新型コロナウィルスとユダヤの悪霊ディブク/MUTube&特集紹介 2024年3月号
COVID-19という名前に隠された呪いと陰謀を三上編集長がMUTubeで解説。
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超常現象の宝庫アメリカから、各州のミステリーを紹介。案内人は都市伝説研究家の宇佐和通! 目指せ全米制覇!
SNSは、今の時代の都市伝説的な話にとって理想的な媒体にほかならない。アップされた瞬間から、時間も国境も関係なく爆発的な速度で拡散する。この原稿で紹介する話は、SNSフォークロアの典型的な例ということができると思う。
舞台はカリフォルニア州のほぼ中心に位置するフレズノだ。サンフランシスコやロサンゼルス、あるいはサンディエゴといった州内の大都市でも、サンノゼのようなコンピューター産業の中心都市でもない。
サンフランシスコ都市圏とロサンゼルス都市圏の中間に位置し、ヨセミテ/セコイア/キングス・キャニオン国立公園へのアクセスの良さで知られる観光拠点都市として知られるフレズノは綿花やプルーン栽培が有名で、インターステート・ハイウェイ(州間高速道路)が通っていない都市の中では最大規模であることでも知られている。
SNS由来の情報のやりとりをそれほど頻繁にしないという人でも、「フレズノ・ナイトクローラー」という言葉を耳にしたことがあるはずだ。“夜に這いまわるもの”という意味の名のクリーチャーの出現が初めて確認されたのは2007年だった。姿は細長い脚が2本あるだけで、上半身や腕はないように見えるため“歩くズボン”と形容されることが多く、。当初は未確認生物というニュアンスで受け容れられていた。
ビッグフットやネッシーなど超有名なクリプティッドほど知名度は高くないが、ナイトクローラーはそのシンプルかつ異様な姿から各種の掲示板で爆発的に拡散し、ミームやアート、さらにはグッズという形にまで進化していった。
物語の発端は、カリフォルニア州フレズノに住む男性が、自宅の庭に設置した防犯カメラが撮影した映像に奇妙なものが写っているのに気づいたことだった。彼は夜中に犬が頻繁に吠える原因を突き止めようと監視カメラを設置し、録画して映像を調べていたが、その中に白っぽく細長い足だけのような謎の生物が2体、庭を横切る姿が収められていた。この映像は地元テレビ局で紹介され、その後パラノーマル・リサーチチャーのビクター・カマチョの手に渡り、そこから大きな話題となった。
2011年にはヨセミテ国立公園に設置された監視カメラがナイトクローラーに酷似したものをとらえた。2体の生物が林道のような場所をゆっくりと移動し、一体は明らかにもう一体よりも小さかった。この映像によって、ナイトクローラーは一時的な都市伝説ではなく、未確認動物として注目を集めるようになった。
フレズノとヨセミテ以外にも、国内はモンタナ州、そして海外ではポーランドなどからもよく似た内容の目撃例が投稿されたが、低品質の映像や未確認の目撃証言に基づくものばかりで、正直インパクトには欠ける。
ナイトクローラーはおおむね1.5メートルから2メートル程度の高さがあるとされ、そのほとんどが脚の長さで占められている。体幹部や腕はなく、色は白~灰色で、滑るように移動する。ペアで行動することが多く、親子のような関係を思わせる大小2体で出現する傾向がある。夜間にゆっくり移動する様子が映像に記録されるが、実際に目撃したという証言はほとんどない。
その異様な形状から、地球外生命体であるという説、そしてネイティブ・アメリカンの伝承と結び付ける仮説も浮上したが、こうした方向性に関する裏付けは確認されず、後年になってアイデアそのものが間違っていたことが明らかになっている。ナイトクローラーの映像は、以下のような自然現象や動物の誤認である可能性があるとされる。
*後ろ脚で立ち上がったシカ
*夜間に歩く鳥類(例:ツル)
*未確認の霊長類の可能性
スケプティック(超常現象の懐疑派)からは、ナイトクローラーは映像加工や人形を使ったイタズラである可能性も指摘されている。人気ユーチューバーのキャプテン・デリュージョンは、2012年にナイトクローラーの映像を簡単に再現できることを実演して見せて話題となった。また、アメリカのテレビ番組『Fact or Faked: Paranormal Files』でも検証が行われ、決定的な結論には至らなかったものの、再現可能な映像であることが明らかになった。ナイトクローラーの映像はいずれも夜間の赤外線カメラによってとらえられたものであり、解像度の低さや光の反射、映像ノイズが原因で実際とは異なる形に見える「パレイドリア(錯視)」であるとも考えられている。
地元では、ナイトクローラーを町の誇りというニュアンスで扱う住民もいるようだ。「ArtHop」というイベントでは、ナイトクローラーをモチーフにしたTシャツ、ステッカー、ぬいぐるみ、イラストなどが販売され、かなりの売り上げを記録したそうだ。とあるアーティストはこう語る。「フレズノがナイトクローラーで有名になるなら悪くない。かなり変だけど、独特な魅力がある」
他のクリプティッドと異なり、ナイトクローラーは恐怖を感じさせる要素が少なく、むしろかわいらしい。その外見もSNS時代の空気にマッチしたのかもしれない。奇妙でありながら親しみやすく、多くの人々が抵抗なく共有しやすい存在となった。
また、バックストーリーがまったくなく、ネットロアという同じジャンルの有名キャラであるスレンダーマンとは対極に位置する存在だといえる。スレンダーマンはアメリカのティーンエイジャーなら知らない者がいないほどの知名度で、その影響を間違った形で受けてしまった12歳の少女2人が共謀し、友人を森の中に誘い込んで刺殺するという事件まで起きている。しかしフレズノ・ナイトクローラーに関しては、ゆるキャラ的な見方をされることが多い。
害をあたえる存在とはとても思えないナイトクローラーは、今日的なインターネットロアのキャラとして残り続けていくだろう。それに向けられるネット民たちの好奇心が絶えることもしばらくはないはずだ。
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