異端審問官となり、ヴァンパイアを断罪!ゲーム『ジ・インクイジター』で味わう信仰者の責務と葛藤

文=サン・ジェルマン伯爵2世 協力=カリプソメディアジャパン

関連キーワード:

    中世ヨーロッパ、人々をほの暗い恐怖で覆い尽くした「異端審問」が、21世紀の今、まさかのゲームで復活。与えられた強大な力を行使するのは、あなただ!

    中世ヨーロッパの闇「異端審問」の実相

    「異端審問」は、中世ヨーロッパでキリスト教の教義から逸脱した〝異端者〞を発見し〝断罪〞するために行われた審理の総称である。この審理に関する絶対的な権限をときの教皇と教会法より与えられた異端審問官の存在は、民衆に畏怖の影を落としていた。

     なにしろ異端審問にかけられた者は、無罪を自力で証明せねばならず、そもそも有利な証言は認められなかった。ひどい場合は容疑や噂だけでも有罪になったという。あくまでも審理の最終手段という位置づけの拷問も常套手段であり、自白するまで延々とさまざまな拷問が行われたのだ。
     参考までに1651年の『殉教者列伝』には「熱した油を入れた長靴を履かされる」「木に片足で吊るされる」「猛獣に引き裂かれる」「馬で八つ裂きにされる」「心臓を取り出されたうえ、教皇の使徒にかじられる」「洞窟で燻される」「針を爪の間などに突き刺される」……といった異端審問官による拷問の例が挿絵付きで列挙されている。
     その背景には、異端審問制度には、異端審問官はあぶりだした〝異端者〞の全財産を没収してよいという法の存在があった。つまり、裕福な人物を異端者扱いして裁けば裁くほど、異端審問官と教会の懐は潤ったという説もあるのだ。
     さらに1451年には教皇ニコラウス5世によって〝ソーサリー=魔女術や民間呪術〞にまで異端の定義を拡大すべしとの勅命が発せられ、かの唾棄すべき〝魔女裁判〞へと引き継がれていくこととなる。

     そんなおぞましき異端審問制度の成立から840年後の2024年に、なんと異端審問官を主人公として操作できるという断罪アドベンチャーゲーム『ジ・インクイジター』が登場することになるとはだれも想像し得えなかったことだろう。

    (上・下)大異端審問官となる本作は、ポーランドの原作小説をベースに新進気鋭の開発集団The DUSTと、独裁国家シミュレーション『トロピコ』シリーズでもおなじみのカリプソメディアが手掛けた話題作。

    プレイヤーが裁くのは、ヴァンパイアか、それとも?

     本作は完全オリジナルの中世を舞台とするフィクション。「キリストは十字架で処刑されず、復讐者と化した」という苛烈なキリスト教(架空)が支配する世界観だ。
     このゲームであなたは大異端審問官のモーディマーとなって、異端審問を行う絶対的な権限を手にする。教皇の密命により、街に潜んで殺人を犯すヴァンパイア(異端)を捜し出して処罰する任務に就くのだが、民衆から聞き込みや盗み聞きで情報を集め、「異端審問」で容疑者を尋問――あなた次第では拷問――する。神とキリストに背く異端者を断罪することがゲームの目的なのだ。

    残酷な異端審問の場面がある意味でハイライト。民衆や兵士たちは大異端審問官であるあなたを畏怖し、へりくだる。

     また、大審問官であるあなたは、罪が具現化した魂の冥界(非=世界)に侵入できる能力を持つ。生者の世界では見えなかった真実を知ったとき、あなたは被告人を赦せるだろうか。それとも無慈悲に、神に背くあらゆるものを断罪する権力に陶酔したままだろうか?

     本作はそんなあなたのふるまいや選択によって、3種類の結末が用意されているという。平和な現代だからこそ楽しめる(おそらく)ゲーム史上初の〝異端審問官〞体験をしてみてはいかがだろうか。

    非=世界では「真実」が目に見える。あなたが異端として裁いた被告人はもしかして?

    信仰者としての責務と、個人としての良心のはざまに葛藤が生じるが……。

    『 ジ・インクイジター』

    対応機種:PlayStation5、PC、Xbox Series X¦S 発売中
    【PlayStation5】
    デラックスエディション(パッケージ版/ダウンロード版):7,700円(税込)
    通常版(ダウンロード版):6,160円(税込)
    【 PC/Xbox Series X¦S】
    デラックスエディション(ダウンロード版):ストア表示価格
    通常版(ダウンロード版):ストア表示価格
    ジャンル:断罪アドベンチャー
    対応言語:字幕(日本語/英語)、音声(英語)
    レーティング【PlayStation 5】CERO:Z(18才以上のみ対象)
    【 PC/Xbox】IARC:18+
    プレイ人数:オフライン1人
    発売元:Kalypso Media Japan株式会社

    (月刊ムー 2024年3月号より)

    関連記事

    おすすめ記事