アポーツ出現!「鬼の面」がもたらす凶事/吉田悠軌の怪談解題・呪物編
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橋本 忍 静岡県熱海市
私はデイサービスのスタッフの一員として働いています。
今年1月のある日、施設の清掃を担う年配の女性からこんな不可思議な話をされました。
「この間、私、見ちゃったのよ……」
その女性は、以前、勤めていた職場でも霊を目撃しているそうです。決して霊の存在をおもしろがるタイプではなく、むしろ怖がるタイプの女性といえるでしょう。
そのため私は以前から、
「何か妙な現象に遭遇したら知らせてね。おおかたなんらかの設備トラブルだろうから、心配はいらないと思うけど」
と、彼女に伝えていました。
年配の女性はこう続けます。
「ある日、掃除を始めたところ、テレビに人が映っていたのよ。電源が入っていないテレビの画面に。時間は朝8時ごろ。そんな時間、だれもいないはずなのに」
彼女はさらに続けます。
「画面に映っていたのは人間の胸から下だけ。上半身は映っていない。なぜか下半身だけが歩いているの。それを見て、怖いというより夢でも見ているような感覚だったわ」
私は全身に鳥肌を立てながら、半信半疑で、
「テレビの電源、じつは入っていたんじゃない? 画面に映っていたのは男性? 女性? 年代は?」
と、現実的な質問をしてみました。「間違いなく電源は入っていなかった。男性で、恐らく年配の人」
彼女の話に出てきたテレビは、使いはじめてからかれこれ20年近くがたつでしょうか。 頭をよぎるのは、電源の入っていないテレビの画面に映った男性がだれかという点です。
私にはそれがだれなのか見当もつきません。仮についたとしても口にはしなかったでしょう。なぜなら、彼女に妙な恐怖心を植えつけてはいけないからです。
じつはこのホームには以前から不可思議な噂があります。たとえば、「夜中に水道の水がザーッと流れる」といった噂。しかしそれは蛇口に手をかざす際に感知するセンサーにカルキが付き、誤作動を起こしただけ。「閉めたはずの書庫が自然に開く」といった噂の真相は、書庫の建つけが悪かっただけでした。
しかし、中には解明不能な、「朝方、開けた窓から黒っぽいモヤが出ていった」、「トイレで人の足首だけが見えた」、「夜、柱の影からだれかがこちらを見ていた」など、不可思議な話も耳にします。
今後、設備面での機能向上が進み、さまざまな最新センサーや、より高度な監視カメラが導入されるでしょう。そうなるとどんな解明不能な事象がそこに記録されるのか、興味があります。
電源の切れたテレビに写った男性の正体は今もわからずじまいですが、このホームを利用していた方で間違いないでしょう。
こんなささやか施設にもかかわらず、亡くなったのちも足を運んでくれているとしたら、それだけホームが心地いい場所だったということになるのではないでしょうか。
過去の名簿を掘りおこすことはしませんが、今後は亡くなられた方々に手を合わせる時間を作ろうと思います。さらには、現在、働くスタッフや清掃の方、またご利用者様のためにも、いい意味でのお祓いを行う時期が来ているのかもしれない。そんなふうに考えています。

(本投稿は月刊『ムー』2026年06月号より転載したものです)
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webムー編集部
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