天草四郎を導いた神人もりすけさんとは? 森宗意軒の超超人ぶり/松原タニシ超人化計画・天草編2

取材=松原タニシ 構成=高野勝久

    天草四郎を追って訪ねた天草の地。ところが現地にいってみると、天草四郎に勝るとも劣らないすごい「超人」がいたことが判明して……!

    天草で出会った、天草四郎を超える超人?

     キリシタン一揆を率い、数々の奇跡を起こしたといわれる超人・天草四郎出生の地で遭遇してしまった、天草四郎をこえるすごい人物とは……?

     その人物は、この神社に祀られているらしい。

    現地で入手したパンフレットより。

     森宗意軒(もりそういけん)神社。名前がそのまま神社の名前にもなっている、森宗意軒だ。森が名字で、宗意軒が号。

     いったいどんな人物なのか、まずは神社にいってみよう。

     地元の人にでっかいはっさくみたいなみかんをいただきながら、森宗意軒神社を目指す。神社は柳城という城跡にあり、ひたすら坂道をのぼっていった先にある。

     こんな道をイノシシに注意しながら進んでいって、ラピュタのようなお墓を抜けて……

     ひらけたところにあらわれたのが、森宗意軒神社だ。

     看板にある説明をそのまま紹介させてもらうと、

     森宗意軒神社(通称 もりすけさん)
     この祠は、寛永一四年(一六三七年)の天草島原の乱において天草四郎の率いる一揆の参謀者の一人で医学者でもあった森宗意軒を祀る八代である。
     当所では、由井正雪(軍学者)に妖術と軍略を授けたとも伝えられている。
     宗意軒はこの小柳の素晴らしい眺望をとても気に入り、維和島よりこの地に住み着いたとされている。
     乱後、地区住民が宗意軒を偲び、当社を建てて供養を行っている。

    森宗意軒神社の看板。真っ赤なのにもなにか深い意味があるのだろうか。

     キリシタン軍は天草四郎を指導者にたてていたが、そのバックで参謀として仕切っていた軍師が森宗意軒だったのだ!

    島原の乱を影で率いた男

     しかも森宗意軒には、由井正雪に妖術を授けたという伝説まであるという。由井正雪とは、三代将軍家光の死後に幕府転覆を狙ったクーデターを計画した男だ。そんなやつに妖術と軍略を教えた人物……。

     となると、もしかしたら天草四郎がさまざまな奇跡を起こしたという話も、本当は森宗意軒のしわざだったんじゃね? と考えることができるんじゃないだろうか。

     四郎が起こした奇跡がじつは森宗意軒の仕組んだことだったとしたら……。

     地元では今も「もりすけさん」と慕われている森宗意軒。神社もきれいに整備されていて、お掃除用のタオルがかけられている。社殿のなかをのぞくと壁にふるい新聞記事が貼られていたのだが、そこにはすごい事実が記されていた。

     安倍晴明、ハリー・ポッターなど、最近の妖術、魔法ブームのさきがけが森宗意軒だったというのだ! そうだったのか!!
     じつは森宗意軒は意外と有名人だ。なぜならば、宗意軒はあの大ヒット作『魔界転生』にも登場しているのだ。映画では沢田研二さん演じる天草四郎が宮本武蔵はじめ歴史上のいろんな猛者を蘇らせて戦っていたが、その原作、山田風太郎の小説版『魔界転生』では、森宗意軒がいちばんの黒幕という設定になっているのだ。

     原作は、島原の乱に敗れたあとも秘かに生き残っていた森宗意軒が天草四郎たちを魔術で蘇らせ、由井正雪とともに徳川幕府転覆を目論むというストーリー。『魔界転生』の本当のラスボス・黒幕は、天草四郎じゃなくて森宗意軒だったのだ!

    天草四郎を囲んで軍議をおこなうキリシタンの中心メンバー。左下が森宗意軒(国会図書館デジタルコレクション)。

    「星野寿庵覚書」という書物によると、森宗意軒は南河内赤坂千早村の出、つまり大阪出身だ。そこの五社大明神の神職をしていた西村孫兵衛の息子がのちの宗意軒で、姉妹は大名小西行長の奥さんになったという。小西行長といえば有名なキリシタン大名で、しかも豊臣時代には天草の領主にもなっている戦国武将。

     自身がキリシタンでもある小西行長が許したこともあって、天草一帯ではキリスト教の信仰がいっそうさかんになったのだが、しかし行長は関ヶ原の合戦で西軍につき、敗軍の将として処刑されてしまう。その後行長にかわりやってきた領主が重税を課したことが島原での一揆の原因のひとつにもなったようなのだが、ともかく、その小西行長の奥さんの兄弟ということは、世が世なら森宗意軒は大名の義理の兄弟というすごい地位についていたはず。

     森宗意軒、想像以上にすごい人物のようだ。(つづく)

    超人化計画の動画はこちら。

    松原タニシ

    心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。

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