レムリア大陸ーー異質の古代文明が栄えた神智学的進化論の故地/ムーペディア
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、現生人類の祖先となる根源人種の誕生地で、異質な古代文明が栄えていたという太古の巨大大陸を
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かつて、現在のインド洋を覆うような巨大大陸が存在した。「レムリア」と名づけられたその幻の大陸は、文化人類学や言語学的な伝播の謎を解明する鍵になるという。 シュメール文明とも深く関係するというが、その真相とは?
目次
先史超文明の狩人たちの夢とロマンをかき立て、好奇心を刺激してやまない幻の沈没大陸伝説。双璧をなすのは太平洋のムーと大西洋のアトランティスだが、インド洋にも両大陸伝説に勝るとも劣らないほどの巨大な謎を秘めた沈没大陸伝説がある。
北はインド、西はアフリカ、南はオーストラリア、東はインドネシアに囲まれた広大な海域に浮かんでいたこの幻の古代大陸の名を「レムリア」という。
インド洋に沈没大陸を最初に仮想したのはドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルで、イギリスの動物学者フィリップ・スクレーターがレムリアと名づけた。


語源はキツネザルの一種である珍獣のレムール。19世紀半ば、スクレーターは世界各地の珍しい動物を調査しているとき、奇妙で不可思議な事実に気づいた。
レムールの主要棲息地はマダガスカル島で、現在、35種類が確認されているほか、約5000万年前の地層から化石も発見されている。マダガスカルはかなり大きな島ではあるが、しかし環境条件がほぼ単一的な島に何十種類ものレムールがいるのはなぜなのか。

そして、レムールにはさらに大きな生物学上の謎がある。きわめて特異なその分布状況だ。
南北に細長い形をしたマダガスカル島は、アフリカ大陸の南東、モザンビーク海峡を挟んでインド洋に浮かんでおり、アフリカ大陸に付属しているかのように見える。ところが、なぜかアフリカ大陸にレムールは棲息していない。化石もまったく発見されていないのだ。
にもかかわらず、インド洋をはるかに隔てたインド亜大陸、スリランカ、マレー半島、スマトラ島、カリマンタン(ボルネオ)島、インドネシアなど、南アジアから東南アジアにかけての地域、すなわちインド洋の周辺地域に散在して棲息しているのである。
奇妙で不可思議な分布というほかはあるまい。偶然とも考えにくい。生物学上の常識からすると、同一種の生物が隔絶地で互いに無関係に発生することはまずありえないからだ。
しかもレムールは非常に臆病な動物で、泳ぐこともできない。激浪がうねる大洋を泳いで横断した可能性は皆無なのである。
とすると、導かれる推論はひとつしかない。インド洋にはかつて、マダガスカル島と南アジアおよび東南アジアを結ぶ”陸橋”、すなわち巨大大陸があったと推論せざるをえなくなるのだ。
かくてスクレーターはその”失われた大陸”に、レムールにちなむレムリアという名称を与えたのだった。
意外にも、マダガスカルはアフリカ大陸に付属する島ではなく、海底に没し去ったレムリア大陸の陸地の一部だったのである。
レムールの特異な分布以外にも、沈没大陸の実在を裏づける別の証拠も多数ある。
たとえば、マダガスカルには「エピオルニス」と呼ばれる巨鳥が17世紀まで棲息していた。「シンドバッドの冒険」物語に登場する怪鳥ロックのモデルとされ、同じ鳥が10世紀ごろまでインド洋の諸島にもいた、という古記録がある。だが、アフリカ大陸には棲息の痕跡がまったくない。

「プテロプス」という翼手類の棲息地もインドとマダガスカルだけで、アフリカには棲んでいない。
植物も同様で、インド原産のライラックのように、アフリカには見られず、インド、マレーシア、マダガスカルにしか分布しないものもある。逆に、アフリカを代表するライオンやヒョウのような猛獣の姿は、マダガスカルでは見られない。毒蛇もしかりだ。


