未解読資料にデータサイエンスで挑む「ヴォイニッチ写本」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。

    ヴォイニッチ写本

    安形麻理/安形輝 著

    謎の写本に最新の研究手法で取り組んだ一冊

     本誌の読者にはお馴染みだろうが、『ヴォイニッチ写本』とは、摩訶不思議な挿画と解読不能な文字で書かれた、謎の中世写本である。1912年に古書蒐集家ウィルフィリド・ヴォイニッチによって、イタリアで発見されてから100年以上の間、さまざまな研究者がそれぞれの手法でこれに挑んできたが、その内容は依然として解明されていない。中には、あまりの難物ぶりに、実は無意味なデタラメとの説も出たほどである。

     本書は、この謎の写本に「データサイエンス」という最新の研究手法で真正面から取り組むという、何とも魅惑的な試みである。
     ふたりの著者のうち、安形麻理氏は慶応大学教授、専門は書誌学。一方輝氏は亜細亜大学教授で、図書館情報学、データサイエンスの専門家。 この専門家コンビが、「データの類似度に基づいて対象をグループに分ける機械学習の一種」であるクラスタリングを駆使して、鮮やかに分析していく様はまさに圧巻。

     むろん、あくまで一般向けの教養書であるから、ヴォイニッチ写本とは何かに始まり、これまでの研究史もわかりやすくまとめられているので、本書一冊でヴォイニッチ写本に関しては必要十分といえよう。
     巻末には著者らと、あの荒俣宏氏の鼎談も収録。荒俣氏の博覧強記が炸裂する様は惚れ惚れする。
     なお、本書の内容に関しまして、評者は個人的にものすごく勉強になりました。ありがとうございました。

    講談社 1485円(税込)

    (月刊ムー 2025年3月号掲載)

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