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カルロ・ロヴェッリ 著
ブラックホールはホワイトホールへと遷移する
この邦題だけを見れば、何とも剣呑で意味不明であるが、イタリア語の原題は「Buchi bianchi」つまり「白い穴」。すなわち本書の主題は、ブラックホールと対を成す概念ともいうべき「ホワイトホール」である。
著者のカルロ・ロヴェッリ氏は「ホーキング博士の再来」と称される天才理論物理学者。相対性理論と量子力学を統合して量子重力理論を構築する試みとして「ループ量子重力理論」を提唱、現在はフランスのエクス=マルセイユ大学で、量子重力理論の研究チームを率いている。著書の『時間は存在しない』(NHK出版)は、かつて本欄でもご紹介した。
同書を既読の方は先刻御承知であろうが、著者ロヴェッリは理論物理学者であると同時に、また詩人でもある。その才能は、本書においても遺憾なく発揮されている。何しろ先端物理学の啓蒙書であるというのに、いたるところにダンテ・アリギエーリの『神曲』からの引用がちりばめられ、瑞々しい文体で、壮大な物語が組み立てられてゆくのである。
近年の天文学の進歩により、ブラックホールの存在は証明されて、観測もできるようになった。だがホワイトホールのほうは、あくまでも仮想上のものであり、実在はしていない。だが著者の理論によれば、そのブラックホールはいずれ、ホワイトホールへと遷移するというのだ。これが、邦題の意味である。
文系の人にこそ体験していただきたい、美しい物理学書である。
(月刊ムー 2025年5月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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