文化人類学や言語学的にも、レムリア大陸の存在を想定すれば容易に氷解する謎がある。
インド洋によって遠く隔てられているオーストラリアの先住民アボリジニと南インドの先住民は、人種的に似通っているだけでなく、文化にも共通性が見られる。
一例をあげれば、アボリジニが使うブーメランは、従来はオーストラリア独自のものとされていたが、近年の調査により、南インドの少数民族も古くからよく似た道具を使用していたことが判明したのである。
また、インドネシアのジャワ島の住民とマダガスカル島の住民の間で言語による意思の疎通ができた、という驚くべき報告もなされている。言語学的に共通点があったればこそのことだ。
地質学や地球物理学からのアプローチも、レムリア大陸実在説に有利なようだ。
アメリカのスクリップス海洋研究所が行った調査の結果、インド洋の海底に南北に走る4つの海嶺があることが判明している。それがレムリア大陸の山脈であったとは速断できないが、興味深い事実といえよう。
インド洋北西部のマスカリン海台で行われたボーリングによる地質調査も、付近の海底が千数百メートルも沈下していることを明らかにした。もっとも、それは一気の沈下ではなく、100万年あるいは1000万年をオーダーとする地質学的年代での沈下らしいが、無視はできない。
研究家たちの推定では、レムリア大陸の沈没がはじまったのは今から約3400万年前とされているからで、しかも沈没は一日と一夜にして起こったとはされていないからだ。
大規模沈下はまずレムリア大陸の南部と東南部ではじまってやがて北部へ波及し、約2500万年前に大部分が沈没。大陸の名残である多くの島々がインド洋上のあちこちに浮かぶことになった。その代表的な島のひとつがマダガスカル島だった。そしてその過程で、レムリアで育った哺乳類や猿人はアフリカ西部やインドへ移って世界へ広がっていった、というのである。
前出のヘッケルなどは、ミッシングリンクの謎を解く鍵はレムリアにある、とまで主張している。
だが、大陸の海没は人類誕生以前の話であり、はたして「レムリア文明」なるものが存在したのか、という当然の疑問が出てこよう。
そうした大きな時間の断層の問題はひとまず置くとして、ここでは南インドの諸民族が語り継いできた奇妙な伝承に注目したい。
──インド亜大陸最古の文明人といわれるタミール人は、サンガ(集会、共同体の意)と呼ばれる知識人の団体を組織していた。サンガの起源は今からおよそ1万年前、面積700カウム(約7000平方キロ)もあった南の大陸ナワラムの都市マドウライで組織されたことにはじまる。
この南の大陸にタミール人の祖国タマラハムがあり、大陸が沈没したとき、サンガのメンバーはそれまでに蓄積していた膨大な知識を携えてインド亜大陸へ逃れた。そしてインド最古の都市カパティプラムに新たなサンガをつくった――。
上記の伝説に登場するナワラムがレムリア大陸をさしているのかどうかはわからない。カパティプラムという都市の比定地も確認されてはいない。
ただ、研究家のなかには、インダス川流域に栄えた謎の都市モヘンジョ・ダロとカパティプラムを重ね合わせる者もいる。
モヘンジョ・ダロはきわめて高度な知識に基づく計画都市として忽然と出現した。その都市プランの作成者がレムリア大陸の住人ではなかったか、と推理するのだ。


大胆すぎる仮説と思うかもしれないが、別の状況証拠もある。モヘンジョ・ダロ遺跡で発見された謎のインダス文字がそれだ。
インダス文字はいまだ解読されていないが、旧ソ連の研究家グループはコンピュータ分析の結果、その言語構造はドラビダ語に非常に近い、と主張している。ドラビダ語は、タミール人とともにインド亜大陸の最古の人種のひとつとされるドラビダ人の言語で、タミール語もその語族に含まれる。しかもその言語は、ウバイド人の言語とも共通性を持つことがわかっている。
ウバイド人は、チグリス・ユーフラテス両河川の下流域に起こった最古の文明である”原シュメール文明”の担い手だ。
となると、驚くべき仮説が用意できる。そう、”原インド文明”と原シュメール文明は、同一の母なる文明を起源として誕生した可能性が出てくるのだ。


考古学界は、その母なる文明の正体を確認していない。だが、われわれはレムリア大陸の存在を知っている。今はインド洋の海底に眠る未知のレムリア文明こそが、両文明の母となった根源文明だったのではなかろうか……。
それを証明するような謎めいた遺跡も存在している。
たとえば、ムンバイ(ボンベイ)の近くで発見された世界最古の港ロータルは4000年以上前のものと確認されている。ロータル市の東方では、古代の造船所の跡が見つかった。床はレンガ張りで、しかもその規模が度肝を抜く。長さは218メートルもあり、幅7メートルの運河まで掘られていたのだ。
モルジブ諸島のガン島では謎に満ちた古代遺跡も発見されている。これも有力な傍証となろう。1982年、コンティキ号による海洋探険で知られるトール・ヘイエルダールが、「モルジブの無人島で、3500年以上前の太陽神殿を発見した」と発表し、世界の耳目を集めたことがある。彼が発見したのは、石をピラミッド状に積みあげた遺跡だった。

