余命数時間から生還したアニータの衝撃臨死体験! 死の淵で学んだ重要なこと5つとは?
余命数時間と宣告されて昏睡状態に陥った女性が死の瀬戸際で体験したこととは――。センス・オブ・ワンダーな臨死体験中に再び生きることを選択した女性に起きた奇跡。
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死に限りなく近づく“臨死体験”中には流れる時間がきわめてゆっくりになることが、実際にそれを体験した時間心理学者が説明している。そして、そもそも時間はさまざまな条件によってフレキシブルに伸び縮みしているというのである――。
楽しい時間はアッという間に過ぎていくし、退屈な時間はなかなか終わりが見えなかったりする。そして、そういう思いをするほどに時間の大切さを思い知らされるのではないだろうか。
なぜ、ある活動では時間の経過が早く感じられ、それと別種の活動では時間が遅く感じられるのか。そして、生活や社会の大きな変化が時間にどのような影響を与えるのか。時間にまつわるこうした謎に長年取り組んでいるのが、リバプール・ジョン・ムーア大学の時間心理学教授であるルース・オグデン氏である。
オグデン氏は大学生時代に交通事故で奇妙なまでに時間が長く感じた体験を語っている。
大学への通学で田舎道を運転していたオグデン氏は、迷っていたのか突然車線に割り込んできた車に衝突される危険な交通事故を体験した。
オグデン氏は事故の瞬間を実に克明かつ鮮明に記憶しており、車が対向車と衝突する直前、まるでスローモーションのように時間がきわめてゆっくりと流れ、ほとんど停止した瞬間があったというのだ。
この鮮烈な体験でオグデン氏は“時間の伸縮性”に俄然興味を持ち、さまざまな状況で伸びたり縮んだりする時間の伸縮能力の解明に熱中して取り組むことになった。
こうしてオグデン氏は過去15年間、なぜ命の危機に晒された状況では時間の流れが遅くなるのか、あるいは歳を重ねると時間の経過が早くなるのは本当なのか、そして我々の脳はどのように時間を処理しているかについての研究に勤しんできた。
極端な状況に置かれた人間の時間の感覚がどのような影響を受けるかを調査するためにこれまで行ってきた実験では、痛みを誘発するために電気ショックを与えられた者もいれば、バーチャル空間で高さ100メートルの崩れかけた橋を渡った者もいるという。また、南極で12か月隔離されて過ごした者を詳しく調べたりもした。つまり、置かれた環境による時間感覚の変化のメカニズムを解明する試みである。
15年間の研究により、オグデン氏は時間の伸縮性は我々が時間を処理する方法の本質的な部分と関わっていることを理解したという。我々の脳は周囲の環境に呼応して時間を認識するように設定されているというのだ。
そして、脳が時間を処理する方法は、感情を処理する方法と密接に関連しており、実際に感情的および生理的興奮の制御に関与する脳領域の一部が時間の処理にも関与しているということだ。 感情が高まっている間、脳は安定性を維持しようとして活性化し、時間処理能力が変化するのである。
したがって我々が恐怖、喜び、不安、悲しみを経験すると、感情の処理と時間の処理が相互作用し、その結果、時間の経過が早まったり遅くなったりする感覚が生じるのだ。感情の変化の度合いと、時間の伸縮の度合いは正比例しており、前出の自動車事故のような危機一髪の体験では時間の流れは停止しかねないほど遅くなるのである。
競技中のアスリートが体験するいわゆる“ゾーン”と呼ばれている“ここ一番”という状況において、時間の流れがきわめてゆっくり感じられる現象も、この説明が適用できるのかもしれない。
では、なぜ脳はこのような働きを見せるのか。
その可能性の一つは、進化人類学上における“生存戦略”である。
我々の時間の認識は、「闘争・逃反応走(fight-or-flight response)」に基づく可能性があり、たとえば危機の際には素早い対応を取れるように脳は時間の流れを遅く感じさせているのかもしれない。
自動車事故のような危機一髪だけではなく、漠然とした不安においても、程度の差こそあれ時間の流れが遅く感じられてくるという。
まさに今回の“コロナ禍”において、初期のロックダウンの時期には多くが時間の流れが遅くなった感覚を持っていたという。イギリスのある調査によると、2度のロックダウン中に人々の80%が時間の流れが遅くなったと回答している。漠然とした不安によって時の経過が長く感じられていたことになる。
そして今回の“コロナ禍”を体験してしまった我々の多くが再確認したのが、時間の貴重さだろう。
師走が近づき、職場などで忘年会や新年会などが意識されてくる時節柄になってきているが、“コロナ前”においてある意味では惰性で行われきたともいえる“飲みニケーション”は“コロナ後”には確実に減ってきている。特に若年層において忌避される傾向は強まっており、参加の条件として飲み会の時間を労働時間に含める要求も珍しくないといわれている。
また先日、ある新社会人の女性がSNSで“9時5時”の仕事が耐えられないと訴えて話題になったが、これも“コロナ禍”でリモートでの仕事や学業に慣れたことが影響を及ぼしていることは明らかだろう。
このように自分の行動や感情が時間の感覚に大きな影響を与えるメカニズムをよく理解することで、遠い将来には自分の時間体験をコントロールできるようになるという魅惑的な可能性も開かれている。
現時点では時間をコントロールする技術の実現にはまだまだ程遠い状況にはあるのだが、「マインドフルネス」などのアプローチによっても主観的な時間の流れを制御できる可能性があるのかもしれない。
ともあれ“コロナ後”を迎えた我々にはますます時間が貴重になっていることは間違いないのだろう。
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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