凶暴すぎる未知の野獣「グラワッカス」の謎! 米コネティカット州の住民が90年怯えるモンスターの正体とは!?

文=ブレント・スワンサー

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    ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!

    未知の野獣「グラワッカス」

     奇妙な生き物がどこからともなくやってきて、人々に恐怖を与えてパニックに陥れることがある。アメリカのコネティカット州にも、暗闇から現れた謎多き獣の話が伝えられている。

     1938年の冬、同州グラストンベリーの田舎町で不思議な話が流れ始めた。家畜やペットなどの動物が、引きちぎられたり、引き裂かれたりして死ぬ事件が相次ぎ、その地域の薄暗い森から「血も凍るような悲鳴」が聞こえるというのだ。それから間もなく、雪原で大きな謎の足跡も発見され、実際にその獣を見たという目撃証言も飛び交い始めた。獣は体長約1.5メートル、体は褐色で、長くふさふさした尻尾をもっており、犬・猫・熊を合わせたような巨大生物だという。目は燠火(おきび)のように光っていたという報告もあり、その大きさの割には非常に足が速かったと言われている。以後、この奇妙な捕食生物の恐怖が町を覆った。

     怯える地元の人々の話がニュースに取り上げられ、騒ぎが拡大するのに時間はかからなかった。謎の獣は「グラワッカス(Glawackus)」と呼ばれるようになったが、「グラ」はグラストンベリーを、「ワック」は奇抜な、「ウス」はラテン語の専門的な響きを持つ接尾辞である。

    ハンターたちの証言も一致せず

    グラワックス狩りが行われたことを報じる1939年の新聞

     そして1939年1月14日、訓練された猟犬を連れた狩猟隊が初めて「グラワッカス」を探しに出かけたが、なにも見つけることはできなかった。ハンティングは何度も行われ、その生物を撃ったが外れたという報告や、犬が何か大きな生物を追いかけたが、怖くて追跡を続けられなかったという報告もあった。ハンターが勇敢な女性を暗い洞窟に下ろし、獣をおびき寄せようとしたケースもあるという。

     このような状況が続く中、ヤギ・ヒツジ・牛・ペットが不審死を遂げる事件は続き、さまざまな憶測が飛び交った。マウンテン・ライオンかオオヤマネコではないかという説もあれば、1938年のハリケーンの後に動物園から逃げ出したヒョウやライオンではないかという説、さらには狂犬病にかかった犬ではないかという説もあった。この地域一帯で狩りは続けられ、現地『クーラント』紙のニュース記事にはこんな刺激的な報告が掲載されたこともある。

    「この生物を見た唯一のハンターは、ハートフォード・ウィリアム・F・ボンブロアだ。ダイヤモンド湖の近くの荒野にいたボンブロアは、ショットガンを構えて発砲。驚いた生物が雪のしぶきを蹴散らしながら杉林に逃げ込んだとき、12ゲージの弾丸は朽ちた木の切り株に食い込んだ」

    間隔を置いて再発する「グラワッカス」騒動

    グラワックス騒動を報じる新聞記事

     1939年7月、熊の罠にかかった茶色い大型犬がハンターに殺されたと報じられた。その犬は非常に凶暴であったため、生かしておくことはできなかったという。するとその後、謎の獣による襲撃や目撃情報は激減したことから、『クーラント』紙は次のように報じた。

    「凶暴な大型犬の死後、グラワッカスは姿を見せなくなった。男たちは一人、また一人と、あの犬こそ恐るべき怪物だったのだろうと認めた」

     ところが、1950年代になると再び「グラワッカス」の目撃情報が相次ぐようになる。しばらくして騒ぎは自然に終息したが、さらにその約10年後、1966年9月にまたしても「グラワッカス」騒ぎが発生しているのだ。この時、エスコット・マクウィニーを含む数多くの目撃者が名乗りを上げているが、後にマクウィニーの目撃証言に関しては嘘であったことが判明している。

     いずれにしても「グラワッカス」騒動は1930年代、50年代、60年代と間隔を空けて発生してきた。その正体は逃亡した外来動物なのか、凶暴な犬なのか、デマなのか、それとももっと謎めいた“何か”だったのか? 今も真実は解明されていない。1960年代以降、何十年も目撃が途絶えているが、「グラワッカス」は今もコネチカットの荒野を徘徊しているのだろうか?

    Brent Swancer(ブレント・スワンサー)

    豪ミステリーサイト「Mysterious Universe」をはじめ数々の海外メディアに寄稿する世界的ライター。人気YouTubeチャンネルの脚本、米国の有名ラジオ番組「Coast to Coast」への出演など、多方面で活躍。あらゆる“普通ではない”事象について調査・執筆・ディスカッションを重ねる情熱と好奇心を持ちあわせる。日本在住25年。『ムー』への寄稿は日本メディアで初となる。

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