正体はわれわれの祖先か、絶滅した異人類か? 獣人UMAビッグフット研究最前線/南山宏
2021年4月24日、アメリカで、森林に姿を消す巨大な獣人を女性が目撃するという衝撃の事件が起きた。獣人とは、もちろんビッグフットである。アメリカに限らず、古くから報告が続くビッグフット、そしてその近
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数多く存在するUMA(未確認動物)の中でも、インターネット上から流布したというめずらしいUMAがいる。謎の巨大生物「ニンゲン」だ。日本の南極観測船や漁船、アルゼンチンの貨物船など、数多くの目撃証言が残されているが、その正体とは⁉
日本のインターネット上に初めて登場し、世界へ流布していった謎のUMA(未確認動物)がいる。その名は「ニンゲン」。悪ふざけの命名ではない。世界のUMA研究家の間でも説明不要で通じる海棲巨大生物の名称である。
クジラなみに巨大で、体長は20~30メートル、あるいはそれ以上とも。一対ずつの上肢と下肢を持ち、体型が崩れた人間のような姿をしている。それが奇妙な名前の由来であり、「ヒトガタ」あるいは「物体X」「ヒト型物体」などとも呼ばれる。
目と口はあるが、鼻孔はない。体は真っ白で、皮膚はツルツル。おもに南極周辺の海域に棲息し、夜間に出現することが多く、悲しげな声で鳴くともいわれるし、テレパシーによって人間と意思の疎通を図れるともいわれる。
2000年代半ばら、その不気味で奇怪な姿の静止画や動画がネットの掲示板サイトで続々と公開された。さらに、それらの画像は海外のウェブサイトでも取り上げられて、ニンゲンの存在は一躍、世界に知られることになったのである。
ただし、ネット上で公開された画像の撮影日時、撮影場所、撮影者などの基本データはいっさい不明であり、信憑性には大きな疑問符がつけられた。ために、ニンゲンは一種の都市伝説の産物であり、電脳空間で創造された仮想動物にすぎない、というのが一般的な認識だった。
ところが、2005年にグーグル社が配布を開始したバーチャル地球儀ソフト=グーグルアースの登場によって事情は一変する。
周知のように、このソフトは人工衛星によって撮影された地球全域の衛星写真を閲覧できる。しかも興味深いことに、その画像にUFO、謎の地上絵、奇妙な巨大生物など説明のつかない不可思議な物体が写り込んでいることがある。
そんな画像のひとつに、UMA研究家の熱い視線が注がれた。問題の画像の座標は南緯27度36分14秒、東経15度29分20秒。具体的にはアフリカ大陸南西部に位置するナミビアの西海岸の沖合約470メートルの海域をさす。
その海域を超高高度から撮影した写真が、海遊中と思われる巨大な白い怪生物をかなり鮮明にキャッチしていたのだ。残念ながら画像が更新された際に、その姿は確認できなくなっている。
推定体長はおよそ19メートル。クジラやイルカなどの大型哺乳類でも、サメなどの大型魚類でもない。白い波の変形でもない。光や影のいたずらでもない。一見。巨大なクリオネを思わせる形状をした生物であり、下肢の部分は魚のように流線形をしているが、上肢の部分は両手を動かして泳いでいるように見える。
その怪生物が、じつは都市伝説で語られてきたニンゲンではないか、という声が、UMA研究家の間から出てきたのだ。
グーグルアースの画像であり、偽造や捏造はありえない。コンピューター・グラフィックなどを使ったトリックとも考えられない。かくて、ニンゲンはにわかに実在性を帯びてきたのだった。
ならば、この巨大な海棲生物は、本当にニンゲンなのだろか。
じつは、ニンゲンらしき謎の海棲巨大生物の目撃報告は1950年代ころから何度もなされてきた。日本の南極観測船や捕鯨船、漁船などが人間によく似た謎の海棲生物に遭遇していたのである。
事例をいくつか紹介しよう。
昭和32年(1957)秋、南極の昭和基地を目ざして東京・日の出桟橋を出航した第2次南極観測船「宗谷(そうや)」は、昭和基地の北方約200キロ地点の氷海で立ち往生をしてしまった。年末からおよそ1か月間、氷に閉じ込められたあとの昭和33年(1958)1月末、アメリカの砕氷艦「バートン・アイランド」に救援を要請する一方、自力での脱出を試み、2月6日、ついに外洋への脱出に成功した。
だが、プロペラは破損し、砕氷能力は大幅に低下している。しかも接岸に適している夏は終わろうとしていた。このままでは任務の完遂は不可能と判断した「宗谷」は「バートン・アイランド」に支援を再要請。2月7日、両船は会合し、砕氷艦の先導で再び昭和基地を目ざした。
