界隈それぞれの怪奇とタブー 「業界怪談 中の人だけ知っている」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    業界怪談 中の人だけ知っている

    NHK「業界怪談 中の人だけ知っている」制作班 編

    その業界ならではの無気味で恐ろしい怪談集

     たとえば、建築業界。街作りに邁進するこの業界の人々は、「意図せずして触れてはならないものを掘り起こし、動かしてならないものを移築し、人ならざる何かの怒りに触れてしまうことがある」。
     あるいは、時に、家に染みついた執着が引き起こす無気味な異変との対峙を迫られる「清掃業界」。
     さらには、古来、人の念が籠もるとされ、呪具としても利用された髪の毛に触れる「美容業界」。そして、いわずもがなの「葬儀業界」……。
     この世には多種多様な「業界」があり、そしてそれぞれの業界には、「中の人」しか知り得ない、その業界ならではの怪異がある。

     本書は、8つの業界を取り上げ、その業界ならではの、怪異の世界を覗き見る、全16話の「怪談小説」集。「怪談」なので、ともかく無気味で恐ろしい話が目白押しなのであるが、それと同時に、各業界の壮絶な裏話を知ることもできるのも、本書の魅力である。とくに「清掃業界」は一読の価値ありと見た。
     評者はTVを保有しないのでまったく知らなかったのだが、何と本書は、あの天下の大NHKの人気番組の再現ドラマが元になっているという。ならばできれば「放送業界」についても、某放送局内の浴場の亡霊といった小ネタのみならず、他の業界なみに、詳細に取り上げていただきたかったところである。きっと、とんでもないバケモノが飛び出していただろうから。

    NHK出版/1760円(税込)

    (月刊ムー 2024年1月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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