のちに仏教遺跡のストゥーパ(仏舎利塔)であることが判明したが、なおも謎は残った。同じ遺跡から象形文字を刻んだ石板が見つかり、その文字がモヘンジョ・ダロで出土したインダス文字や、モアイ像で知られるイースター島のロンゴロンゴ文字と酷似していたのである。




モルジブ諸島はレムリア大陸があったとされるインド洋、イースター島はムー大陸があったとされる太平洋に浮かぶ。しかも、ムー大陸の存在を初めて世界に知らしめたジェームズ・チャーチワードは、ムー帝国はインドにナガ帝国という植民地を築いていたと主張している。


それだけではない。レムリア大陸の一部だったと推定されるマダガスカルの言語が、アフリカ系ではなく、インドネシアやミクロネシア、ポリネシアの言語に非常に近いという不可解な事実もある。
この奇妙な符合をどう解釈すればいいのか。万人を納得させる答えはいまだ用意されていないが、ムー大陸とレムリア大陸の間に交流があり、この両文明の系譜を引く人々によって原インド文明と原シュメール文明が誕生した、という図式が浮かびあがってくることだけは否定できまい。
とまれ、近年、レムリアが論議の対象にされる機会は少なくなったものの、かつて神秘主義者たちは熱い視線を注いだ。
彼らの多くはレムリア大陸実在説を支持する一方、レムリア人についてはきわめて特異な見解を示している。
その代表格は、神智学協会の創立者で、レムリア大陸の実在を熱心に主張したヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキーだろう。彼女はダーウィンの進化論に対抗して”霊的進化論”を唱えた。

彼女の霊的進化論で特徴的なのは”周期”および”根源人種”という概念である。ごく端的にいえば、人類は周期と呼ばれる7つの段階を経て進化し、それぞれの周期に対応する根源人種と呼ばれる人類が誕生する、というのだ。
第1周期・第1根源人種、すなわち地球に最初に登場した人種は肉体を持たないエーテル的存在で、「ポラリア」と呼ばれる北極の不滅の聖地に居住していた。
第2周期・第2根源人種は両性具有の半人間で、グリーンランドからカムチャッカまで馬蹄形に広がるヒュペルボレアに住んだ。
第3周期・第3根源人種は約1800万年前、レムリア大陸に誕生した人類。これこそがレムリア人であり、最初は軟体動物で雌雄同体だったが、やがて骨格が形成され、男女の性も分かれて生殖活動を行うようになり、神々と自由に交わる生活を送った。
第4周期・第4根源人種はアトランティス大陸に誕生し、完全な人間の形をした人類だったが、大陸は約85万年前に水没した。プラトンが言及した1万2000年前に沈んだアトランティスは大アトランティスの残滓だった。
第5周期・第5根源人種は中央アジアに出現した褐色~白色人種で現生人類がこれに当たる。
第6周期・第6根源人種は再浮上してくるレムリア大陸に出現し、高度な叡智を実現した生活を送る。
第7周期・第7根源人種は地球を離れて水星に移住し、新たな文明をつくる。
神智学の秘奥のすべてを語りつくしたとされる畢生(ひっせい)の大著『シークレット・ドクトリン』で彼女はそう主張している。この壮大な宇宙論は、霊的な高次の存在からアストラル的な方法で授かった古代の叡智に基づく理論であるという。
一方、イギリスの神智学者スコット・エリオットが著した『アトランティスと失われたレムリア』には、首輪をつけた恐竜をペットのように連れ歩くレムリア人を描いた挿絵が載せられている。説明文によると、身長は3.7~4.6メートル。顔は細長く、額はほとんどない。両目は極端に離れている。後頭部に第3の目があり、後方へ歩くこともできる。腕は膝の下に届くほどに長い。むろん想像画だが、真実はどうだったのだろうか……。

●参考資料=「H・P・ブラヴァツキー」(泉保也/「ムー」292号所収)、「レムリア大陸は人類進化のミッシングリンクだ」(秦洋一/ムー別冊「世界超文明百科」所収)、「失われた大陸文明の伝説」(藤島啓章/ムー謎シリーズ「世界海底遺跡の謎」)所収ほか
(月刊ムー2011年9月号初出)
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