム『君だけが憶えている映画』特撮ライブBlu-ray「TOKUSATSUリベンジャーズ」発売中。
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