その最中の2月13日。リュッツホルム湾の氷海を航行中、船橋にあった松本満次船長は、前方約500メートルの水面に浮上した黒い物体を目撃した。
刻限は午後7時ごろだったが、南極の季節は晩夏、白夜であり、視界は良好だった。
距離が次第に縮まり、300メートルほどになった。黒い物体はどうやら生き物らしい。松本は思わず驚愕の声を放った。
「あそこに何かいるぞ!」
「ドラム缶でしょう」
だれかが返した。先行する砕氷艦が破棄したドラム缶の誤認と思ったらしい。が、そうでなかった。距離がなおも縮まり、黒い物体の姿が次第に鮮明になっていく。
松本が再び大声で叫んだ。
「よく見てみろ。あの大きな顔や目玉がわからんのか。すごくでっかい動物の顔じゃないか!」
船橋にあった全員の視線が一点に集中する。頭部の大きさは70~80センチ。両目は大きく、耳は尖り、顔はまるでウシのようだ。胴体部分は海中にあるので全体の形や大きさは分明ではないが、全体が焦げ茶色もしくは黒褐色の体毛で覆われているらしい。背中にのこぎりの刃のようなヒレを目撃した乗組員もいる。
その間、およそ30秒。写真撮影をすべくカメラを取りに走った機関長が船橋へ戻ってきたとき、残念ながら、怪生物は水流へと消え去っていた。
クジラやアザラシ、セイウチなどではなかったと断言する松本船長は。当時公開されて大ヒットしていたゴジラ映画の第1作『ゴジラ』および第2作『ゴジラの逆襲』にちなみ、この怪物に「南極ゴジラ」の名を与えたのだった。
この南極ゴジラとニンゲンの特徴には、体毛の有無、皮膚の色などに明確な違いがあるものの、南極の周辺海域に未知の海棲巨大生物が生息している可能性を大きく示唆していよう。
次も日本人による目撃報告だ。
昭和46年(1971)4月28日。宮城県女川町のマグロ延縄漁船「第28金毘羅丸」は、ニュージーランド・サウスアイランド沖のリトルトン半島近くの海域で操業中だった。
正午ころ、前夜に沈めた延縄を巻き上げ中、縄が切れたためブイを捜していたところ、突如、近くの海面に奇妙な物体が出現した。なんと、それは奇怪な生物の頭部だったのだ。
褐色がかった灰色で、海上への出現部の大きさは約2メートル。両眼は直径約15センチと巨大で、潰れた鼻が特徴的だった。乗組員のひとりが銛で突こうとしたところ、水中へ逃れていったという。
相貌がカバに似ているということで、のちに「カバゴン」と名づけられたこの怪生物は、木村実船長以下26名のクルーが、およそ30メートルの距離から同時目撃しており、信憑度はかなり高いといっていいだろう。
平成11年(1999)10月末にも、日本の第43次南極観測隊が南氷洋で謎の巨大怪生物を目撃。接近を試みたが、船にトラブルが発生して調査を断念したという。
平成25年(2013)2月17日前後(正確な日にちは不明)には、鹿児島県奄美大島安木屋場の海岸に巨大な白い肉塊が漂着して大騒ぎになった。全長はおよそ6メートル。遠目にはフワフワしているように見えるが、表面は筋繊維質のようなもので覆われていた。明らかに有機体であり、悪臭が凄まじい。何らかの巨大生物の死骸のようだが、地元住民たちは「こんなもの見たことがない」と口を揃えた。
その写真を見た研究家が「ニンゲンの死骸ではないか」という声を上げたが、残念なことに科学的な調査・分析は行われなかった。
とまれ、ニンゲンはインターネットに登場する以前から、幾度となく目撃されていたのだ。それどころか、およそ900年前の平安時代末期にすでに目撃されていたらしく、『今昔物語集』にも記述が見られる。
藤原信通が常陸国(現・茨城県)の国司として任地にあったころというから、西暦1100年代の初めころのこと、東西ノ浜という海岸に、全長5丈(約15メートル)もの巨大の死骸が漂着した。頭部、右手、左足はサメなどに食い千切られたのか失われていたが、巨大な白い体が砂上にうつ伏せ状態で横たわっていた。
国司は京都の中央政府へ報告しようとしたが、反対者が出た。奇異の事件なれば調査のために官吏が下向してくるのは必定で、面倒なことになりかねない、というのがその理由だった。国司もそれに同意し、事件は秘匿されることになったが、死骸が放つ腐敗臭は日ごとに強烈になり、東西ノ浜から12町(1町約108メートル)以内にあった集落の住民はことごとく逃げ出してしまった。ために、この怪事件は京都の人々の知るところとなった、という。
ちなみに、ムーでお馴染みのサイエンス・エンターテイナー飛鳥昭雄は、それが海の巨大妖怪ウミボウズ=ニンゲンの死体だった可能性が高いと主張している。
以上、主として紹介してきたのは日本人による目撃例だが、むろん外国人の目撃報告もある。
2011年9月、全身が真っ白の怪生物が北欧のスウェーデン沖に出現。調査すべくボートで接近したところ、水中深く潜水していったため、それ以上の追跡はできなかった。
正体は不明ながら、ウミボウズのような形状の怪生物の写真撮影に成功しており、ニンゲンだと断を下している研究家もいる。
1970年代、旧ソ連がニンゲンと同種と思われる海棲巨大生物の捕獲に成功し、極秘軍事施設で研究していたというまことしやかな噂話もある。ただし、未確認情報であり、真相は定かではない。
旧ソ連だけではない。前出の飛鳥昭雄がハワイ在住のUMA研究家エドワード・J・スミスから得た極秘情報によると、アメリカ軍もまたニンゲンの幼体の捕獲・飼育に成功しているという。
その大略はこうだ。
1999年1月10日。アルゼンチン軍兵士が乗船する南極海域貨物船「マルコス」が南氷洋のホープベイ沖を航行中、突然、船体に衝撃が走って速度が落ちた。スクリューに何かが絡まったらしいが、航行に大きな支障をきたすほどではなく、速度はすぐに回復した。
異変が起こったのは、その直後だった。船から数百メートルの前方海上に、突如、白い巨大物体が出現したのだ。
体長は50メートル以上。クジラか。いや、そうではない。よく見ると、頭部の形状が違う。ばかりか、顔の両側から太い上肢のようなものが伸びている。ヒト型の巨大怪生物=ニンゲンだ。
未知生物との遭遇、と直感した乗組員は、急遽、追跡・調査を決断。針路を怪生物方向に定めて追いかけはじめた。それに気づいたかのように、ニンゲンの泳ぐ速度が急に上がった。「マルコス」も逃がしてはならじ、とばかりにスピードを上げる。直後、にわかには信じがたい光景が現出した。
ニンゲンは上体を起こすや、そのまま空中へ飛翔。徐々に高度を上げて遠ざかり、ついには虚空の彼方へと消え去ったのである。
しかし、収穫が皆無だったわけではない。ニンゲンが「マルコス」のスクリューに接触した際に千切れた体の一部と思われる巨大な白い肉片を回収。さらに、事件が起こった間の状況の一部始終をビデオカメラに収めることにも成功したのである。
衝撃的映像と肉片はアルゼンチン政府のもとへ搬送され、さらにアメリカ政府の手へ渡った。そしてその後、アメリカ軍はニンゲンの捕獲に乗り出し、幼体を生きたまま捕らえることに成功したのだという。
それだけでも驚愕すべき出来事だが、さらに驚くべきはニンゲンの生態だ。ニンゲンは体を発光させる能力を備えているばかりか、脳神経の中枢部でプラズマを発生させ、体全体をプラズマで包んで空中飛行しているらしいのだ。
そう主張する飛鳥は、プラズマで飛翔するUMAとして有名な「フライング・ヒューマノイド」の一部はニンゲンかもしれない、との見解を示している。
では、ニンゲンの正体はいったい何なのか。前出のUMA研究家スミスは、ウミウシ類の軟体動物であると考えているという。
奇形の水頭症のクジラ説もある。海洋へ破棄された重金属汚染水に汚染された小魚やオキアミを食べたクジラが奇形になった、という説だ。
ほかに、アルビノのクジラ説も唱えられている。アルビノとは、遺伝子の突然変異などが原因で先天的にメラニン色素が薄く、体色が白色になることをいう。そのアルビノが発現したクジラがニンゲンである、という説である。
むろん、未知の海棲巨大生物説を主張する研究家もいる。ニンゲンは南極周辺の海域に棲息すると前記したが、必ずしもそうではなく、事実、ナミビア沖、スウェーデン沖。奄美大島近海にも出現した。
地球表面積の3分の2を占め、最大深度が1万メートルを超す海洋は、宇宙よりも探査が進んでいないといわれる。つまり、海洋生物の生態はごく一部しか解明されていないのであり、未知の生物が海面下に人知れず潜んでいたとしても何ら不思議ではないのである。
参考資料=「未確認動物UMAの謎」(並木伸一郎監修/ポプラ社)、「南氷洋のUMAニンゲンの謎」(あすかあきお/「月刊ムー」329号付録)、「南氷洋のUMA『ニンゲン』が空を飛んだ‼」(飛鳥昭雄+三神たける/「月刊ムー」354号所収)ほか
(月刊ムー2014年11月号掲載)
泉 保也
「世界ミステリー大全」を担当するベテランライター。
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