<読者投稿>ホテルに出現した「メイド服の女」のお届けもの

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    ラブホテルの内装工事中に…

    ― 2010年頃・仙台市某ラブホテル 客室貼り替え工事記録 ―

    2010年頃、仙台市内のラブホテルにて、壁紙貼り替え工事に従事した。
    現場は高層階。予定時間を過ぎても客が退室せず、通用口にも入れないまま、車内で1〜2時間ほど待機。
    元請けから「客が帰った」との報告が入り、慌ただしく入室。清掃も入らぬまま、退室直後の客室へ踏み込んだ。

    ペットボトル、ティッシュ、湿った空気。
    “愛の名残”と呼ぶには生々しすぎる室内。
    職人3名で、既存の壁紙を剥がし、下地処理に取りかかった。

    作業開始から約1時間後、室内の電話が鳴った。
    間隔を空けて、計3回。いずれも同じ声、同じやり取りだった。

    「お呼びでしょうか」
    「いや、工事してるので呼んでません」

    電話を取ったのは、3回とも自分だった。
    他の職人は気にも留めず、「誤作動だろ」と一蹴した。

    その後、ドアホンが鳴る。
    ドアを開けると、白いメイド服姿の女性が銀の器(クロッシュ)を持って立っていた。
    顔は覚えていないが、どこか人形のような可愛らしさがあった。

    「ご注文の品、お届けにあがりました」

    誰も注文していない。フロントにも確認が取れなかった。
    工事中の散らかった室内を見せ、「この状況だよ」と伝えると、彼女は一瞬沈黙し、

    「失礼しました」

    と言い残し、銀の器を持ち帰った。

    その時は仕事中だったので気にせず作業に戻ったが、何かがおかしい。
    電話を取ったのも、メイド服の女性を見たのも、自分だけだった。
    他の職人は洗面所やトイレにいて、誰もその姿を見ていない。

    通常、客室への配膳は廊下にワゴンで置かれるはず。
    なぜこの部屋だけに、直接“届けに来た”のか。
    そして、なぜこの部屋だけが貼り替え対象だったのか。

    後日、職人仲間に話すと「銀の器の中身は何だったのか?」という疑問が出た。
    怖い表情ではなかったが、何かが“確かにあった”気配だけが残る。

    都市の断面に立った者だけが、見たもの。
    メイド服と電話の声は、語り部にしか届かない“呼び声”だったのかもしれない。

    (語装堂 熱海)

    ChatGPT作成のイメージ画像。

    〈編集部より〉
    なるはずがない電話、来るはずがない訪問、なぜかメイド服。異界の使いと思われますので、お届けものを受け取らなくてよかったです。

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    webムー編集部

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