契約の聖櫃アークをCIAが捜していた！！／MUTube＆特集紹介 　2025年7月号

トランプ政権で判明した秘密プロジェクト

　契約の聖櫃アークは、ユダヤ教徒のみならず人類にとって最も神秘的な聖遺物のひとつであり、何世紀にもわたって神学、考古学、そして陰謀論の中核的トピックでありつづけている。
　第一義的な意味合いでは十戒が刻まれた石板の容器ということから、数えきれないほどの宗教的文献、伝説、知的探求の対象でもある。また、保管場所はおろか実在するのかどうかも明らかになっていない事実が、今も多くの人々の興味をかき立てる大きな要因なのだろう。
　そして今、トランプ大統領が巻き起こす機密解除の流れに乗ってなのか、1980年代終わりにCIA （米国中央情報局）によって作成された書類の内容が明らかにされ、話題になっている。聖櫃のありかを探るプロジェクトについての情報だ。しかもこのプロジェクトは、リモート・ビューイング・テクノロジーを駆使して行われた。アメリカの情報機関が、きわめて特殊な方法で聖遺物を捜していた事実がつまびらかにされている。
　聖遺物としてだけではなく、戦略的に重要な意味をもっていた可能性や所在をめぐる地政学的陰謀論など、聖櫃に関する話のスコープは広い。CIA は古代の謎や潜在的な未知の力とどのような形で関わっていたのか。

『旧約聖書』に記されたアークの行方

　聖櫃についての詳しい文章が記されているのはヘブライ語聖書で、「出エジプト記」に最初の記述が出てくる。モーセが神から受けた指示に従って作られた聖櫃には、十戒が刻まれた石板、アロンの杖、そしてマナの壺が収められた。神聖なものを保管しておくための容器という意味合い以上に、神と直接つながるための媒体として描かれており、川を分ける力、戦いに勝利をもたらす力、神の怒りを引き起こす力をもつ神聖なものとされていた。
　聖櫃の所在は、紀元前587年のバビロニアによるソロモン神殿の破壊以降わからなくなった。ある伝承においては、神殿の司祭たちによって隠されたとされている。別の文献では、エチオピアに持ち去られたとされている。さらにはネボ山、または「神殿の丘」の地下の秘密の部屋に安置されているという説もある。ただ、数多くの文献の内容はいずれも曖昧だ。
　CIA が聖遺物に興味を抱いた理由は何だったのか。冷戦構造のさなか、そしてその後の時代急速に膨張した広範な地政学的関心の一環として、CIA は古代の遺物や秘教的な伝統に関する情報の収集に努めていた。特に中東や北アフリカなどの戦略的地域では、こうした傾向が顕著化した。古代遺跡に対する情報収集活動は考古学的、宗教的、政治的な関心がある領域と重なることも珍しくはなかったようだ。

リモート・ビューイングによるアーク探索

　そして2025年3月15日、1980年代終わりに作成されたとあるCIA 文書が機密解除扱いとなった。1980年を通してさかんだった「プロジェクト・サンストリーク」という極秘プロジェクトの一環として行われたリモート・ビューイングによる聖櫃の探索に関する詳細だ。基本的性質は、冷戦期の米国諜報機関が非従来型の情報収集法を模索していくプロセスの一環として実施されたものであり、実用性に関してはかなりの自信があったことがうかがえる。
　1980年代、CIA と国防情報局（DIA）はリモート・ビューイング・テクノロジーの実用化を目指し、さまざまな方向性の実証プロジェクトを実施していた。このプロジェクトで用いられたのは、地理座標のみを手がかりに遠隔地のターゲットを透視するコントロールド・リモート・ビューイングという手法だ。そもそもソ連の軍事施設の場所を特定したり、行方不明者の探索に応用したりというケースが多かったが、1988年12月5日、聖櫃をピンポイントのターゲットとして超実用的な透視実験が行われた。
　この文書には〝リモート・ビューワー＃32〟が箱を「木製で、金と銀の装飾が施されており、6枚翼の天使像が刻まれた二重構造の容器」と形容したと記されている。場所は「中東の地下深く、湿った暗闇に隠され、アラビア語を話す白衣の集団に囲まれた地域」と具体的な形で示されている。
　さらには、「許可なき者が開封しようとすると、未知の力をもつ守護者によって破壊される」という警告めいた表現もある。この部分とよく似た文章が記された本があることにも触れておかねばならないだろう。

（文＝宇佐和通）

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