世界初、夢の中での対話実験に成功! 人類のコミュニケーションに革命がもたらされる!?
とある企業が世界で初めて成功したと主張する「夢の中での対話実験」。事実であれば、まさに革命的な出来事だ!
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タコは賢いから保護しなければならない――海外で盛り上がるそんな風潮は真っ当なのか? そもそも本当にタコは他の動物と比べて賢いと言えるのか? 科学的視点で紐解く。
今年9月末、米カルフォルニア州議会がタコの養殖を禁止する法案を可決した。法案を提出したスティー・ベネット議員によると、高い知能をもつタコを養殖することは、過大なストレスを与えるため虐待に当たるという。さらに、まだタコは牛豚と違って大規模な産業化がされていないため、止めるなら今しかないという理屈だ。
まだタコの養殖は実現しておらず、今まさに日本が先陣を切って研究中だ。タコツボは漁であって、タコツボでタコを飼っているわけではない。それに、牛豚を引き合いに出すのも不可解だ。知能で生き物に優劣をつけるのは、優れた者だけ生きればいいという優生思想だろう。
正味な話、多くの家畜は頭がいい。サイエンス誌に掲載された家畜生物学研究所 (FBN) のレポート「What are farm animals thinking?(農場の動物は何を考えている?)」によると、豚は85%の確率で部屋に閉じ込められた他の豚を助けるためにドアを開けてやり、牛は犬のようにトイレを覚え、ヤギは人間のジェスチャーを理解したり、表情を読み取って怒っているか機嫌がいいのかを区別する。ヤギの記憶力を試験すると、28個の記号の順番を覚え、その記憶は数週間後でも持続していた。これは霊長類、チンパンジーやゴリラと同レベルだという。
米パデュー大学動物福祉科学センターやペンシルバニア州立大学などでは、知能を調べるために豚にテレビゲームをプレイさせている。ジョイスティックを鼻で操り、画面のカーソルを動かして目標にぶつけると、おやつをもらえるルールだ。豚は難なくルールを覚え、成績も一定まで上昇した(2週間ほどで成績は下降を始めた。豚がゲームに飽きたらしい)。
現在、牛豚といった家畜の知能は犬と同程度で、人間に換算すると3~5才児相当と考えられている。知能が低いため自分がどこにいるかわからず、囲いの中の生活や不潔さもわからないという考えは、牛豚にはまったく当てはまらない。賢い動物である犬を食べるなんて信じられないというなら、同程度の知能がある牛や豚を殺して食べていいのだろうか?
では、タコは本当に頭がいいのか? タコはビンの蓋を開けてエサを取り出すことができる。道具を使うという点ではチンパンジー並みの知能といえる。人間の顔も識別するし、魚を猟犬のように使って狩りをすることもわかった。
ポルトガルのリスボン大学とドイツのマックス・プランク動物行動学研究所によると、タコは肉食性の魚を率いて移動し、魚が獲物を見つけるとタコが巣から追い出し、魚とタコで獲物を分け合って食べるという。狩りに協力しない魚は、タコがぶん殴るというから面白い。
そう考えるとタコは随分と賢いようにも思えるが、タコの脳の神経細胞は約5億。これは犬の脳の神経細胞とほぼ同数だ(人間の脳の神経細胞は約1000億)。ただし、タコの脳は中心に1つと8本の腕にそれぞれ1つ、全部で9つもある。人間の脊髄反射より、もっと高度なレベルの反射が彼らの腕には具わっているが、その分、一つずつの脳は小さくなる。
また、動物の知能を測る基準に「鏡像認識」がある。鏡に映った自分の姿を見て、自分だと認識する能力だ。犬や猫が鏡を見て、敵だと思って吠えたり威嚇する姿を見ると、犬猫の認識力はそれぐらいなのかと思うが、魚にも鏡像認識はあり、体にペンで模様をつけて鏡を見せると、模様をとろうと体を壁にこすりつけるそうだ。じゃあ、犬猫の知能は魚以下か? そう単純なものではないし、犬猫も数回で鏡像認識を身につける。タコも鏡像認識はあるが、だから賢いとは簡単には言えないのだ。
知能の高い低いで生物を判断することは、非常に危険だ。
ハチやアリは高度な社会性を持ち、数学を理解しているかのような美しい巣をつくるが、あれは物理法則にしたがった結果であり、本能らしい。世代間で培われた学習の成果ではない。では、彼らは生きた機械でしかなく、個性はないのかといえば、そんなことはない。マルハナバチはおもちゃのボールを置いておくと転がして遊ぶ。遊んで楽しむ知恵があるのだ。機械はおもちゃで遊ばないだろう。
知能で線を引き、知能が低い生き物は食べていいと言い出すと、牛豚どころか魚もアウト、虫もアウトである。だから動物愛護主義者はベジタリアンばかりなのかと思うが、実は植物にも知性があるらしい。
昆虫に葉や身をかじられた植物が警戒物質を出すと、他の植物もそれに呼応し、全体で身を守ろうとすることが知られている。コナガという害虫に襲われた植物は、コナガサムライコマユバチというコナガの幼虫に卵を産み付ける天敵を呼び寄せる。植物が殺されることを理解し、身を守るために助っ人を呼んでいるのだ。
植物には痛みなどの感覚もないのに? そうではない。彼らは痛みを感じる。イスラエルのテルアビブ大学の研究で、枝を切り落としたり、水を与えないなどの過度なストレスをトマトやタバコに与えると、超音波の悲鳴を上げることがわかった。トウモロコシや小麦などでも同様の悲鳴が確認され、どうやら植物は痛みやストレスを感じ、それを植物同士で伝え合っているのだ。
さらに、植物は育児まで行う。加ブリティッシュコロンビア大学のスザンヌ・シマードによると、森林がコンピュータネットワークのようにノード(結束点)を持つ巨大な根のネットワークを作り、ノードに立つ老木(=マザーツリー)を中心に栄養や水、恐らくは情報もやり取りしているという。日陰で芽を出した木には、マザーツリーから養分を与えるように木々に指令が送られ、彼らは幼木を育てるのだ。
同族の樹木は助け、違う種類の樹木は見捨てる場合もあるというから、人間とは違うものの、植物には知能があると言っていいのではないか。
植物に知能があると考える科学者は増えており、いずれ多勢となるだろう。そうなった時、動物愛護主義者は何を食べるのか。カビのような粘菌さえ、複雑な経路を最短距離で結ぶ、ある種の知性を持つことを北海道大学の研究者が発見している。
日本人は木々や岩を神と見なしてきたが、それだって無知蒙昧だと切って捨てられない。岩に知性がないと誰に言えるだろう。地球だって意識があるのではないか。あまりにスケールが違うために、人間ごときにはわからないだけなのではないか。
賢いもの、知恵あるものを食べていけないのなら、私たちは餓死する。だから、生きていくために私たちは食べなければならない。知性ある生き物を殺し、食べて生きる。それを仏教では業と呼ぶ。業と向き合い、慰霊碑を立てながら命を食べてきた日本人の感性は、恐らく生命の本質を突いているのだ。タコ焼きはおいしい。私たちは「いただきます」と言って感謝して食べよう。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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