幻の祝日「神武天皇御東征日」に改暦の混乱を見る! 紀元節を現代に位置付ける政策の痕跡/鹿角崇彦
2月11日は「建国記念の日」。明治時代、この祝日に代替しうる、とある記念日のプランが立案されていた。幻のオルタナティブ紀元節と、さらに幻に終わったある祝日案とは。
記事を読む
「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。
若杉良作 著
天皇制の空白にあるタブーに挑むノンフィクション
一見何とも剣呑な標題であるが、その檄を飛ばしているのは当然ながら著者自身ではなく、本書に登場する有象無象の奇人のひとりである。
著者によれば、天皇なる存在を天皇たらしめているものは、ひとえに「宮中祭祀」であり、それはいいかえれば「霊との対話」である。
すなわち天皇とは「見えざる世界に支えられている存在」に他ならないのだ。それゆえに、そこには「神秘的なもの、不可解なものを許容する余地が生まれ、善意悪意を問わず、そこに付け込む者たちが現れる」。
本書は、近代の宮中を舞台に繰り広げられた、知られざる霊的暗闘に光を当て、あますところなく描き出した渾身のノンフィクション。宮中祭祀への潜入を図った「魔女」、宮中に最接近した「手かざし医師」、そして本朝を侵略する魔物との対決を天皇に促した「エリート軍人」等々、近代史の暗部に暗躍した魔人たちの謀略の数々が、赤裸々に活写される。
著者・若杉良作氏は今は亡き総合月刊誌「新潮45」の最後の編集長であるが、「若き日のほんの一時期」に本誌月刊「ムー」の編集にも携わっていたという。なるほど氏の怜悧な霊的感受性は、そのような数奇な経歴にも呼応するものであったのか。
なお、当然ながら戦前の資料などは、原文のママの文語体で、旧仮名遣いで引用されている。いやしくも、一端の読書家を自認する人にとっては、それもまたひとつの知的愉悦であろう。
(月刊ムー 2025年9月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
関連記事
幻の祝日「神武天皇御東征日」に改暦の混乱を見る! 紀元節を現代に位置付ける政策の痕跡/鹿角崇彦
2月11日は「建国記念の日」。明治時代、この祝日に代替しうる、とある記念日のプランが立案されていた。幻のオルタナティブ紀元節と、さらに幻に終わったある祝日案とは。
記事を読む
ナマのオカルトで世界を批評せよ! 「復刊地球ロマン」による”平地人”へのメッセージ/ムー前夜譚(3)
70年代の大衆的オカルトブーム最後の花火として1979年に打ち上げられた「ムー」。ではそもそも70年代に日本でオカルトがブームとなった背景は? 近代合理主義への対抗が精神世界という言葉以前の現実問題だ
記事を読む
近江の「龍の骨」は皇室に献上され、博物館に収蔵された!? 奇妙な化石を巡る信仰と伝説の現在地/鹿角崇彦
江戸時代の琵琶湖畔で、幻の生物・龍の骨が発掘されていた! その骨は現存し、今でも博物館で保管されているという。
記事を読む
「新 ぼくらの昭和オカルト大百科」/ムー民のためのブックガイド
「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。
記事を読む
おすすめ記事