最新研究が人間の“第7感”の存在を示唆! 直接触れず存在を認知できる「リモートタッチ」能力

文=仲田しんじ

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    人間にはすでに超能力が具わっていた!? 砂に埋もれた物体を指先で検知できる“第7感”が人間にあることが新たな研究で報告されている。

    人間に具わった「リモートタッチ」能力とは!?

     人間の五感とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚であるが、近年になって自分の身体が空間のどこにあるのか視覚に頼らず無意識のうちに把握する能力「プロプリオセプション(自己受容覚)」が第6感である可能性が示唆されている。では、それに続く“第7感”は存在するのか。

     英ロンドン大学クイーン・メアリー校とユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームが今年10月に学術誌「IEEE Explore」で発表した最新研究は、これまで動物界にのみ認められると考えられていた「リモートタッチ」と呼ばれる能力が人間にも具わっている可能性を示唆している。その名の通り、これは物体に直接触れることなく存在を感知する能力である。

    Wonita or Troy JanzenによるPixabayからの画像

     シギやチドリなどの鳥は海岸や干潟を歩いて、クチバシの先を砂地に突っ込んで器用にゴカイやカニ、貝など引っ張り出して捕食している。この時、鳥たちは目で獲物を探しているわけではなくリモートタッチの能力を発揮し、砂の下にいる餌となる生物を敏感に検知して捕えているのだ。

     そして驚くべきことに、この能力は人間にもあった。ロンドン大学クイーン・メアリー校の心理学上級講師で、同校の「Prepared Minds Lab」の所長であるエリザベッタ・ヴェルサーチ氏は今回の研究について「人間におけるリモートタッチの研究は初めてであり、人間を含む生物の知覚世界(受容野)の概念を変えるものです」とプレスリリースで言及している。

     研究チームは今回、2つの研究を行っている。1つは人間を対象とした研究、もう1つはロボットを対象とした研究だ。人間を対象とした研究では、地中に埋まっている物体からの触覚刺激に対する指先の感度をテストした。もう1つの実験では、触覚センサーを搭載したロボットアームと、長・短期記憶(LSTM)モデルを用いて物体の存在を検出するロボットが用いられた。

     人間を対象にした実験では、参加者は砂の下に埋もれている物体(立方体)を砂を撫でるだけで感知することができ、人間の手が予想以上に敏感であることが確認された。

     埋もれた物体の周囲にある砂のごく僅かな変化さえ感知できる人間の能力は、物理的な検出限界に近づいており、かつて考えられていたよりはるかに優れていたのだ。

     そして同様の実験がロボットアームでも行われた。研究チームは人間のパフォーマンスに匹敵する触覚センサーをもつにロボットにLSTMアルゴリズムを実装実装し、砂に埋もれた物体を検知させたのだ。

    画像はYouTubeチャンネル「PreparedMindsLab」より

    人間のリモートタッチ能力はロボットを上回る

     そして実験結果を比較すると、驚くべきことに人間はロボットを約30%上回る好成績を収めたのだった。人間が70.7%の精度を達成したのに対し、ロボットは誤検知が半数以上となり、全体的精度はわずか40%にとどまったのである。

    「この発見は、人間の触覚知覚を拡張するツールや支援技術の設計の可能性を切り開くでしょう」
    「考古学的遺物を損傷なく発見したり、火星の土壌や海底を含む砂地や粒状地形を探索するなど、繊細な作業を行うことができる先進ロボットの開発にも役立つ可能性があります」と、ロンドン大学クイーン・メアリー校先端ロボット工学研究所の学生であるチェンチー・チェン氏は説明している。

     人間の知覚を基準とすることで、エンジニアは視力が制限されている場所での探査、掘削、探索といった実世界の行為において、自然な触覚感覚を統合したロボットシステムを設計することができるのだ。

    congerdesignによるPixabayからの画像

    「この研究が特に興味深いのは、人間とロボットの研究が互いに情報を共有し合っている点です」
    「人間による実験はロボットの学習アプローチを導き、ロボットのパフォーマンスは人間のデータを解釈するための新たな視点を提供しました。これは心理学、ロボット工学、人工知能がどのように融合できるかを示す素晴らしい例であり、学際的なコラボレーションが根本的な発見と技術革新の両方を促進できることを示しています」と、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのロボティクス&AI准教授、ロレンゾ・ジャモーネ氏は指摘する。

     今回の研究は人間が砂の中に埋もれた物体を実際に接触する前に検知できることを明らかにすると同時に、触覚の検知範囲に関する理解を深めるものとなった。これまで人間には認識されていなかったスキルの定量的な証拠となり、また支援技術やロボットの触覚センシングの改良に向けた貴重なベンチマークとなる。

     触覚を遥かに超えた“第7感”とでも言うべき能力の存在が明らかになった今回の研究だが、そうとなればこのリモートタッチの能力を、トレーニングで高めることを考えてみても良いのかもしれない。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「PreparedMindsLab」より

    【参考】
    https://thedebrief.org/new-research-reveals-humans-have-a-hidden-seventh-sense-of-remote-touch